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記事

2013/10/24

第3回 CO2レーザー臨床応用

 1964年にPatelによって10.6μmの波長を持つCO2レーザーが初めて発振され、さらには1968年に医療目的での高出力CO2レーザーが開発されている。

 CO2レーザーの最大の特徴として、組織中の水分に吸収される率が高いことがあげられる。その吸収率を比較した場合に一番高い吸収率をもつレーザーはEr:YAGレーザーであり、次がCO2レーザーであるといわれている。また近年注目されているEr,Cr:YSGGレーザーもCO2レーザーと同じぐらいの吸収率をもつといわれている。CO2レーザーは医科の領域ではかなり臨床応用されている波長をもつレーザーであり、とくに形成美容外科や皮膚科の分野で使われている。

 CO2レーザーは、位相が同じレーザー光をレンズで集光し、組織に照射する(focused beam)することでエネルギーを最大限に利用することができるため、焦点部の温度は1,000〜1,500℃に達する。そのため、組織が一瞬にして蒸散・切開され、その周辺部組織は熱により凝固されることで止血がなされる。これに対し、レーザー光を焦点距離よりも長い距離をとって照射する、すなわち焦点をずらして照射する方法(defocused beam)もある。


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[図1]第2大臼歯の過剰歯肉


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[図2]レーザー照射により歯肉切除を行う


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[図3]歯芽にも照射され、その部位の耐酸性が獲得される。

 臨床での応用は、口腔軟組織に対して使用するケースが中心となる。軟組織への使用の代表的な例は、外科手術(蒸散、切開等)、止血、メラニン色素の除去、口内炎の処置などであり、審美領域でも漂白において薬剤の効果を活性化させる目的で多く使用される。さらに、インプラント治療においてもよく使われているが、これはCO2レーザーが金属(チタンなど)に吸収されないことから、インプラント表面の溶解もなく体内にもチタンが残留しないことを根拠にしたものである。また、インプラント埋入前後の周囲歯肉の整形に応用することで、蒸散による熱エネルギーでの感染の防御作用も期待できる。

 外科手術の際に以前は電気メスを使用していた症例が、現在ではほとんどCO2レーザーを用いることで解決できる。これはCO2レーザーが非接触モードによっても作用できるので、複雑な形態をした口腔内で容易にアクセスできるからである。またCO2レーザーにより施術された術創は出血がほとんど、あるいは全くないという利点もある。すなわち、乾燥した術野が確保することができるということは、術後痛と腫脹の軽減とともに、レーザー照射で得られる遠赤外線効果により毛細血管が活性化し、創傷治癒の促進効果が得られているということを示している。さらに組織表層が0.5mm以下の血管の断層を瞬間的に凝固できるため、皮膚切開では止血作用が高く、熱損傷を少なくできるのである。

 硬組織への応用としては、従来からいわれているう蝕病巣の除去よりもエナメル質の強化(耐酸性の向上)に効果を発揮する。主にNd:YAGレーザーが耐酸性を向上させるといわれているが、CO2レーザーの波長の方が歯の表面で吸収される特長を有しているため、より適していると考える。とくにフッ化物と併用することによりエナメル質の表面を溶融することができる。このときに生じるマイクロクラックがフッ化物の通路となり、多量のフッ化物がエナメル質中に取り込まれることになる。このようなことから、フッ化物とレーザー照射の併用により相乗効果を期待することで、耐酸性を増強させることが可能である。


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[図4]小臼歯のカリエス。露髄部位にCO2レーザー照射。


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[図5]レーザー照射による歯髄の保護を行う

 CO2レーザーの使用に際してはチップがファイバー形状のものが少ないため、基本的に接触照射でなく非接触照射で行うほうがよい。従来は、チップがファイバー形状でも太いために根管内にうまく挿入できず、CO2レーザーは根管治療には不向きといわれていた。しかし最近は、注水下でCO2レーザーを照射することで、水そのものに殺菌性が付与されるといわれている。すなわち、CO2レーザー照射により水の酸化還元電位(ORP)がいっきに下がり、殺菌性を付与された水により根管内の洗浄・殺菌が効率よく行えるというわけである。この殺菌性に期待して、根管洗浄剤の代わりに使っている歯科医師もいるという。

 以上のようにCO2レーザーには、幅広い臨床応用が可能である。特に熱の浸透性が少なく組織深達度も浅いという特長があることから、組織深達度が心配されるような軟組織に対する応用には、もっとも効果を発揮するレーザー機器といえる。


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[図6]de-epthlization

 
最後にCO2レーザーに関する興味深いトピックスとして、de-epthlization(デ・エピセライゼ−ション)というものがある。これはGTR法における遮断膜の代わりにCO2レーザーを使うというものである。通常、フラップを開け手術を行うと、治癒の際他の組織に先立って上皮が埋入してしまい長い接合上皮を作る。治癒の過程として当然のことだが、それを抑えるために遮断膜を用いたGTR法という療法が応用されていた。本法は、同様にこの上皮の埋入を抑えるため、フラップを開けた内側にCO2レーザーを照射し、炭化させてGTR法における遮断膜の代わりを作ったのちにフラップを閉じることで、上皮の埋入を遅延させることができるというものである。すでに本法に対する実験、研究は多々行われており、本法によってある程度の治癒、再生が得られるというデータがある一方、治癒過程にある組織に創傷したときの再生のスピードが早く、そのスピードも停止しづらいという結果も得られている。さらに数回にわたるフラップ術を適応しなけらばならない症例もあり、患者に対する苦痛、侵襲を最小限に抑えるという、Minimal Interventionの考え方からは逸脱せざるを得ないこともある。本法の適応にあたっては、慎重な診査・診断を行うことが重要である。さらなる適応拡大をめざすためにも今後の実験、研究結果に期待したい。


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[図7]ティッシュグラフトのドナーサイトの止血を行っているところ


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[図8]良好な止血がおこなわれた。

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