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2013/10/24

第29回:日本歯科保存学会春季学術大会講演抄録集を見て

6月5〜6日に新潟市で開催された標記集会の講演抄録集に目をとおしてみた。その中から、保存修復関連の発表について少し紹介することにする。

ミニマル・インターベンションに基づくう蝕治療では、健全な歯質を最大限残し、う蝕で影響を受けた歯質を適切にできるだけ削除することが要点となるが、それを実現するための方法がこれまでいろいろと提案されており、今回の発表でも四つの方法についての報告があった。色素を用いたう蝕検知液を利用してバーで切削する方法について、色彩学的および細菌学的手法によりう蝕除去の客観性が検討されたが、現在市販されている2種のう蝕検知液では、ともに染色状態の判定は客観性に乏しいという。もう少し染色法を改良しようという観点から、半導体レーザーの吸収特異性に注目した報告があった。いろいろな色素について調べたところ、緑色のう蝕検知液を用いるとレーザーによるう蝕の選択的除去ができそうだという。以前からのアイディアとして粉末噴射法があり、これまではおもにアルミナ粉末が取り上げられていたが、新しい粉末として亜硫酸ナトリウム粉末が検討された。この粉末を用いると、健全エナメル質はほとんど研削せず、脱灰エナメル質および脱灰象牙質の選択的除去が可能ではないかという。以上のような物理的除去法のほかに、かなり以前からの化学的除去法としてのCarisolv(次亜塩素酸ナトリウムと3種のアミノ酸から成る)があり、その除去効果が検討されたが、まだ満足できるものではなく、さらに改良が必要であるとされた。いずれにしても、う蝕で影響を受けた歯質の適切な除去方法について、今後も様々な研究が必要なようである。このような研究と平行して、第23回コラムでも触れたことであるが、極力歯質を削らずにう蝕細菌までも封じ込めて修復しようという、シールド・レストレーションの可能性もぜひ検討してほしいと思っている。

ワンボトル・オールインワン接着システムについて、歯頸部修復に及ぼす複合ストレス(熱サイクルと繰り返し荷重の負荷)の影響が検討された。市販の3種のシステムともにツーボトル・セルフエッチングプライマーシステムにくらべ、エナメル質を窩縁とする歯頂側での封鎖性が劣化したが、象牙質を窩縁とする歯肉側では差がなかったという。これまで指摘されてきているように、このシステムはエナメル質についてはまだ改良の余地が残されているように思われる。上記報告で検討されたワンボトル・オールインワン接着システム2種について、歯頸部欠損症例の12、18ヶ月までの短期臨床観察結果(患者数はそれぞれ39名と30名)が報告されているが、問題となるような臨床的所見はまったく観察されなかったという。12ヶ月までの観察症例はすべて象牙質窩洞(18ヶ月のほうの症例の窩洞の種類は記載なく、不明)であり、上記 in vitro 試験結果からもこの臨床観察結果は一応納得できそうである。

7種の光重合コンポジットレジン(CR)の体積重合収縮率の光照射直後および1〜20分後の変化が検討された。重合収縮率は40秒間の光照射直後で1.5〜2.5%、20分後2.3〜3.3%、また照射直後から20分後までの重合収縮率の増加は0.7〜1.0%というように7種のCR間で差が認められた。なお、いずれのCRでも3分以後の収縮率の変化は小さかった。ワンボトル・セルフエッチングプライマーを使用した9種のCRの歯質接着強さの時間的変化を調べた報告によると、エナメル質では20秒間の光照射直後で8〜15MPa、1時間後13〜18MPa、1日後14〜22MPa、象牙質では光照射直後後で8〜13MPa、1時間後11〜18MPa、1日後11〜23MPaとなっており、接着強さは短時間のうちにかなり増加した。この実験では、平坦な歯質面の上にテフロン型を置きそこへCRを充填しているため、重合収縮が起きてもレジンはテフロン型から剥離し、重合収縮の影響は歯質界面には現れにくい設定となっている。上記重合収縮の報告からも明らかなように、光照射中止後も重合が進むため、レジン強度が上がって全体として接着強さが増加したものと考えられる。

重合収縮の影響は、接着強さの測定よりも収縮により発生するギャップを測定するほうがわかりやすい。8種のCRを象牙質窩洞に充填し、40秒間の光照射の10分後に試料を作製して窩縁でのギャップ幅を測定し、窩縁適合性を評価した報告によると、6種ではまったくギャップが形成されなかったが、2種では30%、100%ギャップ形成が認められたという。このギャップ形成はフィラーに問題があるとしているが、筆者には実験方法に問題があるように思われ、この考えには同意しがたい。

CR充填でのオールインワン接着システムに見られるように、材料面から治療の簡便化が進んでいるが、レジンセメントでも同じような傾向になりつつある。すなわち、これまでのようにプライマーなどで前処理することなく、セメント自体がエッチング機能を有するセルフアドヒーシブタイプであり、これは従来のグラスアイオノマーセメントと類似している。最近発売されたこのようなタイプの新しいレジンセメントについての報告もあったが、従来のプライマー利用のセメントにくらべ、エナメル質や象牙質への接着強さは半分程度となっている。このことは、簡便性優先で無理をしてこのようなシステムにしていることから、やはりやむを得ないことではあろう。しかし、臨床の現場を知らない者の言といわれるであろうが、使用目的が同じであれば、新製品は少なくとも従来品と同等以上のものであるべきだ、というのが筆者の考えである。以上はCR系セメントの話であるが、新規MMA系レジンセメントについての報告もあった。このほうは、20年以上にわたり臨床実績のあるMMA-TBB系セメントに対抗しようという、セルフエッチングプライマーを用いるレジンセメントである。2件の報告があり、歯質への接着性は同等という結論となっている。

(2008年6月25日)

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