朝日新聞 医療職種紹介シリーズ20
鈴木信行 (すずき・のぶゆき)
医療現場で働く医療職種を紹介するシリーズの第20回目は「歯科医師」。子どものころから多くの方がお世話になる大切な医療職種です。
歯科医師は、歯科医師法に定められた国家資格。
医師とは別のカリキュラムを勉学し、歯科医師国家試験をパスしなければなれません。
歯科医師というと虫歯になったらお世話になるというイメージを持ちますが、このような仕事のほかにも、歯の矯正、口の周りにできた病気の治療、虫歯予防などの啓発活動など、多岐にわたります。
これまでに歯科医師のお世話になった経験がない方は、本当にすばらしい。
しっかりと口の中を衛生的に保つ努力をされているのでしょう。
私が精巣腫瘍になり抗がん剤の治療に入る前、歯科にいかされました。
抗がん剤の副作用で感染のリスクが高まるため、虫歯があるとそこから菌が体内に入る可能性があります。
よって、虫歯を事前に治す必要があったのです。このように、歯科医師は単に歯のことだけを知っていればいいわけではなく、医療全般にわたり幅広い知識と豊富な経験が必要とされます。
現在、歯科医師数は10万人を超し、必要以上に多いと言われています。
そのため、歯科に関する保険診療の点数は低く抑えられ、歯科医師は十分な利益が得られていないという意見もあります。
私個人としては、歯科医師は自分の強みは何なのかを考え、それを強く打ち出していくというビジネス的感覚が必要だと考えています。
しかし、経営的な勉学をする機会は必ずしも多くはないでしょうから、そういうセンスのある方とうまくコラボレーションしていただき、患者にメリットが大きい歯科医師がより多く出現してきてほしいです。
さて、ここは患者道場。患者の立場から、歯科医師を考えてみましょう。
まずは、歯科医院の探し方。
歯科は、近所に行きつけの「歯医者さん」を作るのが一番。
一度削ってしまったらもう後戻りはできませんから、信頼できる歯科医院を探したいものです。 病院やクリニックなども同じですが、歯科医院選びに王道はありません。
ただ、参考になる情報をいくつか挙げておきましょう。
●ホームページはチェック
最新の情報を得る必要がある職種です。だとすれば、いまの時流に敏感であることが必要。今の時代にホームページがない歯科医院はいかがなものでしょうか?
さらに、ホームページを見て、歯科医院もしくは院長の考えが明確に出ているとより安心できます。
●予防に力を入れている
予防は、歯科としては利益に結び付きにくい業務です。しかし、患者にはとても大切なこと。そこに力を入れている歯科医師は、患者を思うやさしさを持っている可能性が高いと私は考えます。
●電話の応対がよい
歯科医院の多くはいまだに電話で直接予約を必要としています(本来はネット予約なども可能になるとよいのですが、それはそれとして……)。
単に予約を受けるだけではなく、どうしたのかなど症状を聞くとともに、痛みがある場合などはいたわるような言葉があるとよいですね。
電話口で心地よい応対ができるということは、医療スタッフが患者の声に耳を貸す姿勢がある歯科医院の可能性が高いです。
次に、患者としては、歯科医院に行く際もしくは歯科医師と接する場合にどういう点に気を配りましょうか?
●歯を磨く、口臭に気を配る
歯磨きをしてから歯科医院に行く方は多いと思いますが、口臭にも少し気を配りましょう。普段は自分で気が付かなくても、臭いは出ているかも。
ちなみに、空腹だと臭いが強くなると聞いた時がありますが、真偽はいかに? もちろん、口紅などの化粧も最低限にしておきましょう。
●聞きたいことはメモをしておき、渡す
治療中は口が固定されるのでほとんど話すことはできないでしょう。特に気になる点があれば、事前にメモをしておき、治療が始まる前に歯科医師、もしくは歯科衛生士に渡しましょう。
●今後の見通しをはっきりと聞く
治療には時間や、自己負担のため金銭がかかる場合もあります。今後の見通しをしっかりと聞きましょう。納得できるまで、何度でも聞き返して構いません。
●事前の準備をシミュレーションして
私はかなり怖がりです。キュイーンという音がしているときは本当に生きた心地がしません。私が歯科で治療する際に手放せないのはハンドタオル。治療中は常に手に汗が…なので(笑)。
また、診察台には靴を脱ぎますから靴下も恥ずかしくないものを…(あ、いつも恥ずかしい靴下をはいている私がいけないのか…)
あなたは、そのように何か必要なものはありませんか?事前にしっかりとシミュレーションして、忘れ物がありませんように。
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