日常臨床の“あるある”を見直す 補綴再製ゼロプロジェクト チェアサイド編 (3) 「忙しいから石膏をすぐに注げない」という場合は?

カテゴリー
記事提供

© Dentwave.com

ついに歯界展望でも連載開始!補綴に関わるチェアサイドとラボサイドのやりとり、日常臨床の“あるある”を見直す補綴再製ゼロプロジェクト。知っている人には当たり前、でも、多くの現場で起きているという事実を、筆者の臨床や研修業務を通じてお伝えします。気楽な気持ちで読んでください♪

3. 「忙しいから石膏をすぐに注げない」という場合は?

アルジネートをはじめ、寒天などの水が主成分の印象材は、その扱い方が大切で、印象採得後はできるだけ早く石膏を注ぐのが望ましいというお話しをしました。この当たり前といえば当たり前のことが、臨床現場ではできていないことが多いような気がします。

私はスタッフ研修の一環でこうした印象材の話をするのですが、スタッフから
「はじめて知りました!」
「ちゃんと言ってくれれば、改善したのにぃ」

なんて声を聴くんですね。

考えてみれば、歯科衛生士さんや歯科助手さんが、印象材の話を、歯科技工の立場から学ぶ機会ってあまりないですから。

歯科技工という視点から話すから意義もあるのですが、たまにこんなことを言われたりもしますよ。
「患者さんをまわすので精一杯で、石膏を注ぐ時間がない」
「佐野さんは現場をわかっていない!」

・・・怖いですね(^^;

まぁ、そうはいっても改善できている現場はたくさんありますし…
意識を変えるだけで行動は簡単に変わるのですが…
でも、意識というのを変えるのはなかなか簡単ではないので…

もっと簡単ですぐに解決できる方法を提示しちゃいます(笑)

それはアルジネート印象材用の消毒固定液。品としては「インプロステリンプラス(太平化学産業)」などがあります。印象採得後にこの液に浸けておくと、印象材の固定効果で、1時間浸けておいても大きな寸法変化が起きません。しかも消毒効果もあるので、その後の作業の二次感染リスクも減ります。

簡単な実験をするとこんな感じですよ。

image1 image2

こちらは、簡易実験用の金型(写真左)と金型上で製作したレジンキャップ(写真右)です。

image3

印象採得5分後に石膏注入した模型に、レジンキャップを合わせてみました。

image4

消毒固定液1時間後に石膏注入した模型に、レジンキャップを合わせてみました。

多少の差はありますが、だいたい同じような結果になっているのがわかると思います。消毒固定液、なかなかやります( `―´)ノ
これなら、印象採得後すぐに石膏を注げなくても対応できそうな気がしませんか?

これを紹介したらあるスタッフからこんな声が
「これなら診療後にまとめ石膏注いでも大丈夫ですね♪」

うーん、それは時間によります。消毒固定液に浸けて3時間後に石膏注入したらこうなりますよ。

image5

3時間経過したものは消毒固定液1時間後に石膏注入したものに比べ、レジンキャップの浮き上がりが大きいことがわかります。

アルジネート印象で石膏をすぐに注げなくても、消毒固定液に浸けることで印象材の変形リスクは少なくすることができます。でも、長時間はダメそうです。

結論としては、消毒固定液を使うにしろ使わないにしろ、アルジネート印象材は時間の管理が大切、ということですね!

記事提供

© Dentwave.com

新着ピックアップ