医療費免除打ち切りで被災者の受診抑制鮮明
河北新報 2013年08月25日
東日本大震災の被災者を対象に3月末まで適用されていた医療費の窓口負担などの免除措置をめぐり、措置打ち切りが患者の受診抑制につながっているとの調査結果が相次いでまとまった。
宮城県は「国による財政支援がなければ財源が確保できない」として免除再開は困難との見解を示しており、議論は今後も続きそうだ。
◎患者「続けられるか心配」47%
県民主医療機関連合会(宮城民医連)が医療費窓口負担などの免除措置の対象だった患者に対して行った調査によると、回答者の47.8%(273人)が措置打ち切り前の治療を「続けられるか心配」と回答した。
「続けられる」は43.1%(246人)だった。
「心配」「分からない」と答えた315人のうち、検査回数や薬の数を減らすなど受診抑制を検討しているのは234人で、全体の41.0%に上った。内訳(複数回答)は「受診回数を減らす」が149人で最多。
「薬を減らす」(114人)「検査を減らす」(117人)が続いた。
住まいの形態別にみると、「続けられるか心配」の割合は、仮設住宅に住む人(120人)では58.3%に達し、自宅に住む人(400人)の43.5%を上回った。
宮城民医連は「受診抑制で慢性疾患などが悪化する人が出かねない。治療が継続できる人でも生活費へのしわ寄せが懸念される」と話している。
調査は5〜6月、宮城民医連所属の病院や診療所で外来を受診した患者のうち、免除対象者だった人や一部の仮設住宅住民らを対象に実施。571人から回答を得た。
◎医師「来院しない人いる」49%
医療費窓口負担などの免除措置が打ち切られた4月以降、医療機関の半数が、継続的な診療が必要なのに来院していない患者を抱えているとの調査結果を、県保険医協会がまとめた。協会は「処方された薬がなくなる人も増える。
早急な支援が必要だ」と話している。
調査は5月、協会加盟の医師や歯科医を対象に実施し、126件の回答を得た。
医療費減免が打ち切られた診療継続中の患者について「来院していない人がいる」は49.2%(60件)に上った。
科目別では歯科医では63.8%を占め、医師では40.0%だった。
「来院回数が減った患者がいる」も全体の47.2%(58件)に達した。
昨年度中の治療終了を要請されたり、長期間の薬の処方を求められたりしたとの回答も68.3%(86件)を占めた。
調査では「リハビリを中断した患者がいる」「白内障の患者が来院しなくなり、失明しないか心配だ」などの声が寄せられたという。
◎知事「国の全額負担で再開を」
医療費窓口負担の減免措置をめぐっては、県議会が6月定例会で仮設住宅住民らが提出した請願を全会一致で採択している。ただ県は「財源がなく、要望に応じられない」と説明している。
国が事業費を全額負担する仕組みから8割負担に切り替わった昨年10月以降、県は残りの2割を拠出して制度を継続してきた。
県の試算によると、支援継続に必要な予算は年間約30億円。県は昨年度、被災市町と事業費の分担を協議したり、対象世帯の絞り込みを検討するなど継続の道も探った。
ただ市町から財政事情を理由に負担は難しいとの意向が示され、「県単独では財源が確保できない」と3月末で免除措置を打ち切った経緯がある。
村井嘉浩知事は「減免措置の必要性は認識している」と言うものの、再開には国の財政支援が不可欠との姿勢だ。「引き続き、国の全額負担による事業の再開を求めていく」と話している。
<医療費窓口負担などの免除措置>
東日本大震災の被災者に対し、国民健康保険加入者の医療費窓口負担と介護サービス利用料を免除する国の支援策。国は当初、事業費を全額負担し、昨年10月以降は補助率を8割とし、県内では県が残り22割を賄っていた。県はことし3月末で措置を終了させた。岩手、福島両県は昨年10月から市町村と1割ずつを負担し、措置を継続している。
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