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2013/10/24

第54回:根管充填をめぐる話―日本歯内療法学会から

7月24〜25日東京商工会議所で第31回日本歯内療法学会が開かれた。興味深そうな特別講演その他が並んでいたこともあって出かけてみた。“なぜレジン系シーラーか”というタイトルで実質各1時間、3件の特別講演があった。

まず、レオナルド氏の講演は“根管充填の新しい方法論”。シーラーは、封鎖性だけでなく、生体適合性が重要だという。その観点から、従来使われている各種シーラーについて論評する一方、レジン系シーラーは生体適合性があり、毒性が低く、象牙質接着性もあり、すぐれているとし、その代表として“EndoREZ”(Ultradent)について詳しく紹介した。これは使いやすく、根充材に求められるすべての特性を持っているという。

シュヴァルツェ氏の話は“エポキシレジンシーラーの物理的、生物学的特性”。AH Plus(デンツプライ)の紹介である。エポキシレジンは軽度な重合膨張があるため、封鎖性は高くなり、根管象牙質とガッタパーチャに良く接着することが証明されているという。重合初期にはわずかに細胞毒性を示すが、良好な生体適合性を有しており、封鎖性、生体適合性のすぐれた根充材として推奨できるという。

トロープ氏の演題は“ガッタパーチャに代わる新しい根管充填材”。レジロン(ペントロン、エピファニーポイント)の話である。従来用いられているガッタパーチャ(GP)は根充材として十分なものではない。根管壁とGPとシーラーの間にギャップが生じ、目的を十分に達成することはむずかしい。そこでGPに代わるものとして新しく登場したのがポリエステルをベースとしたレジロンである。エピファニーSEシーラーとともに使用することにより、根管壁、シーラー、根充材の間にギャップが生ずることはなく、全体を一体化できるという。氏が強調したのはレジロンとの接着性であり、根管壁との接着性は必ずしも十分ではないらしいことをスライドは示していた。講演ではレジロン充填後5〜6年経過した根管のX線写真を繰返し示し、変化がないことを強調した。レジロンのベースポリマーはポリカプロラクトンである。これは、生体内で分解する(単純に水で分解する)ポリマーとしてよく知られており、この点に関して疑義を持たれており、やはり分解については気にしているらしいことがうかがえた。

以上の特別講演に関し、筆者のコメントをひとこと述べておこう。まず、EndoREZであるが、親水性、生体適合性、象牙質接着性という特徴を有するということであったが、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)をベースとするシーラーからは、上記のような特徴を理解するのはむずかしい。AH Plusは、演者の話とは別に、販売元の説明によれば、低収縮かつ低漏洩により高い封鎖性が保たれ、自己接着性を有するという。この説明からは“重合膨張”や“根管象牙質との良好な接着”を理解するのはむずかしい。エピファニーSEは4-MET/4-METAを含むセルフエッチタイプのシーラーであるが、基本はコンポジットレジン系モノマーをベースとしており、十分な根管壁との接着性、根尖封鎖性、生体適合性を期待するには無理がある。特別講演はいずれも各メーカーの招聘によるものであり、話は割り引いて聞く必要があった。

一般の口演、ポスター発表からもシーラー関連の話題を少し紹介しよう。酸化マグネシウムを基材とする試作MGOシーラーの細胞培養試験の報告があった。同時に比較したAH Plus、エピファニーSEではそれぞれ細胞増殖抑制、抑制傾向を示したが、試作材料は対照と同様に増殖したという。この試作シーラーの成分は開示されなかったため、残念ながら、コメントしようがない。

現在我が国で使用できるレジン系シーラーは、AH Plus、エピファニーSEとスーパーボンド根充シーラー(SBS)のみである。SBSは、上市されて30年以上になる、象牙質接着では定評のあるMMA-TBBレジン(スーパーボンド、SB)の特性を継承しているが、使いにくさのために利用は伸び悩んでいると聞いている。それを何とか使いこなそうと長年研究、工夫を重ねてきた開業医の発表があった。重合収縮を補償できるよう、メインポイントをシーラー内に浮かせ、アクセサリーポイントも挿入することにより、根尖漏洩が大きく改善されるという。このような工夫をしないと根管に気泡が入り、根尖漏洩防止も必ずしも十分ではないらしいことを考えると、シーラーの操作性の悪さはまだ克服されていないように思えた。

SBS利用のむずかしさは、SBS、AH Plus、デンタリスKEZ、キャナルスの根尖封鎖性を調べた別の報告からも感じられた。すなわち、根尖部から1mmではいずれのシーラーでも色素浸透が見られ、根尖から離れるにつれて色素浸透は減少した。しかし、SBSでは根尖部から5mmでも色素浸透が見られ、4種のシーラーの中で最も根尖封鎖性が劣っていた。SBS以外のシーラーは基本的に根管接着性はなく、SBSは原理的に接着性がすぐれていることを考えると、筆者には意外な結果であった。これは多分SBSを使いこなせていないためではないかと想像している。 SBSに関連した発表として、従来の塩化鉄を含むクエン酸水溶液処理材の代わりとして、アセトン、水、4-META、還元剤から成る新規セルフエッチングプライマー(SBP-40TX)が報告され、従来の処理液と同等の根管封鎖性を示したという。メーカーには、このような前処理ステップの簡略化というマイナー面での取り組みではなく、SBSの操作性改善に向けた努力を強く望みたい。

SBSの生物学的性質について興味ある報告があった。洗浄処理したSBS上でヒト歯根膜細胞を培養して増殖と分化の様子を調べたところ、細胞の増殖および骨関連タンパクであるオステオポンチンとオステオカルシンの遺伝子発現上昇を認めた。こうしたことから、SBSには歯根膜細胞が接着してセメント芽細胞へ分化する可能性が示唆され、根尖孔部のセメント質による閉鎖の可能性が考えられるという。

この報告はSBが良好な組織親和性を有することを示唆する一例と考えられるが、他にも例があることを“破折歯の保存と予防”についてのランチョンセミナーで知った。SBは直接覆髄に使えることはこれまで聞いていたが、歯周にも使えるという話である。ラットの歯肉切除後の歯肉面にSBを直接適用すると、再生してくる上皮はラミニンやインテグリンといったタンパクによってレジンと接着(歯肉上皮とエナメル質表面と同様の接着メカニズム)することを認めた報告があるという。この動物実験の臨床応用例として、セミナーではSBの歯周での創面保護材(歯周パック)が紹介された。痛み、出血などもなく歯周組織は良好に治癒するという。このように、SBはかなり特異な組織親和性を有していると思われるが、それには、TBBをキャタリストとしたMMAレジンであることが大きく係わっていると考えられる。

(付記) 特別講演に関連して、第52回コラムも合わせて読まれることをぜひお勧めしたい。

(2010年7月29日)

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