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2013/10/24

1歳半児の歯が語るもの

 1歳半健診で虫歯を指摘されたと半べそのお母さん、記録を見ると上下4前歯は健全で、萌出中の上顎第一乳臼歯がC2とある。

 ありえない!

お子さまの口の中を覗くと、上顎前歯唇側歯頚部が白濁している。母乳を飲んでいるとのこと。きちんと健診をすると上顎両乳前歯の舌側にC1の虫歯があったが、他の歯はC0「これなら治る、止まっていれば問題ないから歯ブラシを丁寧に当てて下さいね」と話した。お母さんも安心した表情で、1ヵ月後の来所を約束して帰った。

 

 カイスの輪の4つ条件が揃えば、どの歯が虫歯になってもおかしくないが、虫歯で生えてくる歯は無い。健全な状態で生えてきても口腔内の状態によっては、あたかも虫歯で生えてきたような錯覚を起こすくらい生えてすぐに虫歯になることもある。しかし、いきなり穴が開くのではなく、表面から脱灰が進んでいく。

 虫歯は治る、治るくらいで見つければ削って詰める必要は無い、と丁寧な健診を心がけてきた。1歳半健診で丁寧に診て、その後のフォローをきちんとしていけばカリエスフリーも難しいことではない。

 持って生まれた歯の質は千差万別だが、歯は実に正直に食生活を反映する。1歳前後の離乳期では母乳が最大のリスクであるが、母乳だけでは重篤な虫歯にはならない。1歳過ぎて夜間授乳をしていたら早めに歯科検診をと勧めているが、1歳半健診でも大体は間に合う。
 虫歯の好発部位は決まっている。母乳で溶けてくるのは前歯からで、前歯の虫歯は止まりやすい。虫歯の進行に左右差がある場合は「お母さんの右(或いは左、進行している側の逆)のオッパイを吸って寝ているでしょう?」と訊くと大体当たる。
 しかし、だからと言って早期の断乳を勧めるのはいかがかと思う。「虫歯ごときでオッパイを止めるのはもったいない。虫歯が進んでしまったら、もっと可哀想だけど、止まっていれば問題ない。前歯は止まりやすくて、穴が開いていても止まっている子は沢山いる。

 

 止まっていることを確認していけば問題ない」と話すとお母さんの表情も明るくなっていく。母乳の質も千差万別で、母親の食生活を反映して母乳の質も変わる。肉・油を多く摂ると母乳の質が落ちるようで敏感な子だと顔を背ける。野菜・穀類を摂ると良い味になる。良いオッパイは薄ら甘くて虫歯になりやすい。「虫歯ができるくらい良いオッパイをあげたんだから自信を持って。止まれば勲章よ」と話すと歯ブラシも熱心に取り組んでくれて、1ヵ月後には大体止まっている。

 1歳半で16本生えていて、前歯は健全で、臼歯が虫歯というケースは、原因は母乳ではない。兄・姉がいてアメなど早くから口にする場合が多い。「最近アメを覚えたでしょう?ハイチュウかな?」と訊くと「ええ?!どうして分るんですか?」と驚かれる。「歯に書いてあるの」と言い、食生活を見直してもらう。つい習慣になっている食生活も、振り返ってみると改善策に気付いてくれる方が多い。

 

 1歳半健診では、歯が語りかけているもの、歯からメッセージを正確に読み取り、母親に伝えていくことが大切ではないだろうか。ふだんの診療では成人ばかり診ている先生が行政の健診の輪番で、いきなり泣き叫ぶ1歳半児を診たら、面食らうのも当然かと思うが、児と母親にとっては、1回きりの、初めての歯科検診。正確な診断に基づく適切な指導が、将来にわたる歯の健康の基礎になるのではないか。

「虫歯はありませんでした」で終わらせるのはもったいない。歯ぐきを突き破って萌出したばかりのエナメル質は、蛹から羽化したばかりのよう。きれいな唾液に曝されてエナメル質も成熟していく。歯は噛むために生えてくる。歯が快適な状況で機能してくれるよう環境を整えること、生涯にわたる歯の健康の基礎になるようなメッセージを1歳半健診で伝えいきたい。

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