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2013/10/24

第17回:日本歯科保存学会に出席して

6月7・8日、大宮ソニックシティ(埼玉)で開かれた標記の学会に出席した。そこで、特別講演とおもに修復領域の発表について書くことにする。特別講演は、ニューヨーク大学・トンプソン教授の「歯科用セラミックス: むずかしい環境下における複雑な問題をかかえた複雑な材料」であった。トンプソン教授といえばメリーランド大学時代の接着ブリッジで有名であるが、講演はおもにアルミナやジルコニアの破折、疲労に関する話であった。ジルコニアにはサンドブラストは好ましくない、セラミックスのベニアではセメント層が厚いと破折しやすくなる、アルミナやジルコニア のコアにセラミックスベニアではセメントの吸水膨張で破折しやすくなる、セラミックスのコアとベニアでは両者の熱膨張係数の差が亀裂の発生に影響する、セラミックスコアの熱伝導性はポーセレンベニアの破折に影響する、などの内容であった。

一つだけ特に印象に残ったことがある。セラミックスの接着にはアロイプライマーが有効であることを見つけ、そのメカニズムを今後検討するという話。セラミックプライマーではなく、金属用プライマーという点に注目であるが、これは当然予期される効果であるように筆者には思える。接着ブリッジを始めた研究者が今頃このようなことをしているのかと一瞬奇妙に思ったことである。アロイプライマー中に含まれるリン酸系モノマー(MDP)は、チタンなどの卑金属の接着に有効であることから、アルミナやジルコニアのような金属酸化物系のセラミックスに対して効果を示しても不思議ではない。MDPのみならず、歯質のボンディング材中に添加されている接着性モノマーの多くにも類似の効果が期待できよう。

見聞した発表のなかで最も印象に残ったのは、長崎大学・久保至誠准教授のコンポジットレジン(CR)修復の再治療原因を調べた報告である。これは、昨年5月の本学会で発表した「コンポジットレジン修復ならびに鋳造修復の耐用年数」の続報である。修復物の生存率の比較から、両修復の間で耐用年数に差はなく、修復物の約60%が20年後も機能していると推計された、というのが昨年の報告であった。調査した125名の患者の約6割、修復物1171例の約2割で再治療が行われていたが、その再治療の原因と再治療に至るまでの時間について報告された。再治療の原因としては、う蝕(辺縁着色も含む)が最も多く、次いで脱落がかなり多く、あとは破折、摩耗の順に少なくなり、そのほかは歯内治療、補綴的要求などであった。再治療原因と窩洞の関連を見ると、う蝕は3級、脱落と摩耗は5級、破折は1級、2級窩洞に多かった。再治療に至るまでの時間を中央値と範囲(カッコ内)で見ると、う蝕6.5(1.3−20.5)年、脱落4.3(0.6−15.6)年、破折2.5(0.5−20.0)年となっている。なお、再治療例のほぼ半数は14名の患者に集中していたそうであるが、これらの再治療リスクグループを除外して解析するとどのような結果になるであろうか?

う蝕と脱落で再治療の半数以上を占めていたが、それには接着の問題もかなり関与しているのではないかと筆者は想像している。本調査には接着技術がまだ発展途上にあったときの症例も多く含まれており、近年の接着システムでは状況が変わる可能性はある。しかし、接着技術はかなり進歩したとはいえ、レジンの宿命である重合収縮をコントロールする技術はまだ不十分であり、二次う蝕の発生や脱落が起きても不思議ではないと思っている。

重合収縮に関連する発表には次のようなものがあった。7社の修復用CRとフロアブルレジンの重合収縮を測定したところ、前者で0.54〜1.72%(平均1.14%)、後者で1.16〜3.52%(平均2.08%)、同一メーカーではフロアブルレジンのほうが1.5〜2.1倍収縮が大きくなっていた。さらに別の報告では、9社の接着材とCRに関し、エナメル質窩洞辺縁部のギャップを測定したところ、5製品では各10試料中すべてに、ほかの4製品でも7〜8割にギャップが認められたという。

フロアブルレジンは窩洞の修復にも使われているようであるが、上に述べたように収縮が大きい。これを窩洞に充填すると、小さな浅い窩洞では問題は少ないようであるが、深い窩洞では窩縁付近のエナメル質に亀裂、窩底にギャップができやすいとの報告があった。なお、修復用CRでも窩縁での亀裂はある程度生じていた。これは、重合収縮を伴うレジンと光重合の宿命といえる。フロアブルレジンといえば、フローが起きて応力が緩和され、亀裂ができにくいかもしれないという印象を与えかねないのであるが、そういうことはないのである。

今回発表された159演題のうち約1割が1ステップ接着システムに関するものであった。これらの発表を大まかにまとめると、エナメル質と象牙質への接着強さは2ステップシステムと有意差はなく、接着界面のSEM観察では良好な接着状態が認められた、ということになろう。しかし、接着強さは統計的には有意差はないものの、数値的には2ステップの方が大きい傾向を示した報告が多かったようである。一方、微小漏洩、窩壁適合性、辺縁封鎖性を調べた報告によると、1ステップは2ステップにくらべやや劣った結果となっている。

1ステップは、2ステップとくらべ遜色ないという結論が多かったようであるが、筆者は1ステップには一抹の不安を感じたとしておこう。接着強度試験における破断面の様子からすると、界面破壊が多いらしいエナメル質の接着に問題があるように思われた。接着強さと接着界面の縦断面のSEM観察による評価が多いが、久保報告で多いとされた、う蝕や脱落を予測するにはそれだけでは不十分である。接着試験にしても、試験後の破断面の詳しい観察も必要であるが、それにつき言及なしのことが多い。通常の接着試験で得られるデータには収縮の影響はほとんど反映されないので、臨床的には、接着強さよりも、エナメル質窩縁や象牙質の窩壁・窩底でのギャップ形成、漏洩、亀裂についての情報がより重要であると思っている。

最後に、今後の保存学会に対して、久保報告のような調査研究を全国の複数施設で行い、その結果をシンポジウムとして企画してほしいという希望を述べておきたいと思う。

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