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2013/10/24

第84回:根管治療歯は時限爆弾?

いささか穏やかではないタイトルである。それは、J Endod 2012;38:250-4 に掲載された“再発疾患原因としての象牙細管感染と再根管治療後の晩期不具合”という症例報告を読んだことに由来している。その内容を以下に紹介するが、要するに、根管治療後に再発した根尖性歯周炎を再治療し、いったんは完全に治癒したが12年後に問題が生じたという症例である。

患者は、上顎側切歯にX線所見で不適切な根管治療と大きな根尖歯周病変が認められた40歳女性である。作業長に達するまで手用Kファイルで#60から#45までクラウンダウン法、根尖は#50Kファイルのあと#80Kファイルまでステップバック法で拡大・形成した。5.25%NaOClで清掃、EDTAとNaOClでスメア層を除去、酸化亜鉛/ユージノール系シーラーとガッタパーチャで根充、コンポジットレジン修復した。根充後大きな側枝が認められた。2年後の診査では根尖部はほぼ治癒し、側枝と根尖から逸出したシーラーはほとんど吸収されていた。9年後では根周囲は健全となり、逸出したシーラ-は根尖では消失していたが、側枝ではわずか残存していた。ところが12年後、無症状ではあるが根周囲に疾患再発を示すX線透過像が認められた。今回は、根尖外科処置を行うこととし、歯根端切除、MTAを逆根充した。

採取した生検試料を調べたところ、炎症性根周囲病変は肉芽腫であり、側枝周辺の主根管の象牙細管および側枝壁の細管に重度の細菌感染が認められたが、象牙細管感染領域の根尖側あるいは歯冠側やそのほかの領域には細菌は検出できなかった。側枝内腔には壊死組織と混じりあったシーラーが存在した。X線的に適切に充填されていたと考えられる根尖部に炎症性組織の内方成長が認められた。再発炎症疾患の原因の可能性として考えられる、歯根破折、コロナルリーケージあるいは異物反応ははっきりしなかった。

この再発疾患についての著者らの見解は次のようになっている。初期疾患は化学・器械的処置により治癒可能なレベルまで細菌は減少して治癒した。しかし、象牙細管内の細菌は影響を受けることなく長年生存し続け、何らかの理由により増殖して周囲生体組織にアクセス可能となり、炎症を引き起こしたと考えられる。その理由ははっきりとはしないが、根充での封鎖が不十分なため、根管内に液体が浸潤したためと思われる。根尖や側枝から逸出したシーラーのみならず、主根管根尖部や側枝のシーラーも溶解あるいは吸収された。根尖部での炎症組織や側枝での壊死組織の存在は根充の封鎖が不十分であったことを示唆している。

シーラーの分解あるいは充填物中の小さな空洞が漏洩の道筋となり、そこから根周囲組織液が細管内に残存している細菌に到達し、栄養を与えることができる。その液体は感染部位に到達して炎症性の細菌産生物で濃厚になるであろう。根尖根管セグメントには細菌は存在しないことから、根管内にある液体が細菌産生物を根尖あるいは側枝に運ぶ役割を果たし、歯周組織に炎症を引き起こすことが可能となる。多分このプロセスは非常に緩慢であり、病変として認められるのに12年を要したということであろう。通常の処置で象牙細管内細菌を除去するのはほとんど不可能であり、長期の良好な予後のためには、細管内殺菌を考慮した抗菌戦略を促進すべきである。

本報告からの重要な教訓に側枝に関することがある。X線的にみて側枝が充填されていても、押し込められた充填物は壊死組織と混じりあっているため良好な充填とはなっておらず、また空洞も存在し、適切な封鎖は期待できない。側枝に残存する壊死組織は細管内細菌の栄養源ともなり得る。いずれにしても、このような分岐の清掃と消毒ができるような方法の開発に努力すべきである。最後に著者らは、長期の良好な治療成績を得るには、根管システムの適切な消毒の達成が重要であると強調している。

この報告を読んでの筆者のコメントである。著者らは殺菌・消毒の重要性を強調しているが、それで十分なのかという疑問である。12年後に再発したのは根充での封鎖が不十分であったためと著者らは考えているが、逆にいえば、封鎖十分であれば再発しなかったということになろう。もしそうであれば、殺菌・消毒よりも根管封鎖の重要性をより強調すべきであろうと思われる。

根管が完璧に封鎖され、細菌への栄養補給が途絶えれば細菌は生き延びようがなく、多少細菌が根管内に残存してもそれほど問題にならないと考えてもよいであろう。79回コラムでは歯冠部の封鎖が完全であればう蝕の進行を止められることを記したが、根管でも同様なことを示唆したいのである。そのコラムの締めくくり部分を転記しておこう。“修復物により完全に歯質が封鎖されて栄養源を断たれると、細菌は死ぬか休眠状態となり、歯の健康へのリスクとはならなくなる。したがって、修復物が口腔環境からう蝕をよく封鎖できていれば、深在性う蝕での感染象牙質をすべて除去する必要はない”。

現在の根管拡大・形成、根管清掃・消毒、充填方法には限界のあることは周知のことであり、そのため抜髄根管、感染根管を問わず、根管のどこかに細菌が必ず潜んでいることは間違いない。そしてその細菌は栄養補給と生体の防御機能の低下をじっと待ち、増殖の機会を狙っているらしい。そうした細菌の潜む根管は時限爆弾を連想させるものであり、その恐怖から早く解放されたいものだと思う。

(2013年1月31日)

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