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2014/10/09

第5回 事業承継や家族の絆も脅かす相続問題

こんにちは。税理士の三沢です。今回は前回に引き続き、信託を掘り下げてお話します。
信託の種類やメリット・デメリット・さらには活用例もお話したいと思います。

Ⅰ.民事信託とは

民事信託とは、個人信託や家族信託とも呼ばれることもあり、民事信託は営利目的でなく、受託者が限定された特定の者を相手とした反復継続しない信託制度です。
つまり民事信託は家族内でも行える身近な問題に適した信託制度です。
これに対し、信託銀行等が行う信託は、運用の報酬を受け、不特定多数の者に対し反復継続して事業を行うもので、商事信託と呼ばれております。

 

Ⅱ.民事信託の特徴

民事信託は通常の遺言では対応できない内容も可能とすることができます。
遺言書は、ご自身が希望する相手に財産を託すことができることが特徴(遺留分は侵害できませんが)ですが、一括で遺産を渡すことしかできず、以下のニーズには対応できません。
・分割で遺産を相続させる
・一定の年齢に達した場合に遺産を相続人や受遺者に渡したい場合
・遺産を相続する人から更に相続する人を指定した場合等
また、成年後見制度で対応できないことや、不動産の共有化に伴うリスクも回避することができる等の特徴があります。

 

Ⅲ.信託の活用案

商事信託、民事信託を問わず、信託には以下の場合に活用が想定されます。
・財産の承継者(1代・2代先も含め)を事前に決めておきたい。
・相続人でない方への生活保障
・財産運用や活用
・認知症を考え財産の保全対策
・財産を渡した後でも、その財産の管理は自分でしたい等

 

Ⅳ.民事信託と商事信託の比較

 

メリット デメリット
民事信託
  • 親族を受託者とすることができる
  • 費用が商事信託に比し、安い
  • ノウハウが乏しい
  • 身内ゆえに不正がはたらく可能性がある
  • 税務否認リスクがある。
商事信託
  • 業として行っているため、税務面の否認リスクや運用ノウハウがあるため、安定している
  • 親族を受託者とすることができる
  • 費用が商事信託に比し、安い

 

Ⅴ.用語の説明

●委託者
財産を受託者に移転し、信託目的に従がって、受益者のために信託財産の管理・運用・処分を指示する者

●受託者
信託行為の定めに従って、信託財産に属する財産の管理・運用・処分等を行い信託の目的達成のために必要な行為をする者

●受益者
受託者から信託行為に基づき信託利益の給付を受ける権利者
その他、権利を確保するために、受託者に帳簿の閲覧を求めたり、受託者の不正な行為等の差止め請求をする権利を有します

 

Ⅵ.遺言では限界がある場合 ~受益者連続型信託の活用~

相続を“争続”とさせないために『遺言』が大事であることは広く認知されてきました。
ですが、この遺言でもどうにもできない場合があります。例えば分かりやすい例として、次のようなケースが考えられます。
「夫である自分と妻との間には子供はいない。自分が先に死んだら、妻に全財産を相続させたい。なお自分の肉親は兄(妻と子供あり)だけだ。」

一般的には、『妻に全財産を相続させる』旨の遺言を書くでしょう。
この場合、兄には遺留分がないため、妻にすべてを取得させたい、という夫の遺志は確かに実行されます。ですが、その後妻が亡くなった場合、その財産はどうなるのでしょうか?

~妻が相続した自分の財産は、妻の親族へ順次相続されていくこととなる。~
「長年連れ添った妻には財産を残したい。だが、妻の死亡後に、妻の親族に財産がいってしまうなら、自分の血族である兄の子に承継させたい」

勿論、生前妻に“夫の兄の子に相続させる”旨の遺言を書いてもらう方法もあります。
ですが夫亡き後、妻がその遺言書を書き換えて新たに遺言書を作成する可能性は残ります。
夫の遺言では、妻の死亡後までも指定しておくことが出来ないのです。
ではどうすればよいのでしょうか?

それが、『受益者連続型信託』の活用です。信託というと、信託銀行というイメージが先行しがちですが、前に信託について説明しました“民事信託”すなわち“家族信託”であるため、一般の普通の家族で設定できるのです。

『自分が生存中は自分が委託者かつ受益者となり、自分が死んだ後は妻を受益者とし、妻が死んだ後は兄の子を受益者とする。』といった信託を設定します。この信託契約により、遺言ではできなかった「妻の死亡後に、自分の血族である兄の子に財産を戻す」ことができるのです。
この信託は30年間まで指定することができます。また課税方法は受益者が死亡する際に相続税が課されることとなります。
この信託設定の際の注意点として、財産の管理・処分権をもつ“受託者”を誰にするか? 信託設定の対象とならない財産への遺言書の作成等、そして、信託であっても遺留分の減殺請求の対象となる等があります。

最後に一番の誤解を生みやすいポイント、それは“信託とは決して節税対策ではない”、ということです。信託という言葉の通り“信じて託す”、つまり財産を守るための制度です。それゆえ、超高齢化社会となり認知症問題がさらに深刻化していくと予想されている今後、成年後見制度に代わる利用法としてこの信託が脚光を浴び始めているのです。もしかしたら節税対策を優先するあまり、“親の財産管理”に関して、気が付くと切実な問題となっていることが多いのでは・・と感じている今日この頃です。

 

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