歯科医師の需給問題をどうする?(5)
東京歯科保険医協会主催の「歯科医師の需給問題をどうする?」これからの歯科医療を考えるシンポジウムが4月18日、東京・千代田区平河町の砂防会館別館で開かれた。
コーディネーターは、田辺功さん(医療ジャーナリスト 元朝日新聞社編集委員(医学・医療担当。東京大学工学部航空学科卒)が務めた。
田辺
歯科医師国家試験を厳格化して、合格者が6割強となっている。
国民的な立場で言うと、試験を厳しくすると歯科医師の質が高まり、それでいいのではないかという気もする。
そこで、歯科医師を減らせと言っても、国民は納得しないと思うがどうなのか?
川口浩衆議院議員
我々の時代は、実技試験があった。
これをなくしたしたことが問題だ。
実は私は実技が下手だった。
国家試験の時に、実技のインストラクターが、「お前の作った入れ歯は、猫の入れ歯だ」と言われた。
我々の時代は、技術的な裏付けがあった。
それを歯科医師国家試験から排除して、頭の中で分かっていればいい、と認めてしまったのは誰なのかしらないが、この実技問題を解決するためには元へ戻すべきだと思う。
質の担保、技術的な裏づけは、実技復活の問題の対応でいいと思う。
研修制度を長くすればいい、という提言もあるが私は反対だ。
我々の時代は、研修制度がなくともちゃんとやれていた。
小さな親切、大きなお世話ではなく、ここがおかしい、ここを解決しょうと手をつけていく方が正解だと思っている。
初鹿明博衆議院議員
研修制度では一部分かるところと、分からないところがあるが、やはり問題は歯科医師国家試験を何%にと意図することだと思う。
どういう技術を持っている人が国家試験に合格できるかが問題だ。
合格率を下げていくと歯科大学の受験者が減る。
すると相対的に歯科大学入学する学生のレベルが下がる。
レベルが下がると、さらに国家試験の合格率も下がる。
これはどこかで変えなければならない。
また、昔は歯医者さんも体力があったので、卒業した歯医者さんをすぐに雇って一人前に育てることもできたと思う。
そのような歯医者さん(歯科医院)がいっぱいあった。
そこで、新人の歯医者さんを雇える仕組みを作らないでいるから、どんどん研修を終わったら開業する。
これは患者の立場からみると危ういことだ。
新しいきれいな歯医者ができる。
若い先生がちょっとイケ面で、きれいな歯科衛生士さんがいれば何故か人気が出る。
しかし、腕はどうかといえば腕は怪しかったりで、1本歯を抜いたら、もう1本抜かなければならないことになったりする。
治療に失敗したら儲かるようなこともあるかもしれない。
質を担保するためには、新規開業する前に腕をみがくために雇ってくれる環境を作らないとダメだと思う。
研修は1年から2年かにするかどうかの以前の問題だと感じる。
田辺
歯科が色々な病気に関係することが明らかになってきた。
私は個人的にはもっと医科系の病院に歯科が増えればいいと思っている。
ちゃんと病院に歯科を常設する。
そして、医科、歯科連携で質のよい治療をやっていく。
国民にとっては大事なことだと思う。
議論が白熱してきたところで、せっかく参加しているフロアの声、ご意見をぜひ聴きたい。
フロアの声・意見
私は都内で開業し、偏差値が悪い歯科大学の専任講師もしている。
なおかつ、ヤリ玉に挙がっている歯科大学の卒業生だ。
ここでは、需給問題がテーマであるが、医科、歯科の格差でブレーキを誰が踏んだのか。
これはお医者さんではないかと思う。
それはどうしてかと言えば、職域の問題が常にある。
歯科はどちらかと言えば、2級市民的で東ドイツの国民のような感じを我々はもっている。
同じドイツ人なのに、ひけ目の感覚を持っている。
一つは札幌の病院での研修の問題、麻酔医の問題である。
内科の先生と比べて、歯科医師は麻酔の回数は問題にならないほど多くて、知識がある。
我々は毎日、麻酔をやっているが、お医者さんは歯科医師には麻酔をさせたくない、それが根底にあるのではないか。
また、無呼吸症候群の治療でも耳鼻咽喉科とのボーダレスの問題がある。
これも歯科医師にはやらせたくない、というのが本音ではないか。
歯科保健課というのも、すべてを終わって、その整理の係のように思われる。
医科、歯科格差の根底にあるのは、医科の意識ではないか。
また、入口問題では歯科大学に籍を置く者として、言いたいことがある。
私のつたない提案であるが、歯学部を2科にわけたらどうか。
歯学部歯学科の6年制と歯学部歯科保健科の4年制である。
今、大学ではオスキーをやっている。
{OSCE(オスキー):これまでの医療系の大学教育では、ペーパーテストなど知識重視の教育が偏重されてきましたが、OSCEは判断力・技術・マナーといった基本的な臨床技術を客観的に評価するため、実際の現場で必要とされる臨床技術の修得を適正に評価する有効な方法とされています。}
4年生でオスキーのテストをしているが、その試験に受からない学生は、4年で歯学部歯科保健科卒業とする。
そして、研究者の道、企業の道、あるいは介護の道へ移す、ということでいいのではないか。
臨床へ向かいたいものは、5年、6年生へ向かう、これでいいのではないか。
このように、歯科大学を2科制にすることで、需給問題はだいぶ変わると思う。
2科制にすれば歯科大学・歯学部を廃止にする必要はない。
それなりの人材供給の形になっていくのではないかと思う。
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