第二種歯科感染管理者・継続セミナーレポート

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第二種歯科感染管理者・継続セミナーレポート
9/9(日)、東京医科歯科大学の1号館特別講堂において、メディコムジャパン主催で「第二種歯科感染管理者・継続セミナー」が開催された。歯科感染管理者とは、歯科医療現場において高度な感染制御の知識を有し、それを実践できる歯科医療従事者のことを指す。NPO法人JAOSが歯科感染管理者資格制度(一種・二種)を設けており、定期的に歯科感染管理者の検定講習会を開催している。今回のセミナー参加者の5割以上は歯科衛生士であった。講師は近藤篤先生(茨城県滅菌業務研究会会長)で、石岡第一病院の手術室主任看護師としての自身の経験を踏まえ、感染管理に対する知識と技術をしっかりと持つ必要があることを述べられた。セミナーの内容は非常に多義に渡っており、器材の洗浄方法・種類、洗浄における水質の重要性、超音波洗浄の原理、洗浄をせずに消毒を行うことの危険性、滅菌器のクラス分類などの内容について講演された。
ところで、普段使用している歯科器材(Ex. 探針やピンセット)で黄色く錆びている部分やレインボーに変色している箇所を見たことはあるだろうか。そうであれば、器材の異常である。器材の劣化であるか、不十分な洗浄が原因で汚れが残留したまま、消毒・滅菌のステップに移っている可能性が極めて高い。今回のセミナーでは、消毒・滅菌の前の洗浄が如何に重要なステップであるかをしっかりと理解することができた。洗浄以外で特に勉強になったのは、「タービンハンドピースの滅菌を滅菌クラスBで行う理由」についてである。クラスBで滅菌を行う主たる理由は、クラスN・Sの滅菌ではタービン内腔の脱気が不十分で飽和蒸気が行き渡らないからである。そのために、タービン内腔の脱気が十分に行われてから給蒸されるクラスBの滅菌器でタービンを滅菌することが推奨されている。クラスBの滅菌器でタービン滅菌を行う方が良いことを理解している読者の方は多いと思うが、その理由を詳しく説明するのは難しいのではないだろうか。歯科感染管理者セミナーを聴講することで、洗浄から消毒、滅菌に至るまでの1つ1つのステップが如何に重要かを理解することが出来る。安全な歯科治療の提供を促進するためにもセミナー受講をお勧めする。
平成30年度の歯科診療報酬改定で感染対策が盛り込まれ、将来的にはクラスBレベルでの歯科器材の滅菌が義務化されるかもしれない。最近、歯科医院のHPを閲覧してみると、クラスBの滅菌器を使用していることをアピールするクリニックが増えているが、歯科感染管理者が勤務していることをアピールするクリニックも増加傾向である。昨年、ハンドピースが滅菌されずに使い回されていた問題が報道されて以降、院内感染対策の取り組みを徹底しているクリニックへの受診を希望する患者が増えている。それに比例し、感染管理に対する知識・技術・実行力を十分に持ち、患者が安心して受けられる歯科治療の提供ができる歯科医院の需要も増すことが推察される。患者・スタッフを医療機器関連感染から守るために、今一度感染管理に対する知識を再確認すべきではないだろうか。
古川 雄亮(ふるかわ ゆうすけ)
  • 日本矯正歯科学会 所属

東北大学歯学部卒業後、九州大学大学院歯学府博士課程歯科矯正学分野および博士課程リーディングプログラム九州大学決断科学大学院プログラム修了。歯科医師(歯学博士)。バングラデシュやカンボジアにおいて国際歯科研究に従事。2018年より、ボリビアのコチャバンバで外来・訪問歯科診療に携わり、7月から株式会社メディカルネットに所属。主に、DentWaveやDentalTribuneなどのポータルサイトにおける記事製作に携わり、現在に至る。

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