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記事

2013/10/24

第5回 Er:YAGレーザーの臨床応用

 回を重ね色々な波長特性をもつレーザー機器について話をしてきましたが、今まで述べてきた以外のレーザー機器の中で、もっとも代表的な波長特性をもつレーザー機器としては、Er:YAG(エルビウム・ヤグ)レーザーがあげられます。このEr:YAGレーザーは発振波長が2940nmで水の吸収が非常に高いのが特徴で、発振ピークも安定していることから、エナメル質や象牙質などをはじめとして多くの生体組織に吸収される。



[図1]画像をクリックで拡大表示Er,Cr:YSGGによるオトガイ部の骨切り

Er:YAGレーザーの歯(硬組織)に対する作用についての最初の研究発表は、1988年のHibstとKellerによるものです。彼らは、う蝕病巣はもちろんのこと、脱灰していない健康な硬組織の切開・除去が、熱損傷を伴うことなく可能であると発表しました。それ以後は、硬組織の除去時の熱作用、歯髄の損傷の可能性、口腔粘膜疾患の切除、顎骨の骨切りなど、さまざまな研究が行われています。
 
そのようなことから、特に歯だけでなく骨を含めた硬組織の切開に対して臨床応用されており、近年では骨に対するアプローチが多い傾向にあります。

 もちろん軟組織に対しても臨床応用が可能です。軟組織へのアプローチとしては、の掻爬、過剰な歯肉の切除があります。硬組織においては、歯周病治療における歯石除去、過剰な骨の切除(骨レベルの平坦化)、インプラント治療時におけるドリリングなどがあげられます。さらに、口内炎の治療に対する応用の他に、審美領域でメラニン色素沈着の除去、歯肉整形などにも応用可能であります。

 最近の研究結果から創傷治癒が早いという傾向が示唆されています。Minimal Interventionの立場からしても、今後、Er:YAGレーザーを用いることのできる適応症はさらに拡大していくものと期待されています。

 以上に述べてきたEr:YAGレーザーに、特徴が似ていることもあり、最近ではEr,Cr:YSGGレーザーが注目されています。このEr,Cr:YSGGレーザーは1987年にフランスのマルセイユ大学で開発されました。そのメカニズムは「レーザーパワード・ハイドロキネティック」と呼ばれるもので、ウォータースプレーの中にレーザー光を当て、水分子のエネルギーを急激に高め、水分子の衝突により切開・切削する、さらにエアーアンドウォータースプレーの使用により有害な熱作用を軽減し、歯髄に影響を与えずに歯や骨の切削が可能であることも明らかにされています。



[図2]画像クリックで拡大表示
欠損部位


[図3]画像クリックで拡大表示
レーザードリリング用のステント装着



[図4]画像クリックで拡大表示
レーザーによるドリリングを行なう

 Er:YAGレーザー同様、Er,Cr:YSGGレーザーも骨に対するアクセスが容易であるとされています。Er,Cr:YSGGレーザーのアパタイトや水分に強く反応する波長特性に加えて、上述したように放射している水分にも反応するために、その爆発力により骨を切削することになります。すなわち、水で切ると同時に冷却可能であることから、レーザー応用時の侵襲を比較的少なくできる特徴を有しているためと考えられます。また、軟組織(歯肉)の切開に対しても無麻酔下で多く行うことができ、その治癒は早く術後の疼痛もほとんどないことが実証されています。



[図5]画像クリックで拡大表示
ステントを変え再度レーザードリリング



[図6]画像クリックで拡大表示
ドリリング度インプラント埋入

 その他に、歯科領域で研究・応用されているレーザーとしては、エキシマレーザーやアルゴンガスレーザー、KPTレーザーなどがあります。エキシマレーザーは現段階では実用化がされていませんが、研究からも将来有効なレーザーとなります。またアルゴンガスレーザーは漂白や重合に応用され、さらにメラニン色素に高く吸収されるために、歯茎の黒ずみの除去にも応用されています。残念ながら、低出力のため、臨床応用範囲が限られていたこともあり、現在ではあまり用いられていないませんが、軽量・コンパクトといった点からは、チェアサイドで容易に臨床応用できるという利点もあったものと思われます。



[図7]画像クリックで拡大表示
インプラントが埋入されたところ


[図8]画像クリックで拡大表示
縫合したところ



[図9]画像クリックで拡大表示
レントゲン写真

 KPTレーザーはNd:YAGレーザーの発振波長をプリズムで半分にしたメカニズムを有しており、どの波長の歯科用レーザーよりも浸透性が高いことを利用して、根管治療に用いられたり、歯の漂白の1回治療などに使用されています。しかしながら、KPTレーザーも応用範囲が限られており、今後の研究によって新しい応用の範囲が広がることが期待されます。

※Er,Cr:YSGGレーザー、エキシマレーザー、アルゴンガスレーザー、KPTレーザーは、本邦では未認可のレーザー機器で、研究段階の症例です。

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