超高齢化社会の歯科医療の果たすべき役割

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1月、10、11の両日、パシフィコ横浜で開催された『横浜デンタルショー2010』で、日本歯科医師会の大久保満男会長が以下の講演をした。

 

<日本歯科医師会大久保満男会長講演要旨>

これからの歯科医療の最大の課題は何か。

超高齢化社会を向かえて、歯科医療の果たすべき役割をきちんと我々は押さえておく必要があると思う。

皆様方の日常の歯科診療を少し離れるが、ここを抜きにしては未来の歯科医療は語れないので聞いていただきたい。

主要国との高齢化速度比較である。

フランスは1864年に65歳以上の高齢化率は7%で、115年間で14%になった。スウェーデンが85年、ドイツが40年、イギリスが47年。

これに対して、日本は、1970(昭和45年)7%を超え、わずか24年後の1994年(平成6年)には14%に達している。(さらに総務省は2007年、75歳以上の総人口に占める割合が10%超えたことを発表した)。

この数字の違いは何を表しているのか。

主要国はゆっくりと高齢化してきた。

つまり準備ができる。

このように世界に例をみない速度で高齢化が進行している日本は、準備ができずに、特に医療、福祉に問題を投げかけた。

また、2005年を境にして、死亡率が出生率を上回ってきた。

いわゆる少子高齢化が最も大きな日本の危機的な状況である。

健康寿命が延びてきたが、健康で自立できるのは大体75歳、平均寿命で女性は82歳、そこで6年間ぐらいは要介護で過ごしているのである。

私も訪問歯科診療を行っているが、要介護者のほとんどが女性である。

男性の方がはるかに少ない。

男性の平均寿命は76歳ほどであり、健康寿命を延ばすと考えたときに、つい要介護は大変だとマイナスに考えがちであるが、実は歯科医療は健康寿命を延ばすことができる。

つまり、高齢化のマイナスのイメージを歯科医療が関わることで、最後まで元気に食べてもらう。

生きがいを歯科医療が支える。

これが歯科医療の最も大きな課題である。

また、表のとおり医療費は右肩上がりに伸びているが、歯科医療費は伸びていない。

特に高齢者の歯科医療費は、ほとんど伸びていない。

高齢者医療費に、眼科などの医療費との比較でも歯科はまったく関係していない。

患者を支えるのは地域全体であり、歯科診療所の役割がある。

その地域の高齢者の面倒をみたら解決するのかを、日本歯科医師会の地域保健課で推計した資料であるが、1歯科診療所当たり平均で50名近い人数となった。

40名はたいしたことない、と思っても実際に面倒をみるとなれば大変なことだ。

つまり、専従で歯科医師が介護施設を回れればいいが、外来の患者さんが歯科診療所にはいる。

休み時間を利用して、何とか出て行こうとすると1歯科診療所当たり40名は、1回では終わらないので大変な数である。

この問題を私たちはきちんと国に働きかけていく。

外来の患者さんのアポイントを取らずに出向いていくので、インセンティブ(やる気を起こさせる仕組)を働かせないと実現しない。

外来で30分なら4人診ることができるとして、それを犠牲にして介護現場に出かけて1人を診ても、同じ報酬が得られるようにならなければならない。

このことは新しい民主党の歯科医療問題研究会でも話をしていかなければならない。

このような状況のなかで、今回の診療報酬改定が行われた。

民主党の副幹事長、幹事長、各副大臣、すべての大臣などには表敬訪問を含めてお会いした。

特に厚生労働3役については、歯科医療の現状についてお話をした。

12月17日には、与党3党の政府に対する要望事項のなかに、「いのちと暮らしを守る医療、介護、雇用対策の強化」が盛り込まれた。

いのちと暮らしを守る医療、介護、雇用対策の強化

全国で発生している医療崩壊を防ぎ、地域医療を守る医療機関を維持するため、

診療報酬の引き上げが必要である。

特に、救急医療や不採算医療を担っている大規模・中規模病院の経営環境を改善するため、格段の配慮を求める。医療の現場を支えている医師不足の解消、看護師の待遇改善。

生活の医療である歯科医療についても、診療報酬の引き上げを行う。

私は、色々なところからお電話をいただいた。

歯科医療は、生きる力を支える生活の医療であると日本歯科医師会の会長になって以来ずっと言い続けてきた。

歯科医療につてもではなくて、生活の医療である歯科医療であると、きちんと定義して、診療報酬改定の引き上げを行うと書かれた。

与党3党の歯科医療に対する大変な理解である。

民主党は、生活第一と言ってきたので、生活の医療である歯科医療であると言った方が理解しやすかったのかもしれないが、私は高く評価をしている。

そして、診療報酬改定が行われたが以下について。

医科改定率1・74%

医科外来診療改定率0・31%

歯科改定率が2・09%

歯科はほとんどが外来なので、医科外来診療改定率0・31%と歯科改定率が2・09%を比較してもらいたい。

新聞には色々なことを書かれた。

わたしは、擦り寄ったのではなく、正攻法で歯科医療が大事であるときちんとお話をして、それが評価をされたと考えているので、記者会見の席上で100点満点の何点かと問われた。

全国紙も来ていたが、80点と言った。

日医は、「これは、50点だ」と言っていた。

この改定でも10年、15年も歯科が被ってきたマイナスと比べたら、2・09%ではとても元に戻せない。

14、15%くらい戻してもらいたいと思っているが、しかし、今の厳しい財源状況のなかで、歯科の評価をしてもらった、ことを考慮すると80点の評価であるが、新聞では日医50点、日歯80点と極めて刺激的に書かれた。

医科と歯科との比較をするつもりは、まった私にはない。

(以下略)

 

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