がん患者さんの口腔管理

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がん患者さんの口腔管理

今では二人に一人が対象者。がん患者さんの口腔管理に目をむけよう!

日本人の2人に1人が「がん」を体験すると言われる時代。がん患者数が増加している。かつて「不治の病」と恐れられたがんも、今日では治療技術の進歩により「長くつきあう病」として位置づけられ、社会の理解とサポートが求められてきた。事実、厚労省も「事業所における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」をまとめるなど、がんと共存しながら仕事を続ける人を支える社会を推奨している。このような状況下、歯科医院に通院中の患者さんにも、がん治療を控えていたり、治療中の人がいることは想像に難くない。医科歯科連携の壁はあっても、実は歯科医院はその強力なサポーターなのである。
がん患者には、放射線治療や化学治療などで口腔内に粘膜炎が起き、がん治療の完遂を妨げること、また未治療歯の治療や口腔清掃ががん治療の合併症予防となることが医科でも周知されている。ただ、多くの歯科医院にとって未知の分野だけに「何をやるのか?」「リスクが高いのでは?」と不安も多いはず。が、実際には未治療歯の治療、口腔粘膜病変への対応、口腔清掃が主体だ。日本の社会のニーズを考えると、がん患者の口腔管理をぜひとも診療に加えておきたい。
『歯科医師ががん患者をサポートする』 ことの意味

がんとともに生きる人が増えている

がん患者さんの口腔管理
※年間調整死亡率と罹患率の推移(全年齢)。年齢調整罹患率は1985年以降増加、年齢調整死亡率は1990年代後半から減少している。
国立がん研究センター(http://www.ncc.go.jp/jp/)によるがん統計(2015年3月27日更新)より引用改変。
がんは1981年に死因の第1位となって以来、患者数が増え続け、いまや日本人の2人に1人ががんにかかる時代で、国民病ともいえる状況になっています。がんは高齢になるほど罹患率が高くなる傾向がありますが、日本人の平均寿命はまだ延びるといわれており、がんにかかる人も今後さらに増えることが予想されます。
 ただ、がんが不治の病といわれたのは昔のことで、がん検診やがん治療の進歩によって、がんは早期に発見し治療すれば多くが治る病気となりました。すなわち、これからはがんにかかる人は増えるものの、治る人、また治療を受けながらがんとともに生活する人も増加していくものと考えられます。したがって、自宅で生活しながら治療や療養を続けるがん患者をどうサポートしていくか、その質的、量的な方法について検討する必要性が出てきています。

重要度を増すがん治療の副作用へのサポート

一方で、がん治療やがんの進展に伴って色々な副作用が出現し、これが患者のQOLを大きく低下させる一因となっています。そのため、これらの副作用の症状を緩和し、がん患者の生活の質の向上を図ることを目的とした支持療法の充実が急がれています。近年、化学療法(抗がん剤治療)は外来での通院治療が主流となっており、患者は自宅で生活しながら治療を受けています。そのため、副作用が発症した際にどうすればよいのか、患者が不安と戸惑いを訴えることがよくあります。それに対し、例えば、がん治療の副作用としての口腔粘膜炎や口腔乾燥症、味覚障害などの口腔トラブルの出現に備え、がん治療を行っている病院とかかりつけ歯科医院が有機的に連携し、自宅近くのかかりつけ歯科医院に気楽に相談し治療を受けることができれば、患者はどれほど心強く思うことでしょう。

歯科医院こそがん患者の心強い味方

このような支援を通し、口腔トラブルによる不快症状を少しでも緩和することにより、患者の食べようとする意欲が生まれ、その人のQOLを精神的・身体的両面からサポートすることができます。このサポートは、がん患者に特有な口腔状態を理解さえすれば、われわれかかりつけ 歯科医にとってもそれほど難しいものではありません。院内に歯科を併設する病院が20%弱にすぎないことを考えると、全国の地域医療を担うかかりつけ歯科医院が、がん患者の口腔トラブルに対し口腔管理を行うことができれば、がん患者の口腔へのサポート体制は質的、量的に飛躍的に向上し、患者のQOLの向上にも大きく貢献すると思われます。

良好な口腔環境がすべてのがん患者を支えている

歯科医師は、口腔がんに対する治療を除けば、直接がん治療に携わることはありません。
 しかし、歯科医師はすべてのがん患者に対して、口腔環境を整え口腔機能の維持と回復を図ることにより、患者の「食」を支え続けることができます。そしてこのことががん治療の完遂を支えるとともに、がんに立ち向かう「生きる力」を生みだす源となるのです。
口腔乾燥症
がん患者さんの口腔管理
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がん患者、なかでも終末期がん患者における口腔不快症状のうちで最も多くみられるのは、口腔乾燥症です。終末期がん患者における口腔乾燥症は、健常人のそれに比べ、非常に重篤な場合が多いことが特徴です。(図1、図2)

口腔乾燥症の原因

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 口腔乾燥症は、生命には直接関わらないため軽視されがちですが、患者の精神的・身体的苦痛は大きく、最も積極的に症状の緩和を行わなければならない口腔症状です。
 がん患者の口腔乾燥症が重篤化しやすい理由は、唾液分泌量の低下、体液量の低下(脱水)、保湿度異常(唾液蒸発)のすべてが重複して起こることが多いためです。口腔乾燥症の原因となりうる、唾液分泌量の減少、唾液粘稠度の増加、唾液蒸発量の増加、脱水の各項目について、それぞれを惹起すると考えられるがん患者特有の原因因子を図3に示しました。(図3)

口腔乾燥症の特徴

①唾液分泌量の減少
化学療法や放射線療法による唾液腺の障害、オピオイドなどの各種薬剤の副作用、噛まなくなることによる咀嚼運動の減少、緊張やストレスなどの交感神経の優位状態が続くことなどが原因となって、唾液分泌量が減少します。

②唾液粘稠度の増加
化学療法や放射線療法によって唾液腺の漿液性細胞が早期に障害されやすいことや、緊張やストレスなどの交感神経の優位状態によって、ムチンなどの粘性タンパク質を多く含む唾液の分泌が促されることにより唾液粘稠度が増加し、口腔乾燥感が増強されます。

③唾液蒸発量の増加
食事量が減ることなどによる咀嚼筋の廃用萎縮や、サルコペニアなどによる筋肉量の減少などから起こる開口状態の常態化とそれによる口呼吸の増加、さらには酸素吸入によって唾液蒸発量が増加します。

④脱水
終末期になるほど、心臓への負担軽減のために輸液量を減らして循環血液量を減らすdrysideの維持管理が行われること、患者の水分摂取が不足しがちなこと、肝硬変やネフローゼなどの際にみられる血管外への体液の移行、嘔吐や下痢などの腎臓以外からの体液の喪失などが原因となって、ほとんどの終末期がん患者は脱水状態にあるといえます。

病院歯科口腔外科へ 紹介するタイミング

①ほとんど医院で対応可能
がん患者の口腔乾燥症について病院歯科口腔外科へ紹介しなければならない状況になることはほとんどありません。むしろかかりつけ歯科医院のほうがこまやかなケアを行うことができると思います。疼痛のコントロールについても、歯科医院で十分可能ですが、鎮痛効果があまり得られない時は病院歯科口腔外科へ紹介する方がよい場合があります。

②この時期に脱水改善を目的とする紹介は無意味
脱水の改善を目的として、病院歯科口腔外科での輸液などを想定して患者を紹介することは不適当です。輸液で口腔乾燥は改善しません。口腔乾燥症に対しては、輸液よりは丁寧な口腔ケアが有効です。また、強い口腔乾燥症はがん治療期よりも終末期でよくみられますが、終末期のがん患者への過度の輸液は、浮腫、胸水、腹水などの増加を招くことになり、推奨されません。

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