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小児患者の抑制治療をする際のポイント  ~ご家族への同意の取り方・小児患者との信頼関係を失わない抑制方法~

小児患者の抑制治療をする際のポイント  ~ご家族への同意の取り方・小児患者との信頼関係を失わない抑制方法~

小児患者に対する歯科治療は難易度が高く、その中でも特に非協力児の抑制治療は慎重な対応が求められます。
特に、小児患者は恐怖や不安を感じやすく、歯科診療室での経験がトラウマとして残ることもあります。
この記事では、抑制治療を行う際のポイントについて、特にご家族への同意の取り方と小児患者との信頼関係を失わない方法を中心に解説します。

1.ご家族への同意の取り方

抑制治療を行う前に、ご家族からの同意を得ることは必須です。
抑制治療の許可を取る前に、以下のような流れでご家族へ説明することを推奨します。

1-1.なぜ抑制治療をしなくてはならないのか説明する
まず、歯科治療内容とその理由を明確に説明します。
抑制が必要な理由やその方法、そしてリスクと抑制治療が終わった後の未来のイメージを詳しく説明することで、ご家族が理解しやすくなります。
ここでの"抑制治療が終わった後の未来のイメージ"とは、小児患者が今後の歯科治療にどのようなイメージを持つ可能性があるか、または歯科治療ができたことで達成感が培われ、今後抑制治療なしでも歯科治療ができるようになる場合もあるという、必ずしもマイナスだけでなく、プラスをもたらすこともあるということを説明しておくと良いでしょう。

1-2.抑制治療に関する質問への回答
説明後には、必ずご家族からの質問を受け付ける時間を設けます。
抑制治療にはマイナスなイメージを持っている保護者も多いため、疑問や不安を解消するために、丁寧に回答することが重要です。

1-3.書面での同意
口頭での説明だけでなく、書面でも同意を得ることが重要です。書面には、治療の詳細や同意の内容を具体的に記載し、ご家族に署名を求めましょう。
これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。

1-4.使う器具や抑制方法の説明
抑制治療の際には、開口器やラバーダム防湿、抑制道具であるレストレーナーを使用する場合があります。
特に、これら3つの器具・道具は小児患者にとってトラウマを感じやすく、状況によっては嘔吐してしまうこともあります。
また、レストレーナーを使わない場合でも、スタッフが小児患者の体の上に乗ったり、頭や肩、手、足を押さえたりする必要があるため、どの器具・道具を使い、どのように体を抑えて歯科治療を行うかについても保護者に説明しておく必要があります。

2.小児患者との信頼関係を失わない抑制方法

抑制治療は、小児患者にとって恐怖心を抱かせる可能性があるため、信頼関係を損なわないようにすることが重要です。

2-1.小児患者への説明
小児患者にも治療の内容を適切に説明することが大切です。年齢に応じた言葉で、何が行われるのか、なぜ必要なのかを説明します。例えば、「ちょっとだけ動かないようにするために、特別なバンドを使うんだよ。でもすぐに終わるからね」といった声かけや、
「○○ちゃん、○○くんのことが大切だから、特別にたくさんの先生たちが治療のお手伝いに来たよ!」などと必ずプラスの表現で説明するようにしましょう。

2-2.治療中の積極的なコミュニケーション
治療中も子どもと積極的にコミュニケーションを取り続けることが重要です。
怖がらせないように、優しい声で話しかけ、状況を説明しながら治療を進めます。
「もう少しで終わるよ」や「とても上手にできているね」と沈黙の時間を作らないよう、スタッフの誰かが5秒に1回は声をかけると良いです。

2-3.ポジティブな体験の提供
抑制治療が終わった後には、子どもに対してプラスの言葉をかけましょう。
シールや小さなご褒美を用意することで、治療後のポジティブな体験として記憶させることができます。

3.ご家族との連携

抑制治療を成功させるためには、ご家族との連携が不可欠です。

3-1.ご家族のサポート
小児患者の性格によっては、ご家族の存在が安心感を高めることがあります。
可能であれば、治療中にご家族に手を繋いでもらう、頭や体を抑えてもらうなどサポートしてもらいましょう。
そうすることで、ご家族の方も「おやつの時間や量を決めよう」「仕上げ磨きをちゃんとしよう」と小児患者への口腔内意識が変わる場合もあります。

3-2.継続的なフォローアップ
抑制治療が終わった後も、ご家族と連絡を取り続けることが大切です。
ご家族には「抑制治療後、嘔吐していないか」「思い出して泣いたり、ストレスを感じたりしていないか」などを確認しましょう。
また治療後の経過や小児患者やご家族の心理状態について確認することで、歯科医院と患者様との信頼関係も強化されます。

まとめ

小児患者の抑制治療は慎重なアプローチが求められます。
ご家族への明確かつ丁寧な説明と、書面での同意を得ることが不可欠です。
また、小児患者への説明と積極的なコミュニケーション、ポジティブな体験の提供を通じて、信頼関係を損なわないようにすることが重要です。
ご家族との連携も忘れずに、抑制治療に臨みましょう

プロフィール
nishiyama

歯科大学歯科衛生士学科卒業後、小児患者や障害者の歯科診療体制や、歯科恐怖症患者について学ぶため歯科大学付属の専攻科へ進学し口腔保健学学士を取得。その後は小児歯科専門歯科医院にて勤務。歯科衛生士ライターは「歯科に苦手意識を持っている人が媒体を通して理解し、歯科を身近に感じることで歯医者に行ってみよう」という気持ちになることを後押ししたいという思いから学生時代に始めた。

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