第28回歯科衛生士国家試験と歯科衛生士を取り巻く現状

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はじめに
2019年3月3日に第28回歯科衛生士国家試験が行われた。
本稿では、近年の歯科衛生士国家試験・歯科衛生士を取り巻く現状について紹介したい。

歯科衛生士国家試験合格率の水準
歯科衛生士国家試験の合格率は毎年高く、ここ5年間は95%前後を保っている。本年3月に行われた第28回歯科衛生士国家試験も合格率は96.2%と非常に高い水準であった。合格者数も6,934名と7,000人前後というここ数年の合格者数とほぼ同じ数であった。おそらく、この流れは今後も続くであろう。

歯科衛生士専門学校の入学者状況
2018年(平成30年)4月現在、わが国には164校の歯科衛生士養成機関がある。1)(4年制大学11校、短期大学14校、専門学校139校) 入学定員は過去5年間で1,000人増加して平成30年度では9,055人であった。これは過去最高である。それに対し、入学者数は7,570人と減少している1)
また、入学者数が入学定員に満たない養成機関(いわゆる定員割れ)も増加傾向にあり、平成30年度では約6割(59.9%)が定員割れとなっている。
その理由としてもっとも考えられるのは養成校そのものの大幅な増加であろう。1970年では歯科衛生士養成機関が70校であったのに対し2)、先述の通り2018年では164校と2倍以上となっている。1993年(平成5年)以降、歯科衛生士養成校の入学定員は増加の一途をたどり、25年間で2倍近くになったが、入学者数は25年間で約1.5倍の増加にとどまっている。

高まる歯科衛生士へのニーズ
しかしながら、歯科衛生士の社会的なニーズは高まる一方であり、歯科衛生士の不足問題がクローズアップされるようにもなっている。
2016年(平成28年)の衛生行政報告例によると就業歯科衛生士数は123,831人と前回(平成26年)の調査と比較して約7,500人の増加がみられてはいる。それでもなお歯科衛生士の不足の解決には至っていない。
その理由としては、まず歯科衛生士の需要の増加が挙げられる。現在では歯科診療所のみならず、病院、介護保険施設などにおいても歯科衛生士の勤務の場が広がっている。
現に、新卒歯科衛生士の求人倍率は2010年度(平成22年度)には11.9倍であったのに対し、2017年度(平成29年度)には21.0倍と7年でほぼ2倍となっている。

課題と対策
また、歯科衛生士の資格を有しながら勤務をしていない者の人数も増加傾向にあると考えられている。結婚・出産・育児といったライフイベントの変化により退職、勤務時間短縮につながるケースも多く、復帰を考えてもブランクによりあきらめざるを得ないといったケースも存在するであろう。
加えて、歯科医院の診療時間延長の傾向により育児や保育との両立が難しいという事情もある。それに対し診療所側でも診療時間の短縮や産休・育休制度、シフト制の導入や拡大などの方策をとっているところは存在するものの、全体の取り組みとしてはまだ十分であるとはいえない。
個々の診療所のみならず、歯科医師会や自治体も含めての取り組みが必要と考える。たとえば、託児所や保育所を歯科医院と併設する、歯科医師会などが主催で服飾希望者に対する講習会を開催するなどの方法が考えられうる。
 近年の保育所不足問題など、育児と仕事を両立する社会への変革を考えると自治体との協力は間違いなく必須であるといえる。
歯科衛生士という職業のすばらしさを伝えることでその入り口に立つ学生を増加させること個々のライフイベント・ライフワークに合わせた環境を官民が一体となって整備することが歯科衛生士の働きやすさにつながるのではないだろうか。
【参考文献】
1)一般社団法人 全国歯科衛生士教育協議会 歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告
2)厚生労働省 平成28年衛生行政報告例 P7

東京デンタルスクール 岡田優一郎
執筆協力 岩脇清一



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