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2013/10/24

第24回:アマルガムは何で代替されたか

第21回コラム「アマルガムはどうなっているか」の続きである。その中で、米国でのアマルガム(Am)修復は年々減少する傾向が続いているが、その減少したAmの代替をしたのはおもにコンポジットレジン(CR)であったと推定されていることを紹介した。一方,我が国ではAm修復は過去において急激に減少したが、その減少したAmは何で代替されたのだろうか、という疑問が残っていた。そこで、筆者なりに少し調べた結果がこれである。

利用した資料は、薬事工業生産動態統計年報(厚生労働省編)(1984〜2005年が公表されている)に載っている歯科材料の国内出荷量である。出荷量の年次推移は臨床での使用量の推移を大まかに反映しているとみなしてよいであろう。図1は、Amの原料である水銀、CR、グラスアイオノマーセメント(充填用、GICと略)あるいはグラスポリアルケノエートセメント(年報では1999年からGICはこの名称に変更となっている)の出荷量の年次推移である。水銀は1984〜1995年の間に5.1トンから1トンまで急激に減少し、その後はゆるやかな減少傾向となって2004年で314 kgとなっている(これ以後のデータは公表されていない)。水銀出荷量が急減した10年ほどの間(水銀急減期と呼ぶことにする)に、GICは2.8トンから25.1トンに急増したが、CRでの増加はゆるやかであった。なお、GICやCR以外の分類としての“その他充填材”が水銀急減期に50〜80トンが出荷されていたが、経年的な増加傾向はほとんどなかった。したがって、充填修復に関するかぎり、Amに代わってGICがもっぱら用いられ、CRの利用は比較的少なかった様子がうかがえる。

鋳造歯冠修復の様子をみるため、金銀パラジウム(金パラと略)と銀合金(1種と2種)の出荷量の年次推移を図2に示す。水銀急減期に、銀合金は20トンから34トン、金パラは48.5トンから106.5トンと大きく増加している。このことから、Amの代わりとして、金パラと銀合金で修復されたことがうかがえる。鋳造修復の場合には合着材の面からも見たほうがよいであろう。合着材出荷量の年次推移については第23回「歯科におけるミニマル・インターベンション」を参照していただきたいが、水銀急減期にかなりの増加傾向を示したのはGIC(合着用)のみであり、リン酸亜鉛セメントはかなりの減少傾向となっている。このことは、増加した鋳造物はおもにGICで合着されていたことを示しているように思われる。なお、図には示さなかったが、水銀急減期における鋳造歯冠用ニッケルクロム合金の出荷量は、一時的に増加したことはあっても、全体としては減少傾向を示し、銀合金や金パラのような増加傾向にはなかった。

以上はAmの代替についての話であるが、ついでに、図1、2の水銀急減期以後のことについて少し記しておきたい。1995年以降の出荷量の推移の様子は材料により様々であるが、大まかにいえば、いずれの材料とも減少傾向にあるということである。なぜこのようなことになったのだろうか?その理由は、図3(文部科学省学校保健統計調査をもとに作成)の児童、生徒のう蝕罹患率(う蝕のある人の割合)の年次推移から推測できそうである。1996〜1997年頃からう蝕罹患率がかなり低下してきており、う蝕治療も当然減少し、そのためそれに係わる歯科材料の出荷も減少したということであろう。ただし、小学校では2002年頃からう蝕罹患率の低下が鈍るような傾向が現れており、こうしたことがGICで2002年から再びかなりの増加に転じていることと無関係ではないように筆者には思える。

CRでは、GICにくらべ、1997〜1999年でかなりの減少となっているが、これは、この時期に、CRに不純物としてごく微量含まれる、環境ホルモンとされるビスフェノールAが口腔内に溶け出すという指摘がなされ、社会的にかなり問題となった影響が現れているように思われる。

図2で目につくのは、金パラの1996年の281トンという突出した多さである。はじめは統計の何らかの間違いではないかと思った。ところが、1995〜1996年頃はリン酸亜鉛セメントの出荷量も急増しており(第23回コラムの図参照)、年次がややずれているとはいえ、偶然の間違いとも思えないのである。前回もコラムを書いていた時、リン酸亜鉛セメントの出荷がこの時期になぜ急に増えたのか不思議に思っていた。1996年頃はパラジウムの価格が最も安い時期に当っており、金パラとリン酸亜鉛セメントでの修復が非常に多くなったのではないかと推測している。

我が国でのAm修復の代替は、おもにGIC充填や金パラと銀合金での鋳造修復で行われたと推定される。これは、米国では鋳造修復は少なく、おもにCR修復であったという推定とはかなり異なっている。こうした日米の差には、鋳造修復は、自費診療の米国では高価であるが、我が国では公的保険診療にも一応含まれているという事情が影響しているように思われる。このAm代替のことをはじめとして、筆者の勝手な推測をいくつか記したが、実情はどうであったのか、知りたいものである。

(2008年1月25日)

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