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2013/10/24

第36回:ファイバーポストについて

2年半ほど前、第8回のコラムでファイバーポスト(FP)のことを取り上げた。FPは太さ約10μmのガラスや石英の繊維をレジン系のマトリックスで束ねて1〜2mmの太さに成形したものであるが、その最大の特徴は、メタルポストにくらべFPは象牙質の弾性率に近いために歯根破折の防止に有効とされていることである。しかし、それは臨床的にどの程度実証されているのだろうかと思っていた。そんなところへ、International Journal of Prosthodontics 21巻4号、2008にFPの臨床研究についてのレビューが載っているのを見つけた。これは、FPに関して世界中で最も精力的に研究を行っているイタリア・シエナ大学のFerrari教授グループがまとめたものであるが、これによると信頼性が高い報告はまだ非常に少ないようである。このレビューに引用されている臨床研究の中から、信頼性が高いと思われる、長期追跡調査およびランダム化比較試験をした3論文の概要を以下に紹介するが、FPでは失敗率は低く、歯根破折は起きにくく、メタルポストのように抜歯に至ることはほとんどないことが示唆されている。

カーボンおよび石英のFP1,304本について1〜6年(平均30月)にわたり追跡調査したところ、失敗率は3.2%(41例)であり、その失敗の内訳はポストの脱離61%、歯内治療の失敗39%であった。ポストの脱離は歯冠部残存象牙質が2mm以下の場合に起きたが、すべてポストの再合着で修復することができた。さらに継続して985本のポストについて7〜11年(平均90月)にわたり調査したところ、失敗率8%(79例)、その失敗の内訳は歯内治療の失敗49%、ポストの離脱27%、クラウンの緩み21%、歯根破折とポスト破折がそれぞれ1例であった。

最も信頼性が高いとされるランダム化比較試験の報告はまだ2例しかない。カーボンFPと鋳造メタルポスト各100本について4年間調べた報告では、FPでの成功率は95%、失敗は歯内治療の失敗(2%)であった。メタルポストでの成功率は84%、失敗率では9%が歯根破折、3%が歯内治療の失敗、2%がポストの脱離であり、歯根破折歯は修復不可能であった。ガラスFPとチタン製スクリューポスト各50本(ずっと追跡できたのはそれぞれ46と45本)について12〜29月(平均14月)調べた報告では、FPの成功率93.5%、失敗は3例でポスト/コア/クラウン全体の脱離・再合着、歯内治療失敗、クラウンひび割れ、各1例である。チタンポストの成功率75.6%、失敗は11例で7例は抜歯(歯根破折4、穿孔2、ポスト破折1)、そのほかは歯内治療失敗、ポスト脱離・再合着、クラウン再合着、ポスト/コア/クラウンゆるみ・取替え、各1例である。

FPの有用性は歯冠部の破壊が進んだ場合にとくに顕著となる。残存歯冠壁が1〜4壁の根管治療歯4群および残存歯冠壁がない場合はフェルール効果があるとされる高径2mm以上とそれ以下の2群の合計6群、各群20歯について石英FPの有無がどのような影響を及ぼすかを2年間にわたり調べた報告がある(Journal of Dental Research 86巻8号、2007)。全体の成功率はFP有りで92.5%、無しで70%となっている。FPがあると歯根破折や支台部の失敗はなく、失敗の9例はすべてポストの脱離であり、それは残存壁数が減ると起きやすく、1壁で1例、残存壁なしでフェルール効果の有無にかかわらずそれぞれ4例で脱離した。一方、FP無しでの失敗は、歯根破折9例、歯冠のずれ27例であり、歯冠部破壊の程度が進むほどこれらの失敗は増加した。残存壁数4の場合にはFPの有無にかかわらず全例2年間生存した。ポストが脱離した9例は再合着で修復できたが、FP無しで歯根破折したうち8例は抜歯となった。

上の報告によればFPの失敗ではポストの脱落が多い。その原因として象牙質とレジンセメント界面での脱離が多いとされているが、FPとレジン界面の問題もあるとされ、FPへの接着強さを改良するための表面処理についてのレビューもある(Operative Dentistry 33巻3号、2008)。シラン処理、接着材・プライマー処理、サンドブラスト、シリカコーティング、フッ化水素酸処理、過酸化水素処理およびそれらの組み合わせなど、かなり多くの試みがある。なお、ポストの脱落に関し、デュアルキュア型ではポスト/レジンセメント界面、化学重合型では象牙質/セメント界面での破壊が多いという接着試験の報告もあることを補足しておこう。

最近の多くのFPは光透過性であることから、光重合型あるいはデュアルキュア型の接着システム、レジンが使用されているが、根管内の深い部位で重合が進みにくくなり、レジンの硬さや接着強さが低下するという報告が多い。FPの光透過性はその材質、形状等により当然異なっているが、市販されている14種のFPについて、歯冠部、中間部、根尖部、根尖部先端面での光の強さを調べた研究が最近報告されている(Journal of Dental Research 87巻12号、2008)。刻み目つきガラスFP、シリカ/ジルコニアFP、カーボンFPの3種はまったく光透過しなかった。そのほかのFPの光透過性は、歯冠部から根尖部になると低下し、根尖部先端面で上昇した。タイプの異なる6種のFPについて光透過の様子を比較したものを図に示した。歯冠部にくらべて中間部、根尖部での光の強さはかなり低下している。なお、図示しなかったが、ポスト先端面での光の強さは、4,000カウント以上のものが3種、800〜2,300カウントのものが5種あり、それらでは歯冠部での強さを凌いで先端面での光が最も強くなっている。以上のことから、歯冠部から離れるにしたがってポスト周辺には光が届きにくくなるため、レジンの硬化が不十分になることが予想される。したがって、FPの強度やデザインのみならず、光学的な性質も考慮してFPを選択するとともに、光の強さは先端面で最も強く、歯冠部から根尖部へいくにつれて弱くなるという特性も理解して利用する必要があろう。なお、このような部位による影響が現れることおよびポスト/セメント界面で剥離しやすいのは光重合システムのためであり、これらのことは化学重合システムでは起こりにくいと考えられる。したがって、象牙質との接着性にすぐれた化学重合型レジンであれば、このほうが確実でリスクが低いと筆者は思っている。


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(2009年1月25日)

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