歯科用咬合スプリント”アクアライザー ウルトラ” 今井俊広先生ユーザーレビュー

カテゴリー
会社名

株式会社東京歯材社

業種

歯科医療機器メーカー

歯科用咬合スプリント”アクアライザー ウルトラ” 今井俊広先生ユーザーレビュー
  • アクアライザー(図1)が1970年代に流体静力学スプリントとして開発された頃、米国では臨床で顎関節治療のため、盛んに咬合調整がされていた。アクアライザーは流体システムが内蔵されているので、顎関節の治療を簡単にし、有効性をより安定的なものにすると紹介された(文献1)。アクアライザーは、その特性により、咬合調整の際に患者自身の筋をリラックスさせることにより咬合の早期接触部位と偏位性の接触を探し出せるからである。顎関節症の治療をいかに成功させるか、咬合調整をいかに迅速に行うようにできるか、が課題であった時代背景があった。

  • 図1:アクアライザーの装着状態(模型)
文献1: Martin D Lerman, 波多野泰夫翻訳:流体静力学スプリント
このように1980年代まで「顎関節症の原因は咬合」、「顎関節症では咬合治療が必要」、とされていた。しかし、顎関節症の原因は咬合だけでなく、様々な要因が関与しており咬合だけの問題ではない、と原因論も変わってきた。当然、顎関節症の治療のための咬合治療や咬合調整は否定されるようになった。
2010年以降、顎関節症の治療の指針はスプリント療法さえ消極的である。顎関節症の治療のために咬合調整はするべきではないと勧告されている。認知行動療法や理学療法など自然治癒を促す治療指針である。スプリント療法はケースバイケースで必要な時もあると考えているが、私共も顎関節症の治療においては、認知行動療法を第一に勧めている。
以上を踏まえると、なぜ今アクアライザー?!と思われるかもしれないが、実際に私は日常臨床でアクアライザーをよく活用している。顎関節症で、特にClosed Lock の患者さんなどは、「口が開かない」と、急患で当日の割り込み来院となる。問診表と問診でLockを起こした要因を診断し、顎関節症の説明と認知行動療法を説明するだけでも本来の予約の患者さんをだいぶお待たせすることが多い。重篤な病気ではないからと、安心させてアクアライザーをお渡しする。スプリントの印象も行い、2~3日後になんとか予約を入れる。その際に「明日の夕方になっても口が開かない時は電話ください」と伝えておき、その患者さんに対しては、スプリント製作をする。アクアライザーでLockが改善した患者さんには、次のアポイントで認知行動療法を再度確認し、徹底する。
しかし、一般臨床医である当医院にそんなに度々Closed Lockの患者さんが来院するわけではない。私共がアクアライザーをよく使用しているのは、下顎位の診査の時である。補綴治療のための咬合診査やプロビジョナル時の下顎位の再評価に活用している。
補綴治療の範囲が大きい場合や広範囲のインプラント治療の場合は、崩壊した咬合を再構築する咬合再構成治療が必要となる。補綴治療が必要な歯があり、また顎関節症の症状もあり、咬合の要因が大きいと診断出来た患者の補綴治療は咬合再構成治療が必要な場合があり、そのような咬合再構成治療の成功のKeyは適正な下顎位である。治療の目標とする下顎位の採得が適正でなければ、目的地を間違えた電車に乗ってしまったようなことになりかねない。その下顎位の確認、CRバイトの採得にアクアライザーは実に有効である。なぜなら前記したように、アクアライザーは流体システムが内蔵されているため、左右の筋のスパズムがとれ、患者自身の筋の緊張をなくし均等化するためである。
1989年に日本で検証を行った論文があった(図2-a,b・文献2)。当時、咬合治療で、自分自身の採得したCRバイトに自信がなかった頃であったため、この論文を見てアクアライザーに飛びついた。アクアライザーを利用する前は、ロールワッテで筋のリラクゼーションをはかったり、筋の緊張が強い患者には事前にスプリント療法を行い(就眠中使用していただき、朝の朝食を食べずにスプリントを付けたまま来院していただいて)CRバイトを採得したりもした。しかし、そのスプリントが本当に適正な下顎位に誘導できるのか??という不安もあった。論文を読み、実際咬合に違和感を訴えていた患者の下顎位の確認に試してみた。補綴治療が必要であったが、治療目標を決定できずにいた。自宅でアクアライザーを1時間ほど使用した後に外し、そっと歯を閉じたときに「えっ、本当にこんなに顎がずれてるの??とびっくりした」と患者自身が言ったほどであった。
側頭筋aと咬筋bの緊張状態に差がある。咬筋bでは左右のバランスも不均衡が認められる。
5分アクアライザー使用後。側頭筋と咬筋のスパズムのバランス、咬筋の左右のバランスが取れてきている。
文献2: 澤田明ほか:アクアライザーを用いた顎関節症患者の咬合位決定法、補綴臨床、22(1):63~72、1989
当医院は顎関節規格写真で顆頭の位置を確認しているので、アクアライザーで採得した下顎位が適正であることも確認できた(図3-a,b,c,d,e)。このようにアクアライザーは臨床で有効に活用することができる。Peter E.Dawsonの「オクルージョンの臨床」の本でも、筋の緊張緩和にアクアライザーを紹介しているのを読んで(文献3)、このような利用における正当性も確認できた。以来30年近く、アクアライザーのユーザーである。
  • 術前 初診:1990年
    全体的に補綴治療を希望して来院。TMDの不快症状もあった。「咬んで」と言うといろんなところで咬む。ICPも安定していない。
  • 下顎が左後方に回転するように偏位していた。
    筋の緊張が強くCRを採取しようとしても、顎位が収束せず苦労した。
  • アクアライザーを1日1時間使用していただき、CRバイト採取当日は来院時に家から装着してきてもらい、採取した。顆頭の変形があるが、術前より良い位置となっている。
  • 術後
    デュアルバイトだった咬合も安定した状態になった。
  • 術後23年
    経年的な変化はあるが、補綴の再治療もなく安定した状態がつづいている。
文献3: Dawson PE. 丸山剛郎(監訳)川村貞行(訳):オクルージョンの臨床、第2版 東京:医歯薬出版、1993
著:今井俊広(鳥取県開業)
1979年 東北歯科大学(現・奥羽大学歯学部)卒業
1979年 原宿デンタルオフィス勤務、山崎長郎先生に師事
1984年 米国L.A.にてRaymond L.Kim先生に師事。University of Southern Californiaにて卒後研修コースを受講
1987年 鳥取県米子市にて今井歯科クリニックを開業
お問い合わせ先
≪販売元≫ 株式会社東京歯材社 商品センター
https://www.shizaisha.co.jp/shizaisha/
TEL:03-3874-5077 FAX:03-3874-5091
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