骨粗しょう症患者は推計1300万人新たな治療法へ

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東京医科歯科大など、2つの作用で骨の健康を守るたんぱく質を発見

2つの作用で骨の健康を守るたんぱく質を発見

骨の「形成」http://www.jst.go.jp/と「破壊」を同時にコントロール

—骨粗しょう症や骨折、関節リウマチの新たな治療法・早期診断法へ道—

JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科の高柳 広 教授と林 幹人 研究員らの研究グループは、Semaphorin 3A(セマフォリン スリー エー:Sema3A)(注1)と呼ばれるたんぱく質が骨の健康を守り、このたんぱく質をマウスに投与すると骨が増加することを発見しました。

骨は硬く安定した組織に見えますが、その中には骨を作る骨芽細胞(注2)、骨を壊す破骨細胞(注3)とリンパ球など免疫細胞が存在し、皮膚などと同じように新陳代謝を繰り返しており、古くなった骨が破壊され新たな骨が形成されることで、丈夫さやしなやかさが維持されています。

健康な状態では、骨の破壊(骨吸収と呼ばれる)と形成(骨形成と呼ばれる)の2つの作用のバランスは均衡しており、骨の量は一定に保たれていますが、加齢や閉経などの要因でこのバランスが崩れると骨粗しょう症などの疾患に陥ってしまいます。

現在、骨粗しょう症の治療では、骨の吸収を抑える薬剤が主に使用されていますが、この場合、骨形成も同時に抑制されてしまうことがあり、吸収・形成の双方をバランスよく制御し、骨量を回復させる薬剤・治療法の開発が望まれています。

そこで、このような骨の新陳代謝を担っている、骨に含まれる細胞(骨芽細胞、破骨細胞や免疫細胞)の相互作用のしくみを解明することが治療方法の開発に非常に重要です。

本研究グループは、これまで神経細胞が回路を作る過程や、免疫細胞であるT細胞の抑制などに関わることで知られていた「Sema3A」というたんぱく質が、骨芽細胞から産生され、骨芽細胞自身と破骨細胞の両者に働きかけることにより、骨吸収の抑制と骨形成の促進という2つの作用を持つことをマウスにおいて明らかにしました。

Sema3Aの機能を失ったマウスでは、骨吸収が促進するとともに骨形成が低下して骨量が異常に低下していました。

また、骨を物理的に傷つけその再生過程を検証する骨再生モデルマウスや、骨粗しょう症モデルマウスにSema3Aたんぱく質を投与すると、骨の減少を食い止め、骨の再生を促進することができ、症状が改善されました。

このように、骨吸収の抑制と骨形成の促進とを同時に行うたんぱく質はこれまで見つかっておらず、壊れた骨をバランスよく回復させる手段はこれまでありません。

今回の発見により、骨粗しょう症や骨折、関節リウマチなどの新しい治療法の開発につながることが期待されます。また、老化して骨量が低下傾向にあるマウスでは、血中のSema3Aたんぱく質量が低下していることも観察でき、疾患診断バイオマーカーとしても利用できる可能性も示すことができました。

本研究成果は、大阪大学 大学院医学系研究科、札幌医科大学 医学部附属フロンティア医学研究所、東京大学 先端科学技術研究センターなどの研究グループとの共同研究で得られ、2012年4月18日18時(英国時間)に英国科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。

戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究

研究プロジェクト:「高柳オステオネットワークプロジェクト」

研究総括:高柳 広(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 教授)

研究期間:平成21〜26年度

JSTはこのプロジェクトで、脊椎動物の生体系を「骨を中心とした全身制御システム=オステオネットワーク」として捉えて、その解明を進め、基礎生物学および臨床医学に貢献する研究を行っています。

<研究の背景と経緯>

超高齢社会である日本において、骨粗しょう症患者は推計1300万人(骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン作成委員会/編(2011年)より)を超え、予備軍を含めると2000万人と言われており、増加の一途をたどっています。

骨粗しょう症は骨質と骨密度の低下により骨の強度が低下し、骨折しやすくなる状態を引き起こします。

この結果引き起こされる大腿骨頸部や椎骨の骨折は、寝たきり状態や慢性腰痛の原因となり、QOL(生活の質)を低下させ死亡率を高めることが知られています。

健康寿命の延長と周囲の介護負担の軽減が重要課題ですが、その実現にも暗い影を落としています。また、関節リウマチも罹患率の高い関節疾患であり(日本では推計70.80万人、厚生労働省2011年6月17日 第5回厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会議事録より)、進行してしまうと骨・関節の破壊により患者の運動機能は著しく損なわれます。

このような疾患に対する治療法の開発は喫緊の課題となっています。

現在、骨の形成を促進させる薬剤はほとんどなく、骨粗しょう症治療薬としては、ビスフォスフォネート製剤など骨吸収を抑えることで骨の減少を防ぐ薬剤が主に使用されていますが、生体内では吸収した骨と同量の骨を新たに形成するという共役機構(カップリング機構(注4))があることから、骨の吸収を阻害すると形成も同時に阻害されてしまいます。

実際に、骨吸収抑制作用のある薬剤を長期間使用すると、結果的に適切な骨形成までもが抑制され、質の低い骨が蓄積されることで、十分な治療効果が得られないケースが知られています。

また、骨形成を促進することで骨を増やす薬剤として、最近、副甲状腺ホルモン製剤が使用され始めましたが、長期的な治療効果については統一した見解は得られていない段階です。

一方、これまでの骨研究においては、骨吸収を抑制しつつ、同時に骨形成を促進することが可能な分子は見つかっていませんでした。

このため、健康な骨が恒常性を維持するメカニズムを詳細に解明し、骨吸収と骨形成とを同調して制御する生体内の分子を明らかにすることで、新しい薬剤の標的を見出し、効果的な骨疾患の治療薬を開発することが切実に望まれています。

※「研究の内容」などは、添付の関連資料「リリース詳細」を参照

● 関連リンク

(独)科学技術振興機構 ホームページ

東京医科歯科大学 ホームページ

● 関連資料

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