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2013/10/24

第5回 ワンボトル、ワンステップの接着剤の信頼性

 セルフエッチングプライマーがクラレ社により開発されて以来、日本ではすでに10年以上の臨床応用の歴史が経過した。多くの臨床報告では非常に優れた成績が確認されているが、臨床の場ではその性能を容易に実感することができる。材料の性能を議論する際には、臨床的エビデンスといわれることが多い。しかし個々の患者、時には同じ患者でも個々の歯によってその状況がまったく異なり、さらに術者の技量に大きく影響を受けるという、歯科医療の特殊性を考えると、「臨床的実感(clinical reality)」の方が説得力を持つ気がする。小臼歯の歯頚部修復がほとんど脱落しなくなったのは、まさに接着材の性能向上の賜物である。日本ではウェットボンディングという、非常に信頼性の低い接着技法を取り入れる必要がなかったのは、ひとえにセルフエッチングプライマーを利用した優れた材料があったからである。この流れは、ワンステップ化に向かい、接着材にエッチング機能を持たせた、「セルフエッチングボンド」ともいうべき製品が増えている。

 しかし筆者は、かつてのワンステップの材料では、歯頚部修復の脱落を何度か経験している。やはり微量とはいえ、接着材に水や溶媒を必要とする組成のため、硬化後の接着材の機械的、化学的安定性に問題があったのだと思われる。使用時にマイルドなエアーで丁寧に揮発成分を除去するよう指示されているが、臨床の場での状況を考えると非常に心もとない。研究室での評価結果も総じてよくなかった。

 最近のワンステップ型接着材ではこうした問題点が解消されてきている。特に塗布後の乾燥法では、かつてのマイルドエアーではなく、強圧で十分乾燥させるよう指示されている。臨床ではこうでなくては、安定した結果は得られないだろう。ボンド層が非常に薄膜となっても強力な接着が得られるように設計されており、接着界面でのボンド層の暗いラインも解消されることも利点である。


図1(クリックで詳細表示)

 
特に本年登場した「ボンドフォース(トクヤマデンタル)」(図1)には、興味深い技術が応用されている。ボンドに含まれる接着性レジンモノマーが、3次元的に架橋して強力な硬化体となる3D-Self Reinforcing Adhesive Monomer (3次元自己強化型接着性モノマー;SR接着性モノマー)という技術である。従来の接着性レジンモノマーとの違いは、カルシウムイオンあるいはアパタイトとの反応が期待されるリン酸基を複数含み、重合基も同様に複数含むということである。このSRモノマーにより水素イオンが発生して歯質をエッチングする。そこで遊離したカルシウムイオンを介してこのモノマーが3次元的に架橋してゆく。


図2(クリックで拡大表示)

さらにリン酸基は歯質とも反応し接着を形成する。これに光重合が加わり、ボンド層は非常に強度が向上する。実際に、当教室の評価では、クリアフィルメガボンドに匹敵するほどの象牙質接着強さを示した(図2)。詳細は日本歯科評論本年4月号を参照いただきたい。今後の各方面からの評価や臨床評価の結果が楽しみな材料である。開発担当に関わった方々に敬意を表する次第である。

 各社の努力により、材料は急速に進歩している。我々臨床家はこれらの恩恵に預かるためにも、材料に関する十分な理解が必要である。セルフエッチング技術による接着材でもよく脱落するという声を聞く。再度使用法の要点を以下に列挙する。

(1)セルフエッチングプライマー、あるいはワンボトルのボンドはたっぷりと塗布する
(2)指示された塗布時間は守る
(3)しっかりと乾燥する

 (1)、(2)は、エッチング硬化を確実に得るためである。(3)は含まれる水や溶媒を除去するためである。

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