本人の意思に反する恐れ 発端は経済界の発言
共同通信社 2013年9月24日
20日に報告書をまとめた厚生労働省の検討会では、大都市圏に住む要介護の高齢者を、地方の施設で受け入れるべきかどうかが焦点になった。
都市部は慢性的な施設不足の上、地価が高く新設は難しい。一方の地方側は、雇用創出による地域活性化を思い描いた。だが報告書は「高齢者本人の意思に反する恐れも」と地方移住を疑問視した。
議論の発端は3月に開かれた政府の産業競争力会議。42万人とされる特別養護老人ホームの入所待機者の問題を解消するよう、経済界の代表が熱弁を振るった。これを受け厚労省は5月、検討会を設け議論を始めた。
モデルケースとなったのは、東京都杉並区が静岡県南伊豆町で進める特養ホームの設置計画だ。同様の受け入れ体制整備に、山形県舟形町や茨城県かすみがうら市などが積極的に手を挙げた。
だが厚労省は、在宅医療・介護サービスを柱とした「地域包括ケアシステム」を推進する立場。遠隔地での施設整備にはもともと消極的だった。
検討会の委員からは「住み慣れた地域で暮らし続ける仕組みづくりこそが大切だ」「福祉が公共事業化してしまう」との意見が出た。
舟形町の奥山知雄(おくやま・ともお)町長は4年前から、移住高齢者向け特養建設の可能性を探ってきた。町内の子どもが減り、廃止した保育所や学校3カ所の跡地は利用されないままで「なんとかしたい」。ところが検討会の報告書では、杉並区と南伊豆町の計画は特別な例で、舟形町のような自治体は「自立型の住まいを用意してはどうか」との結論に。奥山町長は「特区を申請し、特養を実現できないか」と模索を続けている。
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