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2013/10/24

第87回:修復物のリペア

近年海外ではリペアに対する関心がかなり高まっているようであり、これを取り上げることとした。今年のみでも2件のレビューやコンポジットレジン(以下CR)のリペアに関するかなり詳しい研究論文が発表されている。今回紹介するリペアのシステマティックレビューを見ると、1982-1991年の10年間のリペアに関する論文数にくらべ、その後の2011年までの各10年間の論文数はそれぞれ約1.7倍、2.8倍と大幅に増加している。最近の10年間での論文内容は、およそin vitro49%、総説類20%、臨床研究15%、症例報告11%、教育6%などとなっているが、この中でそれ以前まではまったくなかったのはリペアの教育である。(なお、ここに示したような数字はレビューにはまったくない。レビューにある図から筆者がおよその数字として割り出したものである)

「修復物のリペア—判断基準と臨床的推奨」と題するシステマティックレビューがDental Materials 29巻28-50頁に掲載されている。修復材としてCR、アマルガム、グラスアイオノマーセメント(以下GIC)、セラミックあるいはメタルを取り上げ、臨床およびin vitroの観点からリペアのレビューを行った論文である。以下に内容をざっと紹介する。まず、CR、アマルガム、GIC、セラミックとメタルボンドシステムのリペアについての概観である。
・CRのリペア: CR修復の平均の年失敗率は2.2%という数字がある。破折と二次う蝕が再修復の最も多い理由である。失敗した修復物は通常全部再修復されているが、かなりの量の歯質喪失をもたらす。その代りの処置としてリペア、再研磨、シーラントがあるが、これらの寿命に関するエビデンスは少ない。2000年の報告によれば、臨床家はリペアをあまりよく評価しておらず、”パッチワーク歯科”ともいって、50〜71%の人が再修復するという。
・アマルガムのリペア: CR修復がずっと増え続けている一方で、安価で長期での費用効果的なアマルガム修復も依然として重要な選択肢であると多くの臨床家は考えている。アマルガム修復物の再修復のおもな理由は二次う蝕と破折である。全部再修復が最も通常の処置であるが、かなりの歯質喪失を伴う。欠陥修復物の処置のほかの選択肢として、リペア、シーラント、再研磨がある。リペアと再修復の5年後生存率は同じであるが、10年後にはリペアは悪化したという報告がある。
・GICのリペア: GIC修復物のリペアについての3.5年までデータのよれば、2.5-3.5年の成功率は74%であり、多くの失敗リペアで損耗、破折、咬合面の欠損あるいは全喪失が認められた。このような結果となったのは、GICを辺縁部欠損だけでなく破折した歯の咬頭部や修復物のリペアにも使ったことが一つの原因である。
・セラミックおよびメタルボンドのリペア: 患者の審美的要求が増えるにともない、インレー、アンレー、べニア、オールセラミッククラウンおよびオールセラミックブリッジなど、オールセラミック修復が増え続けているが、不具合も起きる。オールセラミックおよびメタルセラミック修復物の再修復のおもな原因は、二次う蝕、ポーセレン破折とチッピングである。ポーセレン破折の原因はおそらく製作時の誤りあるいは汚染、治療計画の間違いであろう。これには、とくに咬合に関係しての不適当な材料の使用と修復のための十分なスペ−ス確保の不適切さがある。
チッピングを起こしたセラミック修復物について、チッピングが軽度であれば研磨、中等度はCRでリペア、重度は修復物全体を再修復。再修復に関連して次のような記載がある。(1)破折表面が機能領域にまで拡大している場合はリペアは不適当、(2)歯冠形態再調整は本来の形態にくらべ望ましくない解剖学的形態変化をもたらす、(3)歯冠形態再調整は熱の発生により歯髄損傷のリスクをかなり増加させる、(4)CRでのリペアは患者が望まぬ審美的変化をもたらす。

欠陥のある修復物をどのように取り扱うかは一般的に4つの選択がある。
1. 経過観察:わずかな着色あるいは最善とはいえない辺縁部があっても、未処置でも臨床的に不都合はない場合
2. 再研磨:新たに修復物を足すことなしに、過剰部除去、表面再形成、着色除去、細孔や微小ギャップを埋める表面の平滑化など、歯に損傷与えることなく欠陥部を調整。
3. リペア:臨床的に不満足で許容できないような局部的欠陥がある場合。修復物や歯の形成をするあるいはしないで修復材料を付加する低侵襲なやり方。
4. 再修復:全般的あるいは重大な問題があって介入が必要であり、リペアが妥当あるいは適切ではない場合。より多くの歯質喪失を通常伴う修復物の完全除去。

再修復は健全な歯質を犠牲にし、歯髄のバイタリティに影響を与えかねず、より大きな修復を招き、失敗のリスクが高まるむだな費用のかかる処置とみられている。
それに引きかえ、リペアの利点は次のように要約される。歯質の喪失がより少なくより保存的/歯髄へのあり得る影響が減る/痛みが減る(大体局所麻酔は不要)/隣接歯への医原性損傷のリスクが減る/治療時間が短縮/患者の負担が減る/患者の受けがよい、患者中心の治療/修復物の寿命が延びる。さらに、リペアが可能であれば費用対効果は通常有利である。特別支援が必要な患者、とくに口腔衛生や歯科治療への協力が難しい状況にある高齢患者ではリペアは有用である。リペアに適した条件は次のようになる。大きな辺縁の隙間あるいは溝(0.25mm以上)、審美的に容認できない重度の辺縁着色、深部まで進行していない二次う蝕、修復物の辺縁破折、チッピングあるいは部分破折、エナメル質辺縁破壊、修復物辺縁での歯質の損耗、修復物の損耗、少しの咬頭部破折。

これまでのin vitroおよび臨床的データから、リペアに関して次のように推奨,まとめている。
1. すべてのタイプの修復物と材料の辺縁部欠損のリペア:深部に進行したう蝕を除き、注意深く開けてクリーニング、辺縁を滑らかにしてリン酸エッチング、接着材塗布(セラミックあるいはCR修復物欠損の場合には、シラン含有接着材が有利)、ギャップはフロアブルコンポジット充填が最もよい。
2. チッピング欠損、体部破折、部分的あるいは重度の損耗のある修復物のリペア:
(a) 破損したコンポジットレジン表面:表面の平滑化とクリーニング、シラン塗布、ボンディング材、CR、重要部位には咬合接触させない、
(b) 破損したセラミック表面:表面の平滑化とクリーニング、任意だが注意深く安全にできるならば5%フッ化水素酸エッチング、シラン塗布、ボンディング材、CR、重要部位には咬合接触させない(注意深くとは、患者および治療者の保護眼鏡着用、きついラバーダム、欠陥表面がコントロールしやすく歯肉辺縁から離れている、十分な水洗と吸引、患者への説明と同意ということになる)、
(c) 露出した(メタルボンドの)メタル表面:表面の平滑化とクリーニング、チェアサイドでのシリカコーティングとシラン処理、オペーク、CR
(d) 露出したエナメル質と象牙質表面:平滑化、リン酸エッチング、接着剤塗布、CR。象牙質はなくエナメル質表面のみの場合は、象牙質接着材の代わりにより疎水性の接着材が望ましい。

少々面白い記載があったのでそれを紹介しつつ締めくくりとする。2004年の報告であるが、欠陥のあるアマルガム修復物24症例について、経過観察、研磨、リペア、再修復のどれを選択するかを英国と米国の学生・職員に質問した。英国の参加者はより保存的で再修復より経過観察が多かったが、全体としては、再修復がより多く選択され、リペアの選択はわずかであった。さて、我が国ではどうなることであろうかと思うのだが、残念ながら、やはり結果は同様、リペアは少数派という気がしている。筆者のような患者としては、やはりとりあえずリペアにしてほしいと思う。

(2013年4月30日)

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