「歯科医師の需給問題をどうする?」(2)
東京歯科保険医協会主催の「歯科医師の需給問題をどうする?」これからの歯科医療を考えるシンポジウムが4月18日、東京・千代田区平河町の砂防会館別館で開かれた。
コーディネーターは、田辺功さん(医療ジャーナリスト 元朝日新聞社編集委員(医学・医療担当。東京大学工学部航空学科卒)が務めた。
田辺功 今日は辛口の話が出そうだ。
先ほどの南條先生のスライドは分かりやしかった。
小池議員が指摘したように「何故こうなったのか?」の部分、歯科医療費が伸びないということ。
歯科医師が増え続けていること。
患者数が伸びていないこと。
この3点があった。
歯科医師の需給問題のポイントから討論を始めたい。
歯科医師が増え続けていることは、善いことなのか、悪いことなのか、どうなのか。
初鹿明博衆議院議員(民主党)
適正な歯科医師の数はあると思う。
私は直感的に考えても、歯科医師は増え続け、多すぎる。
私の子どものころは、予約をしなければ歯医者さんに診てもらえなかった。
今は行くとすぐに診てもらえるようで、予約をする必要がない状態。
認知症の祖母がいるが、2年前に入れ歯の具合が悪くなったので連れていった。
口を開けろと言ったら、口を閉じて、閉じろと入ったら口を開けて、1時間もかかって、先生からいやみを言われた。
しかし、1時間次の患者さんが来なかったので、ゆっくり診てもらえた状況であった。
それで窓口で払ったのが170円くらいだった。
「先生、これでいいんですか?」と聞いたら、「しょうがないだろう。マクドナルドよりも安い」と言われてしまったくらいだ。
明らかに歯科医師の数は多いと思う。
これはどこかで、きちんと考えていかなければならない。
辞めていく歯科医師の数と新しい歯科医師の数を同じにする必要がある。
平将明衆議院議員(自由民主党)
構造改革では、できるだけ競争を自由にして、市場に委ねようということであった。
しかし、ここで冷静に考えなければならないのは、価格で需要と供給を調整することだ。
例えば、タクシーを構造改革した。
しかし、価格まで手をつけなかった。
価格は弾力のあるものに、しなければならない。
それができないのであれば、需給をコントロールしなければならない。
これは当たりまえの話だ。
構造改革をやれば全部ハッピーになるのはナンセンスだ。
また、構造改革を否定するのもナンセンスだ。
歯科医療に関しては、価格を自由にはできない。
これは医療の分野だからだ。
プラス、アルファーについては異論があり、議論の余地があると思う。
公益を守ること、メイン部分の質は担保しなければならない。
それなりに数をコントロールしなければならない。
田辺
歯科医師の側から、大久保さんどうか。
大久保潔重参議院議員(民主党)
私の開業当時、先輩の先生に以前のことを聞いてみたら、患者が溢れていて大変な時代があった。
その後、歯科医師の数が増えているので、徐々に患者が減ってきている状態だ。
このため限られた患者さんお取り合いの中では、歯科医院経営も厳しくなってきている。
そのために適正な人口当たりの歯科医師の数があると思っている。
小池晃参議院議員(共産党)
歯科の公定価格が低く押さえられ、これが放置されている。
一方、患者さんにとっては歯科医療を受けにくい構図がある。
では、そこを打開するためには、何をすべきか。
ここで心配なのは、歯科医師国家試験がどんどん難しくなってきている。
これでは、歯科医師になろうという若者のモチベーションが下がってきている。
歯科大学に入学する学生の質が低下することが懸念される。
質の低下をどうするのかという観点で、この問題を考える必要がある。
田辺
手を何とか打たなければならないと、これが皆さんの共通認識だ。
これを放置して、勝手に歯科医師を辞める人が増えるまで待つ、という意見はなかったようだ。
では歯科医師が増え続けているのを止める。
あるいは国の政策としては、歯科大学・歯学部の定員を削減する話はあるが、これが実行できていない。
定員は確実に減らせばいいと思うが、これはどうか。
何か、シビアな意見はないか。
初鹿衆議院議員
どんどん定員割れをしていく学校は、退場していただくような状況にあると思う。
それを役所が、「あなたのところは、もう学校を辞めなさい」とは言いづらいと思う。
最終的には自然淘汰されていくのかと思う。
平衆議院議員
これは文部科学省の分野であるが、この改革のまずいところは、新規参入させて競争させる以上は退場をしやすくしてあげなければならない。
しかし、この大学はダメなので潰せと言って、そこにいる学生をどうするのかの、手当てがないことが問題だ。
だから自民党は構造改革をやってきたが、退場する仕組ができていなかった。
私は河野太郎さんと二人で事業仕分けをしてきた。
あれは民主党ではなく、我々にパテントがある。
文部科学省は、大学に対して過保護である。
何でこんな予算がいるんだ、それは大学の問題というところまで、文部科学省は口を出している。
自然な形は自然淘汰である。
とは言うものの、やはり退場する手立てを、我々自民党も用意しきれていなかった。
用意しなければ、学生たちに迷惑をかけてしまう。
田辺
実際に退場しやすくする手当てとは、どういうとか?
平衆議院議員
企業で言うところの破産法であるが、法的にではなく、こういうスケジュールに沿って考える。
銀行は昔、潰れなかった。
何故なら、銀行が倒産するとパニックが起こるからだ。
そこで護送船団方式を止めて、銀行が潰れてもいいようになった。
その代わり、1000万円までの預金は保証される。
それと同じで出した入学金、授業料を保証するか、その学生をどこの大学に振り分けるかの明確なルール作りをする。
田辺
実際に医学部、歯学部ではないが、私立の大学では学生の募集を止めて、在校生が卒業するまでまってから退場する学校もある。
歯科大学もそうなるのか?
平衆議院議員
経営上の話をすると、経営的には募集を止める。
その間は生徒が減ってくる。
しかし、いわゆる固定費は今までと同じにかかる。
そこで傷口を広げるここになる。
現在、財務内容が悪い学校が多い。
銀行は財務省が検査をして、「これではだめだ。資本金を増やせ」と指導している。
一方、多分大学には財務省の検査が入ってないと思う。
何年間の期間でソフトランディングさせる形は、現実には厳しく、ハードランディングをしても、学生が困らないようにする仕組を作ることが必要だと思う。
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