(2012年9月11日) 【中日新聞】【朝刊】
最大22メートル津波想定 「危機意識高めて」
大地震の際に津波被害が予想される愛知県田原市と県歯科医師会は、沿岸部の消防団員を対象に、遺伝子(DNA)を採取、保管する。
地方自治体と地元の歯科医師会が協力し、消防団員のDNA採取に取り組むのは全国で初めて。
東日本大震災の発生から1年半。岩手、宮城、福島の3県では消防団員252人が死亡、2人が行方不明となった。
太平洋に面する田原市は、8月末に内閣府が公表した南海トラフ地震の被害想定で津波の最高値が県内最大の22メートル、1メートルの津波の到達時間が最短15分とされる。
沿岸部に住む消防団員は、高台の消防署から駆け付ける署員よりも災害発生直後から危険な活動が予想され、優先してDNA採取を採用することに決めた。
対象は、津波の到達が最も早い渥美半島先端部や海抜ゼロメートル地域で活動する252人。全団員の37%にあたる。
県歯科医師会の歯科医師が口の中の粘膜を専用のスポンジでこすって細胞を採取し、保存期間は6年。
県歯科医師会が公益財団法人日本財団から受ける補助金も活用し、市議会9月定例会で127万円余を補正予算案に計上した。
10月にも同意を得られた団員から採取を始める。
東日本大震災では、今年8月末までに各県警が検視した死者1万5802人のうち、本人もしくは親族のDNAを使って2814人(17%)の身元が確認された。
身元確認は日がたつにつれ難しくなり、震災発生から半年の昨年9月以降に身元が確認された人のうち、約86%がDNA鑑定によるものだった。
田原市は「東日本大震災では、多くの消防団員が使命感を持って活動し、被災した。自分の身を守ることが大前提だが、万が一に備えることで危機意識を高めてもらいたい」と話している。
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