株式会社ヨシダ主催「iTOP イントロダクトリー コース 予防歯科医院が勧めるTBI 」

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「iTOP イントロダクトリー コース 予防歯科医院が勧めるTBI」概要
2019年4月28日、上野の株式会社ヨシダ東京本社において、「iTOP イントロダクトリー コース 予防歯科医院が勧めるTBI」が開催された。
当日の参加者は12名で、受講者の多くは歯科衛生士であった。セミナー受講のために、遠方から足を運んで来た方が多く、東京都内からの受講者は当日ほとんどいなかった。
セミナー講師は、菅原 美里先生(iTOP講師/All Smile Dental Clinic勤務)と柿本 薫先生(iTOPインストラクター/医療法人社団ワンアンドオンリー麻生歯科クリニック勤務)であった。実習中では、各参加者の疑問に対し、非常に丁寧に回答していた。

iTOPセミナー内容


・iTOPレクチャー
・昼食
・実習①(歯間ブラシ)
・実習②(歯ブラシ・タフトブラシ)
・質疑応答/サーティフィケイト授与


フロスよりも歯間ブラシを積極的に使用すべき理由
▲菅原 美里先生 講演の様子
iTOPは、「individually Trained Oral Prophylaxis」の略称である。正しい歯ブラシや歯間ブラシの選び方を含めた歯磨き指導(TBI)をマンツーマンコーチングで行うことにより、患者のブラッシングテクニックの質を高めるプログラムとなっている。iTOPはスウェーデン、中国、インドなど、多くの国で行われている。
iTOPは、基本的にCURAPROXの歯ブラシと歯間ブラシを使用して行う。
CURAPROXの歯ブラシは、普通の歯ブラシよりも非常に軟らかい。植毛数も多いため、ブラッシング圧が分散され、歯や歯周組織に与えるダメージを最小限に抑えてくれる。普通の歯ブラシに慣れている場合、磨けていないように感じるかもしれない。その場合、歯の染め出しを行うことで、歯の汚れの落ち具合を確認してみると良い。
以前、歯の染め出しを行いCURAPROXの歯ブラシで磨いてみたが、ワンストロークで汚れが落ちるのを確認することができた。また、CURAPROXの歯ブラシを使用すると、歯肉に当たっても痛みがほとんど無いことから、現在はCURAPROXの歯ブラシを愛用している。
CURAPROXの歯間ブラシの使用方法については、まず、歯間のサイズを計測し、サイズに応じた歯間ブラシ(色で分類)を選択する。歯を一本一本確認しながら、選択した歯間ブラシを、コルを意識して、上顎であればコルの上をまたぐように、下顎であればコルの下をくぐるように使用することが肝要である。
▲柿本 薫先生 講演の様子
「歯間ブラシは、高齢者が使用するものではないか?」、「小児はフロスの方が良いのでは?」「無理に歯間ブラシを使用すると、歯周組織を傷つけそう」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれない。過去の研究では、フロスよりも歯間ブラシの方がプラークの除去率が高いことが報告されており、小児にも歯間ブラシを積極的に使用した方が良いという考えもある。
歯周組織を傷つける可能性については、CURAPROXの歯間ブラシは9つのサイズ(一般用・歯周病用)があるため、歯周組織を傷つけることは少ないだろう。歯列不正などで、歯間ブラシがどうしても通らない場合は、フロスを選択すれば良い。
iTOPの実習を通じ、歯間サイズに合った歯間ブラシを選択する大切さを実感
▲歯間ブラシのサイズと出血箇所を記録
iTOPの実習では、参加者同士がペアを組み、患者説明の際に使用するチャート (上図) を用いながら、「歯間出血指数」を測定する相互実習が行われた。歯間出血指数の計算方法は、以下の通りである。
・歯間出血指数
(出血した歯間部位合計数/歯間部位合計数) X 100 (%)
iTOPを行う手順だが、歯式確認と同様に、上顎右側臼歯部から基本的に確認していく。歯間のサイズを確認・記録し、歯間ブラシを通して、30秒後の出血を確認・記録する。最後に、歯間出血指数を算出する。
私の場合、歯間部位合計数が26か所で、出血した部位が14か所であったため、54%という高めの数値となった。2-3日間隔でフロスを使用しており、歯間部も綺麗に磨けていると思っていたため、やや落胆する結果となった。
講師陣曰く、歯間ブラシを1日1回きちんと通すことにより、1週間程で歯間出血指数は大きく改善するとのことだ。今後はフロスではなく、歯間ブラシを積極的に活用し、自身の口腔衛生の改善・維持に努めていきたい。
▲歯間サイズに合わせた歯間ブラシを通すのが重要
1つ問題なのは、一般用・歯周病用を合わせて、9つのサイズの歯間ブラシがあることである。最初から患者にチャート通り歯間ブラシの使い分けをお願いしても、元々のモチベーションが高くなければ従わない可能性は高い。
最初は一番小さなサイズの歯間ブラシのみを使用してもらうことなどの工夫が、患者の動機づけにおいて重要である。2回目は、出血が顕著な部位のみ1サイズ大きな歯間ブラシを使用してもらうなど、患者のモチベーションに合わせ、徐々にステップアップしていくことが勘所となる。
実習を通じて感じたのは、歯科医療従事者自身が正しいブラッシング方法を理解・実践していなければ、患者にTBIを実施することはできないということだ。本記事ではiTOPの全ての内容を紹介しきれないため、詳しい内容は、「iTOP イントロダクトリー コース 予防歯科医院が勧めるTBI」を受講し、直接聴いていただきたい。
▲iTOPの実習で実際に使用した器材
「歯を削り続けますか?それとも予防で世界を変えますか?まずは、iTOPを自身で実践して、変わったと実感してもらえれば嬉しいです。」菅原先生のメッセージである。
次回の「iTOP イントロダクトリーコース 予防歯科医院が勧めるTBI」の東京での開催は、7月14日の予定である。歯は加齢により喪失するのではない。iTOPの実践により、患者の口腔内の健康を一生涯維持することは可能である。読者の皆様にもぜひiTOPの良さを体験していただきたい。
本記事が読者の日常診療の一助になれば、幸いである。
古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
  • 日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentWaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、現在に至る。


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