病院内で患者に感染が広がると深刻な問題になる

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 広がる多剤耐性菌  新型、日本で初確認 薬の開発遅れに危機感

共同通信社  4月16日 配信

 「切り札」といわれてきた強力な抗菌薬も効かない多剤耐性菌が世界規模で広がっている。健康な人にはほぼ無害だが、使える薬がほとんどないため、病院内で患者に感染が広がると深刻な問題になる。国内では最近、海外で急拡大している新型の菌が、帰国患者から初めて検出された。一方で新しい抗菌薬の開発は進んでいない。

このままだと、簡単な外科手術でさえ命取りになる時代に逆戻りする恐れもあるとして、内外の専門家は危機感を強めている。

 ▽海外で感染

 新型の多剤耐性菌が千葉県の病院で確認されたのは昨年11月。患者は東南アジアで頭部の手術を受けて帰国、同病院に入院した60代男性だった。

 たんや便から、多くの抗菌薬に耐性を示す肺炎桿菌(かんきん)や大腸菌が見つかったため、病院は国立感染症研究所や名古屋大と協力し遺伝子などを解析。強力な抗菌薬カルバペネムを効かなくする「OXA48型」の遺伝子を持つ多剤耐性菌であることが分かった。

 OXA48型は2001年にトルコで分離された菌で初めて確認された後、数年前から欧州やアジアに広がり、多数が死亡する院内感染も報告されていた。

今回の男性は海外で感染したとみられるが、幸い感染症の発病はなく、病院内にも広がらなかった。

 ▽常在菌

 「適切な対応が功を奏したケース。漫然と抗菌薬を使っていたら、耐性菌が拡散していた可能性もある」と、解析に携わった荒川宜親(あらかわ・よしちか)・名古屋大教授(細菌学)は話す。

厚生労働省は3月下旬、全国の自治体にこの情報を知らせ、警戒を呼び掛ける文書を送った。

 抗菌薬にさらされても生き残る細菌。これが耐性菌で、世界で多くの種類が出現し、医療現場を悩ませてきた。

 近年特に問題になっているのが、カルバペネムを無効にする遺伝子を持った耐性菌だ。遺伝子の種類によって、OXA48型のほか「IMP型」「KPC型」「NMD1」などがある。カルバペネムは幅広い種類の細菌に有効で効き目も強いことから抗菌薬の切り札と位置づけられ、日本での使用も多い。また、この薬に耐性を示す菌は、既に他の大半の抗菌薬に耐性を獲得していることが多いため、感染症を発病すると、治療に使える薬が極めて限定される。

 また肺炎桿菌や大腸菌といった、人の腸内の常在菌にこうした耐性が広がっているのも厄介な点だ。これら腸内細菌科に属する菌は70種以上あり、耐性をどんどん広げる性質がある。その上、ひとたび血管の中に入ると、敗血症など重篤な病気を引き起こしやすい。

 米国ではカルバペネム耐性の肺炎桿菌が過去10年で7倍に増えたとして、米疾病対策センターが3月初旬「これ以上の拡大を食い止めよう」と異例の警告文を発表した。

 ▽開発意欲

 国内では2010年前後にNMD1やKPC型の遺伝子を持つ多剤耐性菌が確認されたが欧米ほどには広がっていない。

 しかし、耐性菌に詳しい藤本修平(ふじもと・しゅうへい)東海大教授(細菌学)は「海外も日本も、将来に向けて非常に不安な状況にある」と指摘する。画期的な抗菌薬が登場する見込みは当分ないからだ。

 比較的簡単な手術でも細菌感染の可能性は常にある。安全な治療に欠かせない抗菌薬が効かなくなったら、医療のリスクは大きく上がる。

 藤本教授は「医療現場には多剤耐性菌の定着や拡散を防ぐため薬の適正使用が求められる。より大きな視点では、製薬企業による抗菌薬の開発を何らかの形で促進するような政策を国が進めるべきだ」と話している。(共同=吉本明美)

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