第78回日本矯正歯科学会学術大会開催される

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第78回日本矯正歯科学会学術大会

2019年11月20~22日、長崎の長崎ブリックホール、長崎新聞社などにおいて、長崎大学大学院医歯薬薬総合研究科歯科矯正学の吉田教明教授を大会会長として開催されました。
今回のテーマは、「矯正歯科医療~どこから来て、どこへ行くのか?」
会長は、後数年で100年の節目を迎える日本矯正歯科学会の長い歴史の中で、新しい時代の令和元年に、初めて長崎の地で同大会を開催する感謝の気持ちを表わされるとともに、温故知新の心を忘れずに、未来の矯正治療を展望し、真に患者の利益につながる医療を創世していこうという意思が込められている、と述べられています。
学術大会では、特別講演として、ベルリン医科大学(Charité)歯科矯正学・小児歯科学講座教授のPaul-Georg Jost-Brinkmann先生をお招きし、「矯正臨床におけるCAD/CAM 技術の活用」についての講演がありました。また、教育講演では、曽我部正博先生より「メカノバイオロジー入門:細胞はどのように力を感じ応答するのか?」についてのお話しがありました。さらに、臨床セミナーとして、「バイオメカニクスをいかに矯正臨床に応用するのか?」、「過去の難症例・再治療症例から学ぶ未来への戦略的矯正診断・治療」、シンポジウムでは、「歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療を再考し、今後を展望する」、「あなたの抜歯の考え方は?」がテーマとなり、各口演者の発表について会場で活発な論議がなされました。このほか、スタッフ&ドクターセミナー、生涯研修セミナー、サテライトセミナー、ラウンドテーブルディスカッション、学術口演、学術展示、症例展示、商社展示、企業プレゼンテーション、JOSフォーラムなどが行われ、2日間の大会が終了しました。
~ 矯正治療のデジタル化 ~
臨床的な観点では、矯正治療のデジタル化(デジタルテクノロジー)が一層進んできたという状況です。今の矯正装置の主流は、ストレートワイヤー法といって、歯面に既成のブラケットを接着し、既成のワイヤーを装着してワイヤーをブラケット内で滑らしながら歯を移動する方法となっています。しかし、個々の患者では、歯の形状や大きさ、歯列の形状、咬み合わせ、骨格などが異なるため、少しの調整は必要です。ところが、治療開始まえに、歯の3次元情報をスキャナーで読み取り、それを3Dプリンターで模型にすることができると、患者に合ったカスタムブラケットを製作したり、ブラケットは既成のものであってもアーチワイヤーにトルクやオフセットベンドなど加えて個人に合ったものにしたりすることが可能となります。また、この歯の三次元情報から、ソフトを介してシミュレーションとして歯を移動することもできるので、より具体的な治療計画も立てられます。加えて、治療の仮想最終結果も見ることができますので、治療計画の変更や最終歯の位置の修正も可能です。このような、歯を動かしたり、歯を抜いたりして最終的な歯の位置、配列や咬合を確認するためにはセットアップ模型が必要です。従来では石膏模型を一歯毎に切り離して配列するのを手作業で行っていますが、デジタル化されていれば、直ぐにでも修正や調整が可能です。さらに、歯冠だけではなくレントゲンCTによって骨や歯根の情報と突合することが可能になれば、実際の歯の移動に近いものが再現されることになります。また、3Dプリンターがあれば、アライナーや保定装置も製作することができるようになります。近い将来、一歯科医院にCT撮影装置や3Dプリンターが当たり前の器機になるかもしれません。
最後に、会場となった長崎は、歴史と観光の街で、長い海岸線と多くの島々を有する大変美しい所です。新鮮な海の幸、チャンポン、皿うどん、卓袱(しっぽく)料理や西洋と東洋の文化が交じり合った異国情緒豊かな街並みと歴史散策を楽しめます。懇親会会場となった稲佐山からは世界新三大夜景を見ることができ。世界遺産やハウステンボスなど長崎の名所も多く存在します。さらにこの時期の雲仙国立公園では紅葉と温泉も満喫できますので、大会後の土日連休を利用して家族旅行などで楽しまれた方も多かったようです。
来年は、横浜で第9回国際矯正歯科会議世界大会が開催されます。さて、どんな新しい装置や治療法が出て来るか今からとても楽しみです。

⇒第9回国際矯正歯科会議世界大会のホームページはコチラ
大塚 純正 先生

略歴

昭和46年4月 福岡県立九州歯科大学入学
昭和52年6月 歯科医師免許取得
昭和大学歯学部歯科矯正学教室入局(前期助手)
昭和54年4月 同 助手
米国矯正歯科学会入会(American Orthodontic)
米国口蓋裂学会入会(American Cleft Palate Association)
昭和59年 4月 同 講師・昭和医療技術専門学校非常勤講師
平成 1年 6月 歯学博士
平成 5年 8月 日本矯正歯科学会 認定医・指導医取得
平成 6年 4月 育成医療指定医
(唇顎口蓋裂後遺症によるそしゃく機能に障害 のある者の意見書を作成する歯科医師)
平成10年 1月 日本頭蓋顎顔面外科学会
平成14年 1月 日本口蓋裂学会評議員(同IT委員会委員長)
日本頭蓋顎顔面外科学会理事
平成15年 3月 昭和大学退職
同年 4月 大塚矯正歯科クリニック開設
平成30年 5月 日本口蓋裂学会名誉会員現在に至る

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