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2013/10/24

あすなろ歯科の院内コミュニケーション 第4回コラム

 2005年7・8月。人手不足のため忙しく、日々の診療に追われてはいましたが、それなりに充実していた時期でもありました。
 
ただし、アシスタントなしに診療することもしばしばでした。
 
私自身が片付けを行ったり、掃除機をかけたりすることも頻繁にありました。それでもみんなが一生懸命に各自の仕事をし、またお互いにフォローし合うことで、残ってくれたスタッフとは信頼が生まれていったようにも思います。

 
しかし、患者様の安全を考えれば、そうした慌ただしい診療は望ましいものではなく、やはり患者貢献にはつながらないと思います。
 
安全・確実に診療を行うことが医療にとっては重要です。
 
また、院長だから掃除をしなくて良いというわけではなく、掃除を行うことも患者貢献の一つですが、それでも院長としてなすべきこと、たとえば患者様に治療計画を提示するとか、患者様にもっと説明を行うとか、あるいはスタッフともっとコミュニケーションを取ることなどに時間を割く必要があると考えていました。

 私だけでなく、スタッフにも人手不足がストレスになっているのを感じていましたので、人員の補充を急ぎました。
 
しかし求人誌に募集を出しても、アルバイトの応募があっただけでした。とにかく急いでいましたので、とりあえずはアルバイトさんを採用。
 
しかし衛生士はどこへ行ってしまったのか、まったく反応がありません。
 
助手さんに関しては、ハローワークから数名の応募があり、その中から1人採用してみましたが、採用して3日目の朝に「腰痛が・・・」とのことで辞職。次に採用した方も2日目の朝、「こんなにきついとは思いませんでした」と辞めてしまいました。3人目は何とか1週間続き、今度は順調かと思っていましたが・・・。詳細は後半に。

  そのころから、毎週1時間半程度、院内でミーティングを持ち、医院の問題点に関して検討を始めました。ミーティング時にはグット・アンド・ニューを行い、みんなで仕事でよかったことを述べ合い、医院の雰囲気の改善に努めました。
 
朝礼時に「ハートフル・ハンド」握手をして、毎日の仕事を始めるようにしました。
 
また、医院理念を練り直し、私がスタッフに求めていること、つまり診療に対する考え方や具体的な仕事の内容について、スタッフ自身に認識してもらうなど、スタッフとのコミュニケーションを図っていきました。

 ミーティングを行っていくと、私の考えや理想とか、私一人で、見学してきた医院の話をしても、スタッフにはその内容があまり具体的に伝わっていないことがわかりました。スタッフが私の話を理解しようとしても、うまくそれがイメージできず、またこちらも意図していることを充分に説明できないなど、感覚の違いが浮き彫りになってきました。

 
そこで、スタッフ全員で医院見学を行うことを考えました。医院を休診にし、私が取り入れたいことを実際に行っている医院さんを見学させていただきました。
 
また、東京ヘルスケアグループのスタッフミーティングにもスタッフ全員で参加。医院のすべての人間が共通の価値観、考え方を共有できるように、少し外へ出る活動も始めていました。

 
そんな中で、医院の空気が今までと変わっていることに気づきました。
 
いい感じで見学やセミナー参加をして、スタッフからも「とってもよかった。あんな雰囲気で働きたい!」などの感想が出るのですが、なんだか医院全体のムードが重たいのです。それに気づき、私はイライラし始めていました。

 その後、スタッフとの個別面談の中から分かってきたのは、新しく入った助手の方が周りになじめていないことでした。
 
その助手さんが、他のスタッフ(アルバイトさん)に関してあまり良く言っていないとか、しばしば「こんなにも見学やセミナーに出なければならないのか」などの発言もあったようです。
 
以前からのスタッフが一生懸命やっている一方で、新しく入った方には医院の方針や理念などが充分に伝わっていない。人を増やしたことで、院長とスタッフの間ではなく、スタッフ同士の間で問題が生じていました。

 
そうした状況に対処するため、まずは当事者から個人的に話を聴きました。
 
それから他のスタッフには就業前に早めに集まってもらったりして、意見を訊き、相談しました。それぞれの話を確認したうえで、苦渋の選択をしました。
 
新しく入った助手さんには、採用から一ヶ月で辞めていただくことにしました。残るスタッフにも事情を説明し、以前のように忙しくなることを承知してもらいました。
 
新しく入った方にとって、職場の雰囲気や習慣、医院の文化を理解するのはそんなに簡単ではないことは承知しているつもりです。それでも、中途採用の場合、今まで働いていたところの習慣や考えもありますから、新しいやり方を受け入れるには難しい面もあるようです。

 あすなろ歯科の人員は、ふたたび元の状態に戻ってしまいました。
 
同じようなことがないように、次に人を雇う場合に備えて、自由が丘矯正クリニックの成田先生が書かれた「歯科衛生士WANTED」を参考に、採用基準をある程度決めておくようにしました。

 実は、人の問題はこれだけで納まりませんでした。新しい事を始めると、それにともなって新たな問題が発生してしまいます。

 
衛生士の業務に関しては、以前から担当制で行っていました。この制度をより充実させるため、患者様の次回の診療内容を決め、予約などを手配するところまで、担当している衛生士自身にやってもらうことにしました。
 
そうすると、当然ですが、日々の診療において今までよりも細かい配慮や気配りが必要になり、仕事の負担が大きくなります。それは承知していましたが、衛生士の自立とやりがいを願い、また他の医院の見学などを通して、スタッフにもそうしたやり方が受け入れられていたので、新たな診療体系を2006年1月から導入しました。
 
実際にやってみると、やはりかなりの負担になります。そして、すぐに新しい制度に対応できるスタッフもいれば、慣れるまでに時間が必要なスタッフがいます。うまく対応できていないことは、遅れをとっている衛生士自身も自覚していたのですが、そこに私が更なる要求をしたため、彼女を追い込むことになってしまいました。
 
そして、新しい診療体系を取り入れて2ヵ月後の2006年2月、開業当初よりがんばってもらっていたスタッフを辞職に追い込む結果になってしまいました。

 歯科医院にとって、人の問題は常に付きまとうものではないかと思います。どんな医院でも、多かれ少なかれ、そうした問題を抱えているでしょう。当院でも、以前よりは少なくなり、改善が見られるとはいえ、人の問題は常に存在しています。 
難しい問題であることは承知のうえで、そこから逃げずに、スタッフ一人ひとりに全力でぶつかるように心掛けています。

 
人をめぐる問題は、多くの場合、自分の価値観であるとか、自分が重要だと思うものを、周囲の人間に対して要求するところから始まります。
 
私がそれを認識するきっかけになったのは、半年間受講したコーチングのセミナーでした。このコーチングセミナーに関して次回ご紹介したいと思います。

  あすなろ歯科 野村 英孝

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