メタルフリーの時代到来 接着という観点からエアーブレーションについての考察

カテゴリー
記事提供

© Dentwave.com

デンタルハック
メタルフリーの時代到来
2017年の12月に全ての第二大臼歯の残存という条件はありますが、下顎第一大臼歯へのCAD/CAM冠の保険適用が決定しました。それまでも小臼歯へのCAD/CAM冠への適用がありましたが、『脱離・破折』という問題が噴出しました。支台歯形成や接着といった種々の問題を解決され、現代ではこのような問題は起こりにくくなってきました。
今月は、接着という観点からエアーブレーションについて考察したいと思います。
補綴物が脱離する理由
支台歯形成後に印象採得後に模型製作、補綴物の製作となります。歯科技工士の先生が、頑張って製作された補綴物が脱離すのは、なぜでしょうか?
『支台歯形成、咬合、印象、補綴物の精度』といった問題が挙げられると思います。しかし、先生の歯科医院に納品された補綴物は、作業模型にぴったりと収まっていませんか?作業模型で問題のない補綴物が口腔内で不適合になるのは、歯科医院サイドの問題と考えられます。
模型精度については、次の機会に考察し割愛しますが、口腔内が近似再現されていないことが起因します。補綴物が完璧に製作されていた場合の脱離の原因が何でしょうか。『補綴物の物性、咬合』といった問題も考えられますが、ほとんどの場合は、接着時の操作の誤りと考えます。接着に関しては、各種のセメントの添付文書を熟読すれば、問題はないものと思います。
では、なぜ補綴物は脱離するのでしょうか?
メタルフリー

補綴物の口腔内での脱離の原因

・ ミリングマシンによる切削時の粉塵による汚染
・ 試適時の適合材による汚染
・ 研磨時に使用する研磨剤による内面の汚染
・ 試適、接着時の唾液、プラーク、血液による内面の汚染
・ 納品時の石膏模型による汚染
脱離の原因の除去
補綴物が正しく製作されていると仮定の上で口腔内の補綴物が脱離する原因のほとんどが、試適後の接着に問題があることがわかると思います。試適後の補綴物の汚染こそ、脱離の原因と考えます。では、どのようにすれば、この種々の原因を除去できるでしょうか?
解決策は、接着直前での汚染物質の除去です。具体的には、接着前の補綴物内面の『サンドブラスト処理』となります。
歯科医院には、サンドブラストする機器をお持ちの先生は少ないと思います。場所の確保、サンドブラスト時の室内の空気汚染、高価な機器という問題により導入されないものと思います。
チェアーサイドでのサンドブラスト処理
接着時の問題点の解決には、チェアーサイドでの接着直前のサンドブラストによる内面処理が一番と考えます。
今回ご紹介する『KaVo RONDOflex Plus 360』は、ユニットのエアー回路に装着するだけで使用できるサンドブラスト処理できる機材です。『KaVo RONDOflex Plus 360』は、エアーブレーションと同時に水スプレーによりサンドブラスト処置する際の酸化アルミニウムの粒子を水スプレー内にてコントロールすることができます。今までの機材と違い、スプレー内で酸化アルミニウムがコントロールされるために隣在歯を傷付けたり、歯肉を痛めることがありません。
サンドブラストの実際
  • メタルフリー
    補綴物の内面を一層均一に酸化アルミニウムによりエアーブレーションを行う。
    診療室内の空気汚染を勘案し、口腔外バキュームを使用する。術者は、ゴーグルを使用する。
  • メタルフリー
    支台歯へのサンドブラスト処理
    水スプレーにより歯肉や隣在歯を傷つけることが少ない。可能であれば、口腔内での使用はラバーダム防湿が望ましい。
  • メタルフリー
    接着後の口腔内写真。
  • メタルフリー
    50μmのパウダーを60秒間吹き付けた後の歯面。
  • メタルフリー
    500倍に拡大されたブラスト後の歯面のSEM像。
メタルフリー

酸化アルミニウムによるサンドブラスト処理による効果

・ 唾液、血液、プラークといった汚染物質の除去
・ サンドブラスト処理による接着表面積の増大
・ 表面性状の変化による機械的嵌合力の増加
・ CAD/CAM冠では、フィラー成分の露出による接着力の増強
  • メタルフリー
    27μと50μのコランダム粒子で色分けした容器。
  • メタルフリー
    2種類のノズル径(0.46mm,0.64mm)と2種類の噴射角度(90°、110°)の2種類があり、臼歯部へのアクセスの困難な部位でも確実にアクセスできる。
補綴物の満足度の向上
歯内療法、カリエス処置が終了した後の補綴物の完成は、患者さんにとっても術者である歯科医師にもゴールとなるポイントです。
ゴールポイントでの補綴物の脱落は、口腔内の機能を果たさないばかりか、治療に対する信頼も失落します。接着操作には、是非、サンドブラスト処理の操作を加えていただきたい。
内田昌德

プロフィール

内田 昌德(うちだ よしのり)
医療法人鶴翔会 内田歯科医院
長崎大学大学院歯学研究科(口腔生理学専攻)卒業
記事提供

© Dentwave.com

新着ピックアップ