第1回 跋渉(ばっしょう)

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経営関連コラム 第1回「跋渉(ばっしょう)」 田上めぐみ 歯科衛生士

【はじめに】

みなさま、はじめまして。株式会社Himmel(ヒンメル)の、田上めぐみです。このたび、弱輩者ではございますが、12回の連載でコラムをスタートさせていただく事となりました。最後までお付き合いの程、よろしくお願いいたします。

このシリーズでは、私が現場で感じる思い、この業界が良くなればという願い、歯科衛生士のボトムアップこそ患者さんに直結した医院づくりに繋がる、という考えを、歯科衛生士というキャリアベースを持つコンサルタントとして、多角的な視点でお伝えしていこうかと考えております。

まずはじめに、私の自己紹介をいたします。

1989年、歯科衛生士のライセンスを取得後、一般歯科に入職をいたしました。卒後、務めた医院さんで、受付業務・アシスタント業務・歯科衛生士業務を学び、歯科医院の業務全般の基礎知識を養う事ができました。医院全体の仕事を把握することは、歯科衛生士として当然の責務であり、現在の業務の地盤作りへ大きな財産となりました。 転機となったのが、2001年。11年半務めた医院を退職し、友人であった歯科医師の元へ転職しました。友人の歯科医師は末期のガンを患っていたため、私に最後の患者さんを診終えるまで手伝って欲しいと、懇願されたのです。 友人は、闘病生活、入退院を繰り返しながらも、患者さんを最後まで診させていただき、最後の患者さんの治療終了と共に、42歳という若さで他界。私の心には大きな穴がぽっかりと空き、悔しさや悲しみに襲われ、このまま歯科衛生士として歩み続けられるかどうか不安になった気持を、今でも覚えております。 その後、たまたま医院を居抜き物件として貸し出すこととなり、医院設備の説明や、患者さんの引き継ぎ、新しいスタッフが決定するまで、新規開業の歯科医師のもと、お手伝いをいたしました。その時に「私に、ぴったりの仕事かも」と感じたのですが、それもこの悲しい経験があったからです。手探りでのこの経験が、「開業専門立ち上げスタッフ」として歩む第一歩となり、現在の私があります。 現在では、歯科コンサルタントとして、新規開業や医院スタッフの教育事業を行っております。「歯科衛生士のコンサルタント?」と、頭の中で疑問を抱かれた方もおられると思いますが、確かに「おっしゃる通り!」かもしれません。まだまだ私のようなフィールドで、第二の人生を歩んでらっしゃる歯科衛生士が少ないのが現況です。 しかし、歯科界への熱い想いや、歯科衛生士の地位向上のために、何か出来ないかと考えている歯科衛生士さんも全国にいらっしゃいます。歯科界にとっては、なんとも心強い時代になってきました。

【起業した思い】

「これは天職かも?」と感じながら、大好きな歯科衛生士をいつまでも続けていきたい一心で歩きだした私は、2006年フリーランスにピリオドを打ち、起業するという事にチャレンジしました。法人化にチャレンジしたのは、もっと広く、多くの出会いや、個人では難しかった社会貢献、社会責任を負いたかったからです。また法人化することにより、胸を張って社会へ新風を巻き起こす起爆剤的存在になることや、発信できる機会を得ることや、社会からの信用を得ることができる、と考えたからでした。 まずは、「歯科衛生士の質の向上」を目標に出発しました。歯科衛生士の質の向上は、決して順風には進みません。歯科医療に携わるスタッフの「質の向上」と「医院のクオリティ」を高めることはこの業界に必要な事であるという、目標は見えているのですが、多くの問題を抱えている現状を前にすると、立ち向かう気力を維持することだけでさえ大変です。 特に医院スタッフの皆さんには、今の時代に何が必要かという、医療人としての心がまえや立ち位置を、提案していきたいと考えております。

【今、歯科界に求められていること】

私は、日々ご縁があって出会う、医院経営者の「お悩み」を解消することを求められています。 例えば、順調に医院経営をなさっている開業25周年を迎える医院さんでも、「こんな田舎だけど、従来通りの患者応対は時代に合っていない」と感じておられます。しかし「今までの慣習や接遇マナーを見直すための指導者や提案者が、自分の院内にいない。このままで良いのか?」と、歩む方向性を見失って悩んでおられます。また、新しく開業なさる医院経営者の方も、新規開業スタッフの定着に悩み、診療理念を具現化する方法が見つからないと、若い歯科経営者としての壁にぶつかっておられます。 新規開業医院さん、既存歯科医院さんに関わらず、どこのクライアントも多少なりともお悩みを抱えていらっしゃいます。「わかっちゃいるけどね」「どうしたら良いのか分からないのだよ」と…。 ここから先は、私の持論と信条になります。 決して明るい兆しが見えない業界ですが、“個”の力を高め、集合し、医院全体のクオリティを高めていくことによって、医院として秀でることは可能な時代だと考えます。まさしく“個”の成長を望み、発展、変革していく歩みを止めない事が必要でしょう。そのような、決してネガティブではない医院改革が必要だと、考えています。 情報過剰な時代においても、本物の医療提供ができる場を整備することと、医院スタッフの職務環境を整えることが、患者さんにとって安心できる、かかりつけ歯科医院として選ばれるキーポイントに繋がると考えます。 ご承知のように、医院と患者さんは心と心で繋がっています。心が通い合う医院づくりへの変革と、うわべだけではない本来のプロ集団を目指す。つまり、人間力を高めていくことが医院のクオリティを高めることにつながる、そのような考え方が必要な時代ではないでしょうか?

【最後に】

私は医療人としての思考から、今、なにがクライアントに必要なのかを精査します。十人十色、さまざまな色を持った医院さんに対してコンサルテーションさせていただくことが、歯科衛生士としてのやりがいになっています。 コンサルタントとして決して驕ることなく、医院を客観視できる目となり力となりたいと考え、これからもコンサルティング業務を楽しみたいと思っています。 今後ともご拝読のほど、よろしくお願いいたします。

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