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2018/10/25

歯周病との向き合い方を変える時代がやってきた

歯周病との向き合い方
 周知のごとく、21世紀に入り歯周病の病因論は大きく進歩した。1950年代から提唱されていた歯石・プラーク説から、歯周病は宿主(歯周組織)と細菌の均衡状態が崩れた時に発症、再発することが明らかとなった。その均衡を保つ鍵は、歯肉縁下に形成されるバイオフィルムの定期的な破壊である。バイオフィルムは人が生きている限り、繰り返し形成され、歯肉の炎症を起こす。つまり、歯周病はいったん症状が緩解しても、管理を怠れば、また首をもたげてくる。他の慢性疾患、例えば、糖尿病などと同様、生涯にわたる管理が不可欠な疾患であることが証明された。歯周病に完治はないのである。しかも全身疾患、ストレス、加齢、多忙な生活・・・・人の人生の各ステージで起きる様々な事柄が歯周病に間接的に影響してくることも明らかになってきた。今、「慢性疾患」としての歯周病の本当の姿が浮かび上がってきたのである。
 それだからこそ、今ここで「歯周病とはどんな疾患なのか?」「何が本質的な治療なのか?」を最新の病因論で学び直し、認識を新たにしておきたい。歯周病の病因論、治療法は過去様々な変遷を繰り返してきただけに、何がこれからも有効で、何がそうでないのか。そして、何が本質的な治療であるかを学びなおしておきたい。また、「HOME DENSIST(かかりつけ医)」としての仕事がいかに重要であるかも再認識しておきたい。
今日に至るまでの歯周病の病因論の変化
最新の病因論に基づく歯周治療は「病気の根絶ではなく、歯周組織と細菌の均衡の回復と維持」
病因論の進化により私達の行う歯周治療は、「細菌を0にするわけではない」、抗菌薬で細菌を 除菌することはできないし、しようとしてはなりません。「プラークを0にするわけではない」、プラークの 量も質も重要ですが、プラークコントロールは、歯周治療の1つの要素です。

結局のところ、歯周治療とは、
①質の高い歯周基本治療により、「局所の感染の除去を可能な限り行う」こと
②プラークコントロールを適切にすること
③喫煙はしない
④メインテナンスを行うことにより、生体が細菌の攻撃に耐えて均衡を維持できるよう手助けをすること

と考えられます。病因論の進化により歯周治療は、「病気を根絶するのではなく、均衡を回復し、維持すること」と考えるようになっているのです
歯周病の見方 その1 <時間軸で考える>
~歯周病は過去から現在の問診、考察が重要~
歯科臨床は長い時間軸で見続ける性質の仕事と考えるべきです。長い時間軸で見ていると歯周炎の悪化や二次う蝕や根面う蝕のような経験もすれば、予想以上に良好な経過をたどることも経験します。これらを医院の経験として蓄積していき、臨床判断を絶えず向上させていかねばなりません。歯周病の性質上、いったん回復したから治療が終了するわけではないからです。
歯周病との向き合い方

私達に見えるのはある時間断面の状況だけである。しかし、実際には、時間は過去から未来へと途切れなく続いている。初診時の時間断面だけで 判断するのではなく、年齢や口腔内、歯周組織の状況、そして適切な問診によって過去の状況を把握することで、未来の予測が可能になる。
歯周病の見方 その2 <患者の感受性を考慮する>
~年齢と破壊の程度に関する情報が、術後経過の推察に重要~
 1990年代に宿主と疾患修飾因子の関係が明らかになり、宿主の遺伝的なリスクファクター(感受性)が歯周病の進行に影響することがわかりました。
初診時に患者の歯周病に対する感受性を判断するには、年齢と破壊の程度を考慮することが重要です。
 慢性歯周炎と呼ばれる歯周炎は、プラークや歯石が蓄積して生じるため、ある意味不潔病と言えるでしょう。おおむね35歳以上に発症するイメージです。以前は成人型歯周炎と呼ばれていましたが、もっと若い年齢でも生じるため、慢性歯周炎と分類されるようになりました。
 一方、比率は少ないですが、20歳前後から20歳代で進行した歯周炎に罹患している人もいます。こちらは侵襲性歯周炎と分類されます。進行した部分と健康な部分が隣り合っているのが特徴的です。
 このように、年齢と破壊の程度は、その人の歯周炎のリスクを総合的に表しているため、術後経過を推察するための重要な情報です。

1980年代に歯周組織の破壊の経路が解明され、1990年代には破壊の進行のスピードが宿主の遺伝的なリスクファクターや全身状態や生活習慣によって異なることが明らかになった。
歯周病の見方 その3 <患者の生活習慣を考慮する 特に喫煙の状況を把握する>
~現在の喫煙や過去の喫煙歴は重要な問診事項である~
 さらに、患者の感受性だけではなく、環境・後天的 リスクファクターにも目を向けなければなりません。その中で最も重要なリスクファクターが喫煙です。初診時重度歯周炎の大半は、スモーカー、ないしは喫煙経験者です。通常の歯周治療を行っても反応が悪く、いったん落ち着いていても中長期的には悪化することが多くあります。ですから、現在の喫煙 や過去の喫煙歴は重要な問診事項です。後天的リスクファクターでは、コントロールされていない糖尿病が重要な要因です。しかし、最近は糖尿病への啓発が功を奏したのか、実際の臨床現場では、喫煙ほど大きな問題ではないと考えています。
歯周組織に対して喫煙は、①歯周ポケット内細 菌叢への影響、②歯周組織の炎症所見のマスキング、③歯周組織局所の免疫系への影響、④線 維芽細胞への障害による歯周組織の創傷治癒の遅延、などの影響を及ぼし、結果として喫煙者は非喫煙者に比較して歯周病の罹患率が高く、経時的に歯周炎がより進行し、さらに治療後の予後に悪影響を及ぼすことが明らかになっている。
歯周病の見方 その4 <患者は時間と共に変化する>
~歯周治療では、患者に寄り添う姿勢が重要~
 私達のように地域で30年以上診療を続けていると、若い頃には理解できなかったことを実感できるようになります。その一つが、患者は時間と共に変わっていくということです。
 患者の変化は大きく分けると、生き物としての変化、つまり成長や加齢によって必然的に起こる変化と、結婚、離婚、就職、退職や失職、突然起こる病気のように思いがけなく起きてくる変化があります。地域の歯科医院では、そのどちらの変化にも対応していかなくてはなりません。
 重要なことは、常に決まった事を同じように続けていくのではなく、患者の変化を見逃さず、常にその時期の最適なメインテナンスを考え続けていくことです。
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歯周病の病因論と歯周治療の考え方
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