咬合採得を効率よく行う

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咀嚼の機能の保全
我々人間が、健康に生活するには、食物を摂取する必要があり、摂取のためには歯牙が不可欠です。野生のライオンやトラといった動物が、もしも歯牙を喪失すれば、確実に死に直結します。しかし人間には、欠損した歯牙に対して、ブリッジ、義歯、インプラントといった補綴物を提供することにより日常の生活を送ることができます。補綴物の種類は違っても、咀嚼機能を支える咬合は、歯学のゴールであり、共通のテーマでもあります。特に残存歯の少ない口腔内では、基準となる歯牙も少なく、残っている歯牙も挺出しているため、傾斜して正しい位置にあるとは考えられません。
咬合採得の難しさ
咬合床で咬合平面を決定しても、それが必ず正しいかどうかはわかりません。残存歯が多く残っていれば、歯牙を基準に定義のように咬合平面を決定することができますが、無歯顎では基準となるものがありません。カンペル平面が咬合平面の位置決定や人工歯配列の基準となることは、学校でも習って当たり前のことと思いますが、日常の臨床ではどのようにされていますか?
咬合平面について
『咬合平面とは下顎左右惻中切歯の近心隅角間中点(切歯点)と下顎左右惻第二大臼歯の遠心頬惻咬頭頂を含む平面である。カンペル平面とほぼ平行であるといわれている』
『カンペル平面とは、鼻翼下縁と左右の耳珠上縁を結ぶ線で決定される平面である』
出典 『臨床咬合学事典 医歯薬出版』
アルクスフェイスボウ

アルクスフェイスボウ
▲写真1 アルクスフェイスボウ
(カボデンタルシステムズジャパン(株))
アルクスフェイスボウ
▲写真2 咬合平面を眼窩下点の確認

アルクスフェイスボウ
▲写真3 咬合平面及び鼻下点の確認
(注意 アルクスフェイスボウに加えてプロターevoシリーズの咬合器を保有し、ハンドリングする必要があります。)
アルクスフェイスボウ
▲写真4 プロターevo7
(カボデンタルシステムズジャパン(株))
プロターevo7は、診察室でも技工所でも、優れた品質と機能を提供する。精度の高い従来のタイプから受け継いだスプリットキャストシステムを搭載し、フェイスボウは数分で上顎模型を正しく咬合器にマウントするためのデータを取得可能である。

プロターevo7の特徴
・優れた精度
・患者さんへのプレゼンテーションに適切なデザイン
・取り扱いが容易
・明るく、衛生的なメタル製
・滑らかな表面には角が少なく、メンテナンスが容易
・新たな製造工程により、軽量化を実現
・矢状顆路の目盛りが細かくなり、より正確な調節が可能

咬合平面の決定
当院では、アルクスフェイスボウ(カボデンタルシステムズジャパン(株))を用いて咬合平面の決定を行なっています。フェイスボウは、複数のシステムを保有していますが、一般的に眼窩下点を基準にしている製品が多いと思います。しかし、眼窩下点のみを基準にすると、眼窩下点を支点に平面が上下にずれてしまいます。平均値咬合平面板と同じで上にも下にも動いてしまい正確な咬合平面を計測することはできません。鼻聴道線を調べる平均値咬合平面板は、目安程度にしかならず、当院では使用していません。しかし、アルクスフェイスボウは、眼窩下点と鼻下点の2点と耳珠上縁の3点を計測することから、再現性もある正確な咬合平面を計測することができます。

咬合採得のポイント
フェイスボウトランスファーを日常臨床に取り入れると、咬合採得だけでなく、仮床試適の時間も短縮され、補綴物の精度も向上するアルクスフェイスボウを日常の臨床に取り入れられてはいかがでしょうか?

プロフィール

内田 昌德(うちだ よしのり) 医療法人鶴翔会 内田歯科医院 長崎大学大学院歯学研究科(口腔生理学専攻)卒業
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