器具の洗浄の効率と安全性を考察する

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 昨今の新聞報道、保険算定に関する施設基準により滅菌に対する患者さんからの厳しい視線が注がれています。
IMSの導入
 IMS(Instrument Management System)とは、治療内容ごとにインスツルメントを収納するシステムです。当院でも、基本セット、歯内療法、抜歯といった治療項目に対してIMSを導入しています。導入前には、滅菌バッグを用いて感染防御を行っていましたが、鋭利なインスツルメントにより滅菌バッグの破損や、様々な形状の器具により収納にも苦労していました。 IMSを導入することにより、インスツルメントによる滅菌バッグの損傷がなくなり、洗浄の手指のケガのリスクも軽減することができました。
器具洗浄時の事故予防
 針刺しやインスツルメントによる手指のけがのほとんどは、診療時でなく器具の後片付けや洗浄時に発生しています。器具の洗浄には、診療に用いるディスポーザブルのグローブを使用せず、洗浄用に製作された厚手のグローブを使用することによって、予防することができます。量販店で購入できる台所用のゴム手袋を使用するのも一つの方法ですが、滅菌できないことが欠点となります。E.O.G.滅菌やプラズマ滅菌のシステムをお持ちの先生は、台所用のグローブも滅菌も可能ですが、一般的な歯科医院では難しいかと思います。当院では、オートクレーブでも滅菌可能なHu-Friedyニトリル・フロック張りユーティリティ・グローブを使用しています。感染防御において最もハイリスクな作業における感染リスクを低減する観点からも洗浄用グローブにも着目すべきでしょう。


IMSシグネチャーカセット
本体はステンレス鋼でできており、内部にはシリコンのストッパーで器具を確実に保持する。100種類を超えるサイズ(構成、カラー、オプション)が用意でされている。単なる器具の容器でなく洗浄時の洗剤と内容物の接触や滅菌時の蒸気浸透性が考慮されている。


IMSインジゲーターストリップス
カセットごとにインジゲーターストリップスを封入することによりカセット毎に滅菌工程を通過したか否かを確認可能となる。このインジゲーターには、名前と日付を記入することも可能であり、滅菌日と担当者などの記録が出来、責任の所在が明確になる。CDCのプロトコールでは、滅菌の一包装ごとに一つの化学的インジケータを使用することを推奨している。


ニトリルユーティリティグローブ
0.38mm の厚手のグローブで鋭利なインスツルメントによる手指への怪我を防ぐ。肘付近間まで覆うので、汚染物や洗浄用の薬品に汚染されることを予防する。オートクレーブによる加圧滅菌で、121℃で最大5回まで滅菌が可能である。サイズはS、M、Lの3種類が用意されている。


IMSの利点と欠点
利点
・器具をカセットで管理するため、選別などの処理にかかる時間を節約し、生産性を向上できる。
・乾燥することで水分による細菌の感染リスクを軽減できる。
・カセットごとに洗浄・滅菌というフローを行うため器具によるケガのリスクを軽減できる。
・カセット内で洗浄・滅菌されるので器具のサビや損傷を減少し紛失を防止できる。
・治療内容別にカセット内の器具を保管できるので、整理整頓が可能である。


欠点
・カセットの購入時に多額のコストがかかる。
・カセットの蓋はロック式なので開閉に時間がかかる。
・滅菌バッグよりも重量が増すので、移動時に注意が必要である。

滅菌保証
 滅菌バッグであれば、オートクレーブにて滅菌後にインジゲーターの色がかわることにより、滅菌工程が完了したか否かを判定することができます。しかし、IMSカセットを使用する際には、カセット毎にインジゲーターを挿入して適切に滅菌工程を通過したか否かを判定します。
感染リスクの軽減
 IMSカセット内に器具を入れてそのまま洗浄、滅菌、乾燥を行うという操作に違和感のある先生も多いかと思います。しかし、確実な操作を行えば感染リスクを軽減できるばかりでなく、洗浄、滅菌作業の時間短縮も行えます。 当院ではIMSカセットを用いて、ウォッシャーディスインフェクターのような洗浄機器を使用するようになり、明らかに残業時間も減少しました。また、感染リスクも軽減したことによりスタッフにも好評です。また、毎回確実に滅菌工程を確認できることにより安心・安全が目に見えるようになりました。日常の器材処理のフローを安全に管理するIMSシステムを導入されませんか?

プロフィール

内田 昌德(うちだ よしのり) 医療法人鶴翔会 内田歯科医院 長崎大学大学院歯学研究科(口腔生理学専攻)卒業
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