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2013/10/24

第77回:歯みがき後のうがい ―フッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果を高めるには―

今回は前回の続きのようなものである。う蝕予防に関連して、フッ化物配合歯磨剤(以下、F配合歯磨剤)の効果や歯みがきの仕方については耳にしてきたが、歯みがき後のうがいの仕方についてはあまり聞いたことがないような気がする。歯みがき後のうがいの仕方によって、F配合歯磨剤の効果が影響を受ける可能性があるとされている。しかし、これまでこの件についてまともに議論されたことはないようであるが、患者に推奨するガイドラインを提供すべく、英国、アイルランド、米国、ドイツ、オランダ、スウェーデンの専門家15名が集まって調査研究を行い、そこで合意した見解がBrit Dent J 212巻、7号(2012)に掲載されている。その内容の抜粋と合意した見解を紹介しよう。

歯磨剤に加えて、様々な洗口液も使われているが、それにはフッ化物(Fと略)以外に、クロルヘキシジン、エッセンシャルオイル、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、サンギナリン、ドデシル硫酸ナトリウム、金属イオン(すず、亜鉛、銅)などが添加されており、歯垢を減らし、ミュータンス菌を除去する効果があるとされている。F入り洗口液は、F無添加洗口液にくらべ、う蝕減少に効果があり、またF配合歯磨剤よりも効果的という報告がある。F配合歯磨剤で歯みがき直後に100 ppm F洗口液で洗口しても、歯磨剤の抗う蝕作用に影響することはないが、F無添加の洗口液では影響する可能性がある。F配合歯磨剤の抗う蝕効果を保つには、歯みがき直後を含め常に少なくとも100 ppmのF入り洗口液を用いるのが望ましい。F無添加の洗口液は、F配合歯磨剤の効果に影響を及ぼす可能性があるため、F配合歯磨剤使用とは別の時間に使うのが望ましい。歯みがき後に大量の水で洗口すると、水をわずかあるいは使わない場合にくらべ、う蝕が増えるという報告があり、F配合歯磨剤の恩恵を受けるには過剰な水での洗口は避けるべきであり、少量の水での洗口が好ましい。

歯みがき後の洗口に関する主要な見解は次のとおりとなっている。
・F配合歯磨剤で歯みがき後に水で洗口するとF配合歯磨剤の効果が損なわれる可能性がある
・歯みがき後の洗口に水の代わりにF添加洗口液を使用すると、口腔内のF濃度を保つのに効果がある
・F無添加洗口液は歯みがき前か歯みがきとは別の時間に使うのが望ましい
・F添加洗口液は歯みがき後に使える
・Sjögrenらが発表した、F配合歯磨剤スラリーを使用する方法の推進を支持する
・F配合歯磨剤での歯みがき後にF残留を増やす次の三つの方法はう蝕のコントロールに役立つ: 吐き出すだけで洗口しない、F配合歯磨剤と唾液のスラリーで洗口、F添加洗口液で洗口

この見解の中で示された”F配合歯磨剤スラリーを使用する方法”について説明しておこう。それは、F配合歯磨剤を洗口液として兼用する歯みがき法である。すなわち、「F配合歯磨剤2cmを使用して2分間歯みがきした後、頬、唇、舌を活発に動かして歯磨剤スラリーを約30秒間クチュクチュし、吐き出す。その後は洗口せずに2時間は飲食しない」というものである。1995年発表のイエテボリ大学のSjögren、Birkhed、Arendsの方法では、「歯みがき後に10mLほどの水を口に含んで歯磨剤のスラリーとし、1分間ブクブクしてから吐き出す」となっているが、2010年以後の臨床試験の論文では、Birkhedらは上記のように変更し、”Modified fluoride toothpaste technique”(F配合歯磨剤変法)と呼んでいるようである。また、当該大学のイエテボリ法もあるようであるが、これは上記両方法の中間で、”10mLの水を含んで、30秒間洗口”となっている。Birkhedらによれば、この方法を1日2回2年間成人で試験したところ、対照群にくらべ新しい隣接面う蝕の発生が有意に減少したと2010年に報告している。

フッ化物のう蝕予防メカニズムはおよそ次のように考えられている。Fが歯質に作用すると、結晶性の改善、フルオロアパタイトの生成、脱灰部の再石灰化の促進により、歯質が強化され、耐酸性が向上する。また、歯垢内では細菌の酵素活性を阻害、発育を抑制、酸産生を抑制する。Fは歯垢に結合されるが、細菌の酸産生により歯垢のpHが低下すると歯垢中からFイオンが放出され、歯質の溶解抑制や再石灰化を促進する。口の中のFイオンの濃度が高いと、歯垢中のたんぱく質やカルシウムなどと結合して濃縮貯蔵され、歯垢の周囲が酸性になると、歯垢の中からFイオンが放出される。歯垢は目の敵にされがちであるが、ある意味でFの貯蔵・放出装置という一面もあるといえる。上で紹介した英国歯科雑誌の締めくくりの一部として、すべてのバイオフィルム/歯垢は除去するのではなく、バイオフィルムの弱体化/乱れを起こしてコントロールする必要があるという記載がある。

欧米では一般店頭で販売されているF添加洗口液も、我が国でFの配合が認められているのはペースト状や粉状などの医薬部外品歯磨剤のみで、洗口液や液体歯磨剤などには認められておらず、歯科医師の処方に限られている。F配合歯磨剤の普及が欧米にくらべ20年ほど遅れたように、我が国は歯科でのF利用の後進国である。今回紹介したように、F配合歯磨剤使用後にF添加洗口液で洗口することは、Fのう触予防効果を高めるのに役立つのはほぼ確かである。そうしたことができない我が国の場合、同じような効果が期待できるイエテボリのF配合歯磨剤変法によるのがさし当り最も手っ取り早いであろう。本法のよいところは、歯みがき後に別途F添加洗口液を要せず、費用もかけずに手軽にできることである。ただし、現在市販されているF配合歯磨剤をそのまま利用するには抵抗感がある。低発泡・低香味、少量洗口法が可能、Fの歯面滞留性向上などを謳った歯科医院専用品があり、「歯みがき後、歯磨剤を吐き出し、15mlほどの水で約5秒間1回口をすすぐ」ことになっている。なお、公表されている成分だけからすると、なぜこれが歯科医院専用なのかという疑問がある(ただし、通販だけでなく、生活雑貨を扱う一部のチェーンストアの棚にも並んでおり、入手は可能)。

我が国ではF添加洗口液はしばらくは市販されないとすれば、イエテボリのF配合歯磨剤変法に適したF配合歯磨剤が市販されてもよいのでは、と思っている。さし当りは、患者、とくにう蝕リスクの高い患者には、F配合歯磨剤の使用だけでなく、不快にならない範囲で少量で少数回のうがいをするようアドバイスをすることがあってもよいであろう。できるだけ多くFを口腔内に残し、うがいによる口腔内からのF消失を防ぐことがポイントである。

(2012年6月28)

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