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2013/10/24

第7回 実験的歯科医院奮闘記(7)  「インプラントしかありません」はないだろう!

 前回,読売新聞「医療ルネッサンス」に私が提唱している接着ブリッジが紹介されたことで,一気に患者さんが増えたことをお伝えした.それはそれで大変うれしいことなのだが,来院して下さった患者さんの多くが,実は接着ブリッジの適応症ではなかった.ほとんどの患者さんは治療の希望より相談というか,セカンドオピニオンを求めて来院した.

 その相談の中で多かったのは,「ここはインプラントしかありません」と,前の歯科医院で1本欠損部にインプラントを進められ,それが正しい選択かどうかを判断してくれというものであった.私は以前より,歯の欠損は疾病ではなく,障害に属するものだから,障害に関する処置の選択は患者自身にあることを強調してきた.講演でもよく言う例えだが,もし足を切断した場合,傷口を治す行為は間違いなく医者の仕事だが,傷口が治った後に残された歩行困難という機能障害の対処に,何を選択するかは患者自身が決めることである.ある場合は松葉杖,ある場合には義足,車椅子,そしてある場合には全く何もしないと言うことだって選択肢にはある.

 振り返って歯科の場合を考えてみよう.両隣接歯が健在の1本欠損に何をすればよいのであろう.私の説明はこうだ.「1本歯がなくなった場合,ここをどうするかの処置は5つあります」と,片手を広げて,手の甲を患者さんのほうに向ける.「生体や歯に優しい順に申し上げます」といって小指を指す.「まず,何もしない」.こういうと大抵の患者さんは目を見張る.そして,「えっ?何もしなくてもよいのですか?歯医者さんからそんな説明受けたの初めてです」といって,眼を輝かしてくる.こうなると私の掌中に入ったのも同然だ.「もちろん.なくても噛むことや見栄えに何の支障もなければね」という.さらに続けて,「次は,取り外し可能な義歯」と薬指を指す.「ああ,入れ歯ですね」「そうです」.「次の中指と人差し指がブリッジです.そして,中指は医療ルネッサンスに書かれている接着ブリッジで,人差し指は今までどおり歯をたくさん削るブリッジです」.そして最後に親指を示しながらおもむろにこういう,「親指はインプラントです.インプラントはとてもよい方法ですが,金融商品に例えればハイリスク,ハイリターンの商品ですね」.患者さんは感心したような顔をこちらに向けている.そこで,追い討ちをかけるように,「でも,よく噛める,キレイに見えるというのは,今の逆の順番なのです.だから自分が何を求めているかによって選択肢は違いますね」という.患者さんは,ホッとしたように,「インプラントじゃなくてもよいのですね」と安心したような顔をして,「先生,お任せいたしますのでよろしくお願いします」と言われてしまう.いや,そうじゃなくて選ぶのはあなたなのですよ,インプラントじゃなくてもいくつか選択肢はありますよと言っているのだが・・・.また,はなから説明を繰り返すことになる.いやはや,医者にお任せスタイルが身に付いた日本では,なかなか患者本位の治療を施すのが難しいですね.

図1 手を広げて欠損補綴の選択肢を示す


図2 典型的な前歯部の接着ブリッジ.


図3 典型的な前歯部の接着ブリッジ.

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