診療所を設け不正請求か 訪問診療装い報酬請求
朝日新聞デジタル 2013年9月2日(月) 5時48分
東京都の医療法人が架空の歯科診療所を設け、そこから訪問診療しているように装って診療報酬の請求を繰り返していたことが分かった。訪問診療は診療所から16キロ内しか認められておらず、さらに遠い場所を訪問するための偽装工作だ。厚生労働省は不正請求の疑いが強いとみて調査を始めた。
厚労省などによると、この医療法人は八王子市などで六つの歯科医院を運営し、16キロ以上離れた奥多摩地域にある複数の高齢者施設に定期的に出向いて入居者の歯を治療していた。このままでは訪問診療の診療報酬を請求できないため、2010年3月に架空診療所を高齢者施設から16キロ内のあきる野市につくり、そこから訪問したとして請求していたという。
診療所には常勤管理者が必要だが、架空診療所の管理者は約50キロ離れた江戸川区の歯科に勤め、架空診療所には行ったこともないという。
診療所には治療台もなく、パイプいすだけがあった。厚労省が昨年末に調査した後、診療台が置かれたという。
架空診療所、張り紙だけ 診察日なのに歯科医は不在
診療報酬が外来より高い訪問診療を装うため、架空診療所をつくる医療機関まで現れた。目玉政策として訪問診療を優遇しながら、医師を信用するばかりで検査体制を整えてこなかった国の姿勢も問われる。
架空診療所を設け不正請求か
記者は7月、東京都あきる野市にある架空診療所を訪ねた。雑居ビルの2階のドアには「○○デンタルクリニック」という張り紙があるが、ほかに看板らしきものはない。厚生労働省によると、昨年末まではパイプいすが一つ置いてあるだけだったという。
この日は張り紙に記載された診察日だったが、ドアは閉まっていた。診療所に電話して「予約したいのですが」と言うと、電話口の女性は答えた。
「先生が電話を取れないので、本部につながっています。折り返し電話するのでお待ちください」
(月舘彩子、沢伸也)
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