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2016/07/12

第121回:セラミックインレー/アンレーの寿命

106回で臼歯のCR直接修復物の寿命について記したが、今回はセラミックインレー/アンレーの寿命に関する論文2編を最近の雑誌から紹介する。

J Dent Res6月号の電子版(印刷中論文)に「レジンおよびセラミックインレー、アンレー、オーバーレーの生存率のシステマティックレビューとメタ分析」の論文が掲載されている。1983年~2014年の論文を検索した。開始年を1983年としたのは、セラミックの接着にフッ化水素酸およびシランによる前処理が初めて導入されたことに基づいている。PubMedなどのデータベースから1,389論文を抽出し、患者脱落率30%以下、追跡期間5年以上などの選定基準にしたがって絞り込み、最終的に1997年~2013年の14論文を選定、分析した。

レジン群では、レジンインレー、アンレー、オーバーレーに関する選定基準を満たす論文はなかった。セラミック群では、ポーセレン6論文、ガラスセラミック5論文であったが、メタ回帰分析では、セラミックの種類と5年および10年生存率との関係はなかった(それぞれP=0.12およびP=0.55)。また、追跡期間や研究環境(大学と開業医診療所)と生存率との関係もなかった(それぞれP=0.84およびP=0.91)。各論文の最長の追跡期間は6~20年、10年追跡7論文、15年追跡2論文、研究環境は大学8論文、診療所6論文であった。ポーセレン、ガラスセラミックを合わせた全体の生存率は、5年(5,811修復)で95%、10年(2,154修復)で91%。ポーセレンおよびガラスセラミックの5年生存率はそれぞれ92%と96%、10年生存率は91%と93%であったが、有意な差ではなかった。

失敗は次のようになっている。歯あるいはインレー、アンレー、オーバーレーの破折/チッピングは13論文で106例/4,800修復、失敗率0~21%、加重平均で4%、歯内合併症は11論文で117例/3,786修復、失敗率1~7%、平均3%、二次う蝕は10論文で48例/4,644修復、失敗率0~7%、平均1%、脱離は6論文で24例/4,854修復、失敗率0~7%、平均1%であった。ひどい辺縁着色は3論文で認められなかった(0例/338修復)。無髄歯に対して生活歯の歯内合併症の発生を比較した3論文(生活歯142例/2,236修復、無髄歯34例/132修復)によると、オッズ比0.03~1.59、平均0.19であり、生活歯のほうが合併症を起こしにくかった。大臼歯に対して小臼歯の失敗率を比較した5論文(小臼歯39/710、大臼歯64/997)によると、オッズ比0.14~3.47、平均0.54であり、有意な関係はなかった。メタ分析の結果を大まかにまとめると次のようである。追跡期間(5年、10年)やセラミックの種類にかかわらずインレー、アンレーの生存率は高い。失敗の最も多い理由は破折であった。歯種(大臼歯、小臼歯)は生存率に影響しないと思われるが、生活歯のほうが修復物の寿命が長かった。

上記のレビューでは研究環境が大学が半数以上を占めていたが、開業医のみによる実践的研究ネットワークからセラミックインレー/アンレーの生存率に関する論文がDent Materの5月号に掲載されている。Ceramic Success Analysis (CSA)と呼ばれる実践的研究ネットワークによりデータを収集し、修復物の寿命および修復失敗に関係するリスク因子を調べた。データは、複数の言語でインターネットプラットフォームをとおして、6か国の167人の歯科医から収集した(ドイツ161、チリ2、スペイン、フランス、米国が各1)。167人の歯科医による5,523人の患者への5,791個のセラミックインレー/アンレー修復(1994年~2014年に装着)のデータがデータベースに取り込まれた。多くのインレー/アンレーは、ポーセレン(77.3%)を用いた一体型であり(98.2%)、おもに大臼歯(65.5%)、3歯面以上の歯に装着された。追跡期間は1日~15年、平均3年(中央値1.8年)。

年平均失敗率は、3、5、10年追跡でそれぞれ1.0%、1.1%、1.6%であった。年平均失敗率は、歯頸部窩洞外形が象牙質、エナメル質の場合、5年、10年でそれぞれ1.4%と0.8%、1.9%と1.3%となり、象牙質で78%リスクが大きくなった。グラスアイオノマーセメントの裏層があると、ない場合にくらべて2倍リスクが大きくなった。接着システムの5年の年平均失敗率は、簡便な2ステップエッチ&リンスおよび1ステップセルフエッチシステム(仮に簡便型と呼ぶ)では1.9%、3ステップエッチ&リンスおよび2ステップセルフエッチシステム(仮に煩雑型と呼ぶ)(81%の症例で使用)では0.9%となり、前者の失敗リスクは後者にくらべ142%高くなった。歯種、修復に関与した歯面数、歯内治療の存在などは失敗に有意な影響は及ぼさなかった。また、多くの修復物はCAD/CAM方式で作製されたが、セラミック材料の種類(ポーセレンとガラスセラミックの15製品が使われた)の影響はなく、大体すべての材料が良好であった(77%の症例がポーセレン使用)。セメントの種類は結果に影響しなかった(光重合型とデュアルキュア型の使用症例はそれぞれ59%と41%)。

220例の失敗が記録され、多い失敗理由は、修復物あるいは歯の破折(44.5%)、歯内合併症(16.4%)であったが、それらの失敗の約半数はいずれも2年以内に起きた(表1)。そのほかでは、二次う蝕8.2%、知覚過敏3.2%、歯周合併症2.7%、その他12.3%、情報なし13.6%となっている。8年以上では二次う蝕よる失敗が多くなった。(なお、脱離もあるはずであるが、それは多分その他に含まれるのではないかと筆者は推測している)。要約すると、深い歯頸部窩洞外形、グラスアイオノマーセメントの存在、簡便な接着システムの利用は生存に対するリスク因子であった。

本論文での失敗の様子は以上のようであったが、106回を参照してほかの修復と年平均失敗率を大まかにくらべると表2のようである。セラミックインレー/アンレーは、金鋳造インレー/アンレーより劣るものの、CRの直接充填よりすぐれ、CRインレーにくらべかなり失敗が少ないといえよう。

本研究と先に紹介したJ Dent Resのレビューの生存率を比較してみよう。前者と後者の5年生存率はともに95%であるが、10年生存率はそれぞれ84%と91%であり、本研究のほうがかなり低くなっている。この理由として考えられるのは、接着システムの影響である。簡便型と煩雑型接着システムの5年生存率は90.5%と95.5%であまり大きな差はない。しかし、数値は示されていないが、生存率曲線から見ると、9年で簡便型では約70%と著しく低下、煩雑型では約90%の生存率となっている。こうしてみると、煩雑型の接着システムを使用した場合には、本研究とレビューの生存率はほぼ同じと考えてもよさそうである。

本研究は、世界の異なる地域の歯科医が修復治療およびその追跡に関する詳細な情報をウェブサイトにアップロードし、それをまとめて解析するというユニークな方法で行われた。これは、今後の臨床研究のあり方に一石を投じているように思われる。従来の臨床研究報告では、治療に用いる材料や技法が限定されていることが多いが、大多数の患者の治療のほとんどを担っている開業医ではそれらは多種多様である。そうした実態を反映した研究報告は歯科医、患者にとって貴重なものであろう。ただし、このような研究にデータを提供するのはかなり意欲的な歯科医であろうと想像され、無作為に抽出した歯科医から提供されるデータとは異なっている可能性がある。

(2016年6月30日)

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