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2013/10/24

第25回:インプラントの普及とブリッジ

今から40年ほど前、現在の歯科インプラントの流れを築いたブローネマルクらの論文を読み、いずれは日本でもこのようなすごいものが歯科治療に取り入れられるようになるのかな、と思ったものであるが、もちろんそれは現実のものとなっている。欧米にくらべ普及が遅れていた我が国でも、近年急激にインプラントが一般化しつつある。その様子は、下図のグラフからうかがい知ることができる。インプラント出荷の数量的な推移では1999年前後で統計のとり方が変わっているためわかりにくいところもあるが、出荷金額の推移も合わせ考えると、1995年頃からの一次ブーム、2000年頃からの二次ブームというような形で、急激に普及が進んだように見える。

このようにインプラントの一般化が進みつつあるようであるが、インプラント治療はまだ高価であり、本当にそれだけの価値があるのか、どれだけ長持ちするのかなどということが気にもなる。このことと関連して、興味深い論文がJournal of Prosthetic Dentistry 98巻285-311頁(2007)に発表されている。これは、トラビネジャド教授をはじめとして、米国・ロマリンダ大学のメンバーを中心とする13名の共著論文であり、インプラント治療、ブリッジ治療、根管治療の臨床成績に関する系統的な比較調査研究の報告である。1966年1月〜2006年9月に発表された英語論文を対象に三つの医学系データベースでまず広く検索を行い、次いで論文題名と要旨からインプラント327、ブリッジ229、根管治療347の論文を選択し、さらに対象が成人、観察期間2年以上、25症例以上などの条件で絞込み、最終的にインプラント46、ブリッジ31、根管治療24の論文が選ばれ、分析された。

各論文は臨床研究論文として質的にかなり差があるため、質の目安として論文の質スコアを出している。臨床試験のタイプにより4〜2点、患者数、術者の経験、術者と評価者の同異、統計など13項目に各1点、最高で17点となるようなシステムをつくっている。各治療法でのこのスコア(以下に平均値とカッコ内に範囲を示す)は、インプラント7(1〜10)、ブリッジ7(2〜12)、根管治療10(4〜13)であり、根管治療での臨床研究の質が比較的よい結果となっている。この調査研究は、このスコアの例からも一端をうかがい知ることができようが、全体としていろいろな点でかなり精緻に計画、実施されている。

結果は、観察期間を2−4、4−6、6年以上に3区分し、各論文について、論文の質スコア・発表年、症例数、成功数あるいは生存数、成功率あるいは生存率、さらに観察期間区分ごとの単純平均と加重平均が表にまとめられている。それをさらに筆者がまとめたものが表1である。 全体として、観察期間が変わっても治療成績はあまり変化しないような結果となっている。よい治療が施されていれば、それは長持ちするということであろうか。6年以上の加重平均生存率は、インプラントと根管治療では97%で同じであったが、ブリッジでは82%と低かった。根管治療のこの数字は、一つの論文の症例数が146万例以上でその生存率が97%であることが影響しており、単純平均では92%となっている。一方、6年以上の成功率では、インプラントの95%は、根管治療の84%やブリッジの80%より高かった。ただし、成功率のデータの価値は、成功の判定・評価方法がX線検査、臨床所見、アンケートおよびそれらの組み合わせなど様々なやり方で定義されているため、比較が難しく、限定的にならざるを得ないという。


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結局のところ、長期生存率のデータを考慮すると、歯髄あるいは根管周囲の病変があり歯周が健全な歯については根管治療、抜歯が想定される場合にはインプラント治療がそれぞれ優先的に考えられようとしている。生存率、成功率を合わせ考えると、インプラント治療が最もすぐれ、ブリッジ治療は最も劣り、根管治療はその中間という位置づけになるであろうが、6年以上の成績についてさらに詳しく比較してみる必要があるように思われる。

経済的側面についても記載されているので、参考までに紹介しておこう。インプラント治療の初期費用は、抜歯、インプラント、支台、歯冠を含み2,850ドルで、一般歯科医、口腔外科医、歯周専門医であまり差はない。ブリッジでは、抜歯後貴金属/セラミックスを用いた3ユニットの修復で、一般歯科医2,300ドル、補綴専門医3,300ドルである。根管治療では、一般歯科医が前歯を根管治療してコンポジットレジン修復すると743ドル(最も安い場合)、歯内専門医が臼歯を根管治療して貴金属/セラミックス冠で修復すると1,765ドル(最も高い場合)になるという。初期費用から見ると、根管治療が最も安く、インプラントとブリッジではあまり差はなくなっている。

欠損歯の治療では、インプラントが本格的に歯科治療に導入されてまだ年月が浅いとはいえ、ブリッジに比べインプラントの優位性がかなりはっきりしつつあり、ブリッジの分はよくはなさそうであるが、ブリッジは今後どうなるであろうか?上に記した米国での場合とは違い、我が国ではインプラントとブリッジの治療費の差が大きいことから、当分ブリッジの優位が続くことになるであろうと予想される。しかし、費用のことは別にしても、ブリッジがさらに生き残るためには、やや低目となっている成功率や生存率の原因を明らかにしてその対策を講じたり、ブリッジ治療の弱点を少しでも減らしたりする努力が必要であろう。インプラントとは異なり、ブリッジは支台歯の助け・犠牲の上に成り立っており、支台歯の寿命をできるだけ延ばす努力も必要である。ミニマル・インターベンションの観点に立ち、歯質削除量を減らす、あるいは削除しないような方向も工夫されるべきであろう。接着材を利用してのこうした方向での試みについて、第23回コラムでも少し触れたところである。

(2008年2月25日)

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