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2013/10/24

第34回:日本デンタルショー2008から

11月14〜16日パシフィコ横浜で開かれた第21回日本歯科医学会総会の併催行事である日本デンタルショー2008をのぞいてみた。一巡りして見たなかから、材料関係に絞って筆者の感想、推測なども交えて少し紹介する。

材料関係で最も目立ったキャンペーンが行われていたのはマルチボンドII(トクヤマ)である。1液型セルフエッチングプライマーを利用するPMMA系レジンセメントである。従来品マルチボンドにくらべ、プライマーは2液混合型から1液型になるとともにセメントの粉液成分も大幅に変更されている。プライマー成分はアセトン、水、リン酸モノマー、UDMA、触媒などである。プライマーでは、リン酸系モノマーは以前と同じと思われるが(リン酸とHEMAの反応物?)、ボレート触媒は除かれたためプライマー自体での硬化性は失われている(酸性モノマーにボレート触媒が加わると硬化するため1液型にはできない)。ボレート触媒の代わりに“触媒”が新たに添加されているが、これはボレート触媒/酸性モノマーによるモノマーの重合・硬化をさらに促進する物質であろう(バナジウム化合物?)。セメントの液成分はMMA、UDMA、HEMA、ボレート触媒、MTU-6(貴金属接着用のイオウを含むモノマー)などであり、粉成分はPMMA、助触媒などとなっている。ボレート触媒を活性化するには酸性物質が必要であることから、助触媒は酸性物質と考えるのが自然である(スルホン酸基を含むポリマー?)。粉成分のポリマーは単にPMMAと記載されているが、従来品とは少し異なっていると思われる。操作余裕時間がやや短く、硬化時間がやや長くなっていること、および硬化物の荷重-変位曲線の変化(靭性の向上)などからすると、ポリマー粉末はエチルメタクリレート(EMA)成分も含むアクリル粉末ではないかと思う。この粉末により筆積みはしやすくなるものの、余剰セメントの除去はしにくくなるような気がする。新製品についての雑誌のレポートによると、プライマーを塗り残すとその部分の接着性は低下するという。これは、プライマー中の触媒が働かないと接着界面でのセメントの硬化が不十分になるためらしい。

新しいレジンセメントとしては、米国で先行発売されていたマックスセムエリート(Kerr)が我が国でも発売となった。これは、あまり評判のよくなかったマックスセムの後継品であるが、成分的にはかなり変わっている。(これについては、第31回コラムで取り上げたので詳しいことはそれをご参照いただきたい)。

新発売のボンディング材にアドパー イージーボンド セルフエッチアドヒーシブ(3M ESPE)がある。この成分は:Bis-GMA、HEMA、エタノール、水、6-メタクリロイルヘキシルリン酸エステル(6-MHP)混合物、シリカフィラー(7 nm)、ヘキサンジオールジメタクリレート、アクリル酸/イタコン酸共重合体(ビトレマーなど3Mのグラスアイオノマー系セメントのポリマー成分)、ジメチルアミノエチルメタクリレート、カンファーキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(最後の3物質は光重合触媒系)。従来品の2液型から1液型となったが、最も大きな変化は、リン酸エステル系モノマーがビス(2-メタクリロイルオキシエチル)リン酸エステルから6-MHP混合物になった点である。6-MHPのようにメチレン基数(炭素数)6の酸性モノマーとしては、リン酸系モノマー類似のホスホン酸系モノマー6-MHPA(6-メタクリロイルオキシヘキシルホスホノアセテート)がこれまでにある(松風のボンディング材)。

オールインワンアドヒーシブでほかに目にとまったのは、新製品とはいえないが、ビューティボンド(松風)である。これは、フルオロボンド シェイクワンの成分からHEMAとS-PRGフィラーを除いてTEGDAを加えたようなもので、アセトン、水、Bis-GMA、カルボン酸モノマー(4-AET?)、TEGDMA、ホスホン酸系モノマー(6-MHPA)などから成り、HEMAを含まない点が強調されていた。2ステップ接着システムのフルオロボンドII(FBII)よりは接着強さはやや劣っているようである。FBIIではアセトン、HEMAは含まずと謳われていたが、ビューティボンドではアセトンを採用する一方で、松風の特徴であるS-PRGフィラーを無くしてフッ素徐放性は失われた。こうしてみると、松風のこれまでの特徴や接着強さをやや犠牲にして、1ステップという使いやすさだけが残ったという感がある。溶媒がFBIIのエタノールからアセトンに変更されたわけであるが、3M ESPEのイージーボンドではアセトンにくらべエタノールの優位性が強調されている。ボンディング材での溶媒問題はまだ決着がついていないようである。

ナノハイブリッドフロアブルレジンと銘うったMIフロー(ジーシー)が新製品として並んでいた。これは、平均粒径700 nmのストロンチウムガラスおよび16 nmのシリカフィラーを用いているところに特徴があり、つや出しが簡単、耐摩耗性がよく、長期間面の滑沢さが維持できるとされている。従来のユニフィルフローシリーズのフィラーはすべてフルオロアルミノシリケートガラスであったが、このフィラーについて筆者はやや疑問を呈したことがあり、やはり退場する運命にあったようである。フィラーの変更によりフッ素徐放性は失われた。

薬剤で目にとまったものが二つある。一つは硫酸鉄を成分とする滲出液抑制材(歯肉での滲出液抑制)のアストリンジェントとビスコスタット(液とジェル,ULTRADENT)である。硫酸鉄はずっと以前から我が国でも認可されていたそうであるが、あまり知られていないとのことであった。硫酸鉄のことは第14回コラムで生活歯髄切断処置においてホルムクレゾール(FC)と同等の良好な成績を示すという論文を紹介したが、我が国でも断髄処置への利用も試みられてよいのではないかと感じた。もう一つは、昨年秋に発売されたグルタルアルデヒド/HEMA水溶液の知覚過敏抑制材・デセンシー(日本歯科薬品)である。これは以前から販売されているグルーマ ディセンシタイザー(Heraeus Kulzer)の類似品であり、どうして今さらこのようなものが・・・という感は否めなかった。グルタルアルデヒドであれば、このような類似品ではなく、生活断髄や根管貼薬用にFCの代替品としての新製品を期待したいものである。

終わりに、材料ではないがLED照射器のことを一言つけ加えておこう。LED光照射器のハイパワー化がさらに進んで2000 mW/cm2以上のものが登場し、3秒で重合可能、LEDでプラズマ照射器なみの高速重合を実現、などという文句が並んでいた。

(2008年11月25日)

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