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2013/10/24

第1回 地域の歯科診療に参加して

はじめに

 私は歯科技工所を開業するかたわら、葛飾区の心身障害児と寝たきり高齢者の歯科診療に参加している。今回は、こうした地域医療への参加についてお話したいと思う。
15年程前、“葛飾区が、心身障害児や寝たきり高齢者を対象とした歯科診療に積極的に取り組んでおり、その活動に葛飾区歯科技工士会も協力・参加している”ということを知った。当時私は多摩の方に住んでいたので、多摩地区で同じようなことが出来ないかと思い、多摩東歯科技工士会の方々とともに、行政や歯科医師会・歯科衛生士会など各方面に働きかけた。

要望書を送るほか、支部の学術研修として在宅医療や高齢者医療専門の先生方を招いての講演会を開催するなど3年にわたって活動したが、個人の力には限りもあり当時はその努力は結実しなかった。
 
その後、葛飾区歯科技工士会に移転したのを機に、現在の活動をすることとなった。

障害児歯科診療について 〜ひまわり歯科診療所の活動〜

 心身障害児歯科診療所である「ひまわり歯科診療所」は、1981年11月より葛飾区が事業主体となり、葛飾区歯科医師会が区から委託され地域活動の一環として運営している。

葛飾区歯科技工士会は、葛飾区歯科医師会より委託を受け、1984年4月からこの活動に参加している。現在、歯科技工士の参加者は12〜13名である。医療機関としての位置づけは、二次医療機関である大学病院・公的病院と一次医療機関である各医院・診療所との中間的な存在であり、障害児の介護者が区に申し込み、歯科医師会の審査を通った障害児が訪れる。

対象は18歳未満の者となっているが、一度来院した患者については生涯診療を継続するため、今では30代40代という患者も珍しくない。診療日は、土曜日が14:00から16:30まで、日曜日が9:30から12:00までの週2回となり、それぞれ診療時間の前後に30分程度のミーティングが行なわれる。
 
患者が障害児ということから、通常の診療とは異なる点も多い。例えば、診療に至るまでに母親教室での両親への指導から始まり、その日の患者の機嫌により診療内容が大きく左右される。もちろん予定通りに診療が出来ないことも多い。

さらに、このような状況では印象を採るだけでも一苦労で、全スタッフの協力のもと行っている。私も当初は健常者と異なり患者の反応が掴みづらい点に物足りなさも感じたものの、良い物が出来たときの喜び方が非常に率直な場合もあって、今ではやりがいを感じている。とはいえ健常者の治療以上に、「何度も出来ないかもしれない」、「出来不出来により歯科医師と患者とのコミュニケーションの妨げになる恐れもある」という点で、喜びよりも責任の重さを痛感している。

寝たきり高齢者の歯科診療について 〜たんぽぽ歯科診療所の活動〜

 寝たきり高齢者の歯科診療所である「たんぽぽ歯科診療所」も「ひまわり」同様、葛飾区主体で1990年2月より診療が開始された施設である。対象者は区内在住の65歳以上の在宅寝たきり者であり、葛飾区医師会の協力も得て医師1名・看護士1名により全身状態の確認をしてから診療を行なっている。

自宅のベッドから診療ユニットまでの搬送も葛飾区の委託で専門業者に任せている。診療は訪問診療と固定診療の2本柱で構成しており、歯科技工士は固定診療所で待機している。診療の特徴としては訪問診療車にも十分な装備はあるものの、可能な限り固定診療所で診療を行なっている。
 
現在の参加者(歯科技工士)は「ひまわり」同様12〜13名である。歯科技工の内容としては義歯の調整・製作・修理とあり、1日の就業時間が3時間半と短いため、「ひまわり」も同様に担当者がラボに持ち帰り作業することが多い。

もちろん、一言で「寝たきり」といってもその状態は様々であり、食事は通常食か流動食か、自分で義歯の着脱が可能か、など個々に合わせた配慮が必要になる。「義歯は健常者と同じ形状・形態でよいのか」など、今後さらに研究が発展していくべき課題もある。また、口を大きく開けられない患者も多く全顎の型を採ることも容易ではないし、コミュニケーションが取りにくい患者とは介護者が通訳するようにして説明することも多い。

このように苦心する点もあるが、現場に立ち会える利点を活かしカルテに目を通したりして、患者の様子を良く見ることで情報を収集している。また技工的には、汚れにくい義歯を目指して歯肉形成をしている。さらに診療前後のミーティングで充分に検討することもできるので、自身にとっても勉強になることが多いと感じている。

これからの活動について

 上記の活動は、普段は歯科技工というものを目にする機会のない介護者や一般の方に、歯科技工士という存在を認識・理解してもらうことができる貴重な場であり、私にとってライフワークといえるものだと感じている。

今後はより多くの歯科技工士に参加してもらいたいが、事情があり休日の参加が難しい方々も多く、土日の診療には参加せず技工物の製作のみを担当するなど、柔軟な参加方法も取り入れ始めたところである。

 
また、これまであまり見られなかったことだが、今後は歯科技工士の立場から歯科医師への提案をしていけると面白いのではないかと考える。そのためにも、模型の写真など具体例を用いて技工の過程を検討するなどして、歯科技工士のレベルアップを図る必要があると思う。
 
こうした様々な活動を通し、昨日より今日、今日より明日が少しでも良くなるよう努力していきたいと考える。

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