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2013/10/24

第62回:東日本大震災によせて

3月11日の東北地方太平洋沖大地震、史上まれな大津波がなければと思わずにはいられない大災害である。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災あるいは原発事故に振りまわされている方々に心からのご同情とお見舞い、一日も早い復旧、復興をお祈り申し上げる。

原発事故による電力不足を補うため、東京電力(東電)は一方的に停電を実施している。現在行われている計画停電は、社会全体に多くの混乱を招き、生活、経済、雇用などに深刻な影響を拡大しつつあり、早急な是正が必要である。計画停電とはいいながら、予定の立てにくい、極めて迷惑な運用となっている。さらに大きな問題なのは、停電する地域としない地域があるという偏りがあり、不公平感を生んでいる。今回のような大震災に伴う非常時にあっては、不便は皆で公平に負担すべきである。東電の説明によれば、停電は変電所単位でしか行えないため、公共施設など停電させると影響が多い地域にある変電所を避けると、送電を止められる変電所は限られてしまうといい、技術的に公平性のある停電はできないという。もしそうであるとすれば、まず、できるだけ節電に努め、何としても不公平な停電を回避する努力が必要である。

3月25日午前の政府の電力需給緊急対策本部の会合では、家庭向け対策として、ある大臣からは料金引上げによる電力使用抑制、経産省からは省エネ機器の普及等の支援策やスマートメーター等の活用、節電インセンティブの付与など、さらに広報として、節電に向けた意識の定着、国民への情報提供、国民のライフスタイルの変化の促進(国民運動化) などが出されたとされる。しかし、ここには具体的な停電回避策も節電意欲刺激策もなく、今夏の電力不足には対応できそうもない。

電力の電灯契約(おもに家庭向け)が全体のおよそ1/3を占め、大口契約(おもに企業)を上回るようになっている事情からすると、家庭での節電協力なしには停電回避はむずかしい状況にある。経済界からは総量規制や業界別自主節電計画が提案されているが、家庭向けにはそれらに準ずるような案は今のところ出されていない。資源エネルギー庁の見解によれば、大口契約者に対しては法的に総量規制できても、家庭向けには規制する法令がなく、計画停電を続けざるを得ないという。そうなると、計画停電の回避には、企業での取り組みに準じて、家庭でも”自主節電計画”のようなものが考えられてもいい。

家庭では経済界のように協議してそのような計画を作成することはあり得ない。そこで、ない知恵を絞って筆者なりに考えてみた。まず、東電あるいは経産省からは、家庭で何%の節電をすれば確実に停電を回避できるかの節電目標を示してもらう必要がある。そのうえで、節電に強くインセンティブが働くような仕組みが必要である。それには新たな料金体系の構築が有効ではないかと思う。我が国の電力は、各地域で電力10社により供給されているが、家庭用電気料金は、いずれの会社でも、使用量120kWh以下、120〜300kWh、300kWh以上という3段階での単価を基準に計算されている。そして10社のそれぞれの段階での1kWh当たりの単価は16.1〜21.86(17.87)、20.34〜27.15(22.86)、21.72〜29.04(24.13)円となっており、使用量が増えると単価が上がる仕組みになっているが、会社間でかなりの差がある(カッコ内は東電の単価)。

この3段階単価構造で節電のインセンティブが働くようにするのはむずかしい。そこで、まず、これを120kWh以下、120〜320kWhでの50kWh刻みの4段階、320kWh以上という6段階とする。そして、全国の電力会社の電力料金単価を参考にして、単価をそれぞれの段階で次のように設定する: 17.78、19.66、21.86、23.68、25.55、26.53(円/kWh)(これらはいずれかの電力会社の単価に該当)。これによれば、使用量120〜220kWhの家庭では単価が1〜3.2円下がり現在よりも割安、220kWh以上の家庭では単価が0.8〜2.4円上がり割高となる。これは一つのモデルに過ぎないが、このような形で電力使用量と料金を連動させることは、節電への誘導に有効だろうと思っている。320kWh以上の単価26.53円は24.13円にくらべ高すぎると感じるかもしれない。しかし、沖縄での29.04円にくらべればこの際やむを得ないであろうし、一時的に他電力会社管内に引越したと考えてもらうとよい。

31日昼のニュースによれば、経済界では夏場の電力不足に対処するため、電力使用量を25%削減する行動計画を作成するという。家庭でもそれに準じて25%節電を目標とすることが考えられてもよいだろう。1世帯1ヶ月当たりの全国平均電力消費量は約300kWhであるとされており、その25%削減であれば225kWhとなる。これであれば、上記の筆者の考えたような料金体系を適用すれば、電気料金は下がるという実益があり、家庭での理解と実行が期待できるのではないだろうかと思う。停電という選択の余地のない外部からの強制力によらずに、自主的に計画できる節電のほうが好ましいことは明らかである。家庭での電気利用の内訳は、エアコンが1/4で最大、ついで冷蔵庫と照明が同程度、次がテレビ、これだけで全体の約2/3を占めているという。節電では、冷蔵庫はまず除外するとして、ほかの電気製品では各家庭でかなりの工夫の余地があろう。企業、家庭での節電努力をつくしても停電が避けられない場合には、一部地域の家庭に停電をお願いするしかない。しかし、その際には、停電受難家庭には電気料金割引を行うのが東電のとるべき道であり、現在実施中の計画停電でもそれを即刻採用すべきだと思っている。

我が国の発電は、火力(液化天然ガス、石炭、石油)約60%、原子力約30%、水力8%、その他(太陽光、風力、地熱など)により供給されている。今回の原発事故を契機に、今後原子力発電依存を続けることは極めて困難となろう。しかし、現在主力の火力発電といえども、その燃料のほとんどを海外に依存しており、その供給が途絶える可能性も常にある。温室効果ガス削減とも絡んで、水力発電以外の自給可能な再生可能エネルギーの主力として太陽光発電が推進されつつあるが(2009年から開始された太陽光発電の余剰電力買取制度に基づき、この4月からは太陽光発電促進付加金が全世帯から徴収される)、今のところその発電量はわずかであり、多くを望むのは無理である。当分、エネルギー安全保障の問題を抱え続けざるを得ない状況は変らない。

今回の原発事故、計画停電は、それを前向きに捉えることにより、今後の省エネルギーに向けた生活を考えるよい機会だと筆者は思っている。地球温暖化抑制のための温室効果ガス削減には、家庭での協力なしには目標達成は不可能とされている状況にある。しかし、もし今回、東京電力管内の家庭での”計画節電”が成功すれば、それを全国規模に拡大することにより、温室効果ガス削減にも大きく貢献でき、その結果として目標が達成できるとすれば、世界の先導役としての役割を果たすことができよう。

こういう時期には元気の出る明るい話題が必要である。幸い歯科界にはそれがある。それは、我が国で研究・開発され、世界初の製品化を目指している、新しい歯科用診断技術の光干渉断層画像診断装置(OCT:Optical Coherence Tomography)である。これは、国立長寿医療研究センター病院の角 保徳先生が5年間精力的に手がけて来られたものである。それについては同病院のホームページhttp://www.ncgg.go.jp/hospital/sec22/oct.htmlにかなりよく紹介されている。さらにその最後に示されているリンクの日本歯科医師会雑誌(2008) 60巻12号も見ると詳細がわかるので、ごく簡単な紹介に留めておこう。OCTの特徴をあげると次のようである:X線のような為害性はなく非侵襲、その場で画像が見られる、CTやMRIにくらべ10倍以上の解像度、画像化・数値化が可能で客観性、再現性が高い、シンプルな構造で軽量・小型、CTやMRIにくらべ低価格。全体は、高速波長走査レーザー光源と干渉計、口腔用プローブ、AD ボード、パーソナルコンピューター、表示用ディスプレーから構成される比較的簡単な装置であり、それほど高価にはならないであろうと思われることから、研究、臨床での幅広い活用が期待される。一刻も早い製品化が待たれるとともに、どのような結果、報告が出てくるのか楽しみである。

今回は、筆者としては異例の内容と長さとなった。今はただ、原発事故の早期収束と停電がないことを祈るのみである。

(2011年3月31日)

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