公開フォーラム「かむことは食育の入口」(中)
カテゴリー
記事提供
© Dentwave.com
口から食べないと廃用症候群となる
口から食べることは生きること!
長期間の中心静脈栄養が口腔および全身機能に与える影響
塚本末廣さん(福岡歯科大学成長発達歯学 障害歯科学分野)
中心静脈栄養法は、高カロリー輸液のみで栄養状態を完全に維持する方法である。
ところが、長期にわたり中心静脈から栄養を補給されると、安静臥床を余儀なくされ、寝たきりとなる。
さらに口腔の消化管は廃用症候群を呈し、全身状態も悪化していくと言われている。
そこで、今回、私は長期にわたり中心静脈栄養法を施行された2症例を経験した。
私の母と妻の母である。
口や消化管を経ないで、直接血管内に栄養分を注入した場合、どのような経過をたどるのかをVTRで(供覧)報告する。
私には3人の母がいた。
実の母は69歳で亡くなった。
症例1は私の育ての母、年齢は93歳。
総胆管結石で緊急入院した。
私はその時、小児歯科にいて、高齢者のことが分かっていなかった。
そこで、口腔細菌学の先生に相談した。
口から食べないと廃用症候群なる。
廃用症候群について、今は説明できるが、このときは学生用の実習用に、二つの症例についてビデオに収めた。
すると、色々なことが分かった。
口から食べることは非常に重要なことであるが、寝たきりとなった母の口のケアをしてあげた.
舌は舌ブラシを用いてきれいにした。
人は入院すると口から食べられなくなる。
廃用症候群になると、潰瘍もできる。
口から食べないと色々な悪循環となる。
口のなかが乾燥するのが一番悪い。
カンジタが繁殖する。
そこで口に潤いを与えた。
口のなかには常在菌がいるが、口から食べないないと常在菌が繁殖する。
最後は喉に穴を開けて呼吸器を取り付けた。
口から食べさせようとしたが、生きる意欲がなく、口から食べようとしなかったのが残念でならない。
入院2か月後、誤嚥性肺炎や敗血症を合併し、最後は上部消化管からの出血によるショックでなくなった。
みなさんにとってショックな映像であったが、生きる意欲は、食べる楽しみだ。
口から食べないと廃用症候群になってしまうのだ。
症例2は妻の母、年齢68歳。
私の母が亡くなって1年後、意識喪失で神戸の病院に緊急入院した。
脳梗塞、心筋梗塞、腎がんおよび敗血症の診断が付いた。
約4か月間の入院であった。
毎日、高熱が出ていた。
院内のMRSA感染で危篤状態にもなった。
点滴の部分の汚れでMRSA感染になったことも後で判明した。
入院直後から中心静脈栄養法が退院まで行われていた。
口腔内は乾燥し、舌などにカンジタが繁殖していた。
そこで福岡の病院へ強制的に転院させた。
神戸の病院では、退院させたら死んでしまうと止めた。
福岡の病院に転院して、2日後の映像、このように元気になった。
ところが、口から食べさせると、2か月で正常となった。
生きる意欲があったので、回復が早かった。
神戸の病院では、口から食べられるのに、食べさせていなかった。
記事提供
© Dentwave.com