超音波でiPS細胞の分化を促進か——歯科医師らのグループが研究発表
オルタナ 3月21日(木)12時20分配信
朝日大学歯学部非常勤講師の梶本忠保・歯科医師と武庫川女子大学健康運動科学研究所の山添光芳教授らのグループが、「超音波」が物理的な刺激として細胞分化を促進する可能性があるとして、横浜市で開催されている日本再生医療学会総会で3月22日に発表する。
再生医療への道筋として注目されるiPS細胞は、体を構成するさまざまな細胞へ分化させることが可能だが、「できるだけ短期間で、より完全にiPS細胞を分化させるためにも超音波は有効だ」と梶本医師らは見ている。
一般に医療現場で利用される超音波は、診断用や、体内にできた石を破壊するための装置が主流だ。
これとは別に低出力のパルス超音波(LIPUS)は、難治性の骨折や歯のインプラント埋入後の治癒促進に利用されてきた。
梶本歯科医師・山添教授らのグループは、LIPUS照射によって損傷治癒が促進されるのは、損傷部位にある未分化な細胞がより早く分化するためではないかと考えた。
実験を通じて、筋肉細胞に分化する前の未分化な細胞に、ある周波数のLIPUSを照射すると、照射しない場合よりも早く筋肉細胞の形態が表れることが分かった。
また未分化な細胞が筋肉に分化するスイッチのような働きをする遺伝子が、LIPUS照射によってより活発に働くことも明らかになった。
同グループは、「物理的な刺激は、薬剤による刺激のように残留物による影響が無いのも大きな利点だ。
超音波刺激が筋肉や骨に分化する細胞以外にも、分化を促進する作用があるかどうかを検討していきたい」と話している。
日本では山中伸弥・京大教授らによるiPS細胞の研究が進んでいるが、再生医療として実用化するためには、iPS細胞から作った目的の細胞を短時間で育て、移植などに活用することが求められている。
また、分化過程を終えたはずの細胞集団の中に、未分化なiPS細胞が混入していると、生体に移植した後、細胞が癌化する恐れもある。
今回の超音波による研究は、再生医療の実用化に向けて、iPS細胞の分化を促進する研究として注目される。(オルタナ編集部・吉田広子)
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