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2013/10/24

第68回:コンポジットレジンのリペア

FDI(国際歯科連盟)がう蝕治療におけるミニマル・インターベンション(Minimal Intervention、最小限の侵襲)の原則を採択して間もなく10年になる。それは、健全歯質を最大限残すよう配慮した修復物の充填と修復物のリペアという二面がある。このコンセプトの浸透は、前者については世界的にかなり進んできたようであるが、後者については、修復物全体の再充填を行う前に、まずはリペアが望ましいとされつつも(第48回参照)、研究も散発的に少し行われてきた程度であった。実際に確実にリペアしようとするとそれはかなり難しいのではないかと思われるが、ごく最近、臨床的にも参考になりそうな、二つの論文が発表されているのでそれを紹介することにした。

Dental Materials 2011年7号に “リペアの共通的方法はあるか?”という論文が掲載されている。この論文では、タイプの異なる5種類のコンポジットレジン(CR)を用い、5-55℃の熱サイクル5000回および室温水中2週間浸漬により老化させたCR硬化物(厚さ5 mm)の表面を8種類の方法で表面処理し、新しいCRを接着させて接着試験を行っている。CRとして、クリアフィル(CF) AP-X (CAP-X)、CFフォトポステリア (CPP)、フォトCFブライト (PCB)、Filtek Supreme XT (FSXT)、HelioMolar (HM)を用い、ダイアモンドバー研削、アルミナサンドブラスト、シリカサンドブラスト、37%リン酸エッチング、3%フッ酸溶液および9.6%フッ酸ジェルでの20秒および120秒処理を行い、シランプライマー (Kerr)塗布、OptiBond FL (Kerr)(Bis-GMA、HEMA、リン酸エステルモノマーなど含有)を塗布・キュアした後、表面処理したCRと同種のCRをシリコーンモールド内で2 mmずつ2回積層・硬化させ、試験体とした。老化前後の試料をそれぞれポジティブ、ネガティブの対照試料とした。

全体的に老化前の強度と比較すると、老化後で80%に低下、表面処理すると、アルミナサンドブラストは99%、9.6%フッ酸120秒は95%の強度を維持したが、そのほかの処理では86〜90% であった。破壊様式を見ると、FSXT、HM、PCBでは界面破壊はわずかであり、老化あるいは追加CRでの凝集破壊が90%以上を占めていたが、CAPXとCPPでは界面あるいは混合破壊がそれぞれ51、84%であった。それぞれのCRについて少し記すと次のようになる。FSXTとHMでは老化前後で強度低下は小さく、またリペア法の影響もほとんどなく、いずれの方法で処理しても差はない。CF系のCRでは、老化後試料強度にくらべ、多くのリペア法でCAPXでは有意に増加、PCBでも増加傾向を示したが、CPPではアルミナサンドブラスト以外は低下した。このような差は、それぞれバリウムガラス、石英、シリカおよびシリカ・レジン複合物というフィラーの違いに由来していると考察している。なお、強度変化や処理の影響が少なかったHMとFSXTのフィラーは、それぞれシリカとジルコニア・シリカクラスター/シリカである。

すべてのCRについてリペア法をくらべると、リン酸エッチング、シリカサンドブラスト、9.6%フッ酸120秒での破壊様式が凝集破壊90%以上で強度も大きかった。これらのうち、フッ酸は口腔内での使用には安全性の問題があり、また、サンドブラストは細かい粒子が室内を汚染して患者や術者に有害であろうという。いずれにしても、結果が多様であったことから、メーカーは自社のCRについて最適のリペア法を使用説明書に記載するのが望ましいが、リペアするCRのメーカー、組成が不明な場合には、取りあえずリン酸エッチング、シラン処理が勧められるとしている。

上記論文は5種類のCRに対して1種類のシラン処理液と接着材のみを用いた結果であったが、もう少し多様な組み合わせでの研究結果が同じ雑誌Dental Materialsの 2011年2号に”CRのリペアの可能性”として報告されている。CR3種類、接着システム4種類を用い、そのすべての組合せ(各CRで12組、合計36組)について接着試験を行っている。60℃水中に1ヶ月浸漬した厚さ3mmの各CR硬化物の表面をカーボランダム研磨紙で研磨、接着処理後、プラスチックモールド内で厚さ3mmのCRを充填・光硬化させ、試験片を作製して引張り接着試験を行った。用いた材料は、CRがDurafill (DF)、Filtek P90 (Silorane)、Filtek Z250および接着システムがEcusit composite repair (ECR)、クリアフィルリペア(CFR)、P90システムアドヒーシブ セルフエッチプライマー(P90SE)、Adper Single Bond2 (SB)である。

水中浸漬後の各CRに対する接着強さの概要は次のとおりである(以下のカッコ内は接着材/リペアに用いたCRの種類)。DFでは18(ECR/P90)〜51 MPa(CFR/P90)、多くは30〜38 MPa。P90では5(P90SE/Z250)〜54 MPa(CFR/Z250)、多くは5〜25 MPa。Z250では17(ECR/P90)〜75 MPa(CFR/P90)、多くは32〜54 MPa。一方、破壊様式は、全体としては、界面破壊が74%で最も多く、もとのCRでの凝集破壊18%、リペアしたCRでの凝集破壊8%となっていたが、CRによりかなりの違いが見られ、P90での界面破壊の多さが際立っていた。P90は、我が国ではおなじみではないが、67回で紹介したように従来のCRとは根本的に異なるものであり、それが結果に影響していると思われる。

接着システムを全体的に比較すると、CFRが多くのCRの組合せに対して最もよく、次いでSB、P90SEであり、ECRは劣っていた。CFRは、リン酸エッチング、シランモノマーを含むプライマー処理後に接着材を塗布するシステムとなっているが、SBではリン酸エッチングは行うがシラン処理はなく、P90SEとECRではそのいずれもなく、CFRとは大きく異なっている。このCFRの結果は、はじめに取り上げた論文で”取りあえずリン酸エッチング、シラン処理が勧められるとしている”ことに通じていると考えられる。

以上紹介した論文からも推測できるように、臨床でのリペアの成績も様々になることが予想される。術者が治療した患者でのリペアであればそれなりの対応はできようが、そうでない場合には元のCRの種類等は必ずしもわかるわけではなく、確実にリペアするのはかなり難しいと想像される。リペアに関する情報を各メーカーが提供することが望まれるが、CRメーカー20社に対して行ったCRのリペアに関するアンケートをまとめた2009年の報告によると、メーカーの65%はリペアについての情報を提供しておらず、35%は自社製品を使うようにとの指針を示しているに過ぎないという。

(2011年9月29日)

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