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2013/10/24

あすなろ歯科の院内コミュニケーション 第2回コラム 改革を実行に移す

 イライラしていたころの私は、スタッフの声に耳を傾けることもなく、仕事に対する責任感を厳しく求めつづけていました。当時考えていたことと言えば、
 「あすなろ歯科をやめて違うところに医院を建てよう」
 「場所が悪かった!そのせいでいいスタッフが集まらないし、いい患者も集まらない」
 「何で、こんな嫌な思いをして歯科医師やってんだろう」
などなどでした。つまりは、自分ではじめたあすなろ歯科なのに、医院のことを好きでもなければ、診察を受けにやってくる患者様やスタッフにも感謝の心を持つことができないような状態でした。


当然スタッフとの関係も最悪な状態でしたから、開業前からの付き合いで信頼していた衛生士が辞表を持ってきた時も、
 「辞めたい人は辞めればいい」
 「条件の良い職場がそんな簡単にあるものか」
 「他の医院に勤めてみれば、仕事が辛いことが分かるだろう!」
 「そんなに仕事は甘いもんじゃない!」
 「だいたい辞表を出してから医院のお金でセミナーにでるな!」

などと考え、やはり自分を省みることはなかったように思います。(今でも辞めることが決まっているスタッフがそのまま医院のお金でセミナーに出てしまうのはどうかと思いますが。)
 何かを変えたいとは思いつつもすべてを他人のせいに、周囲のせいにばかりしていたのですが、ある日ひとつの経営セミナーの案内をもらいました。平成16年12月の日曜日に行われたセミナーで、案内をくれたのは以前勤務していた医院の院長先生でした。そのときは「付き合いで出るか〜。経営的にはそんなに困ってないんだけど〜」程度の軽い気持ちでした。 講演者は医療法人厚良会事務長の上野雅充氏でしたが、そこで学んだことでいちばん印象的だったのは、医療法人厚良会理事長の種市先生の言葉でした。

「他人と過去は変えられない!自分と未来は変えられる。だから頑張れ!」
  この言葉にとても感銘を受けました。
 「自分の未来は変えられるんだ、それも自分自身で!」
 「何かを変えなくてはいけない! まずはシステムだろうか、人だろうか?」
 「変え方がわからない。このままでは、医院を建て替えても同じことの繰り返しになってしまう。まずはシステムを変えよう!」
 「もっと経営のことも考えよう。院長らしく、振舞おう。流行のコーチングの勉強でもしようかな〜。スタッフがついてくる院長って?」
そんなことを考えるようになりましたが、明確な方法が分かりませんでした。

 それから1カ月ほど経った1月の後半、ある歯科業者さんが1冊の本を持ってきてくれました。その本は・・・・岩渕龍正という人が書いた『歯科医院地域一番実践プロジェクト』、通称赤本と呼ばれる本です。
 この本を読んだあと、妻の「この本の通りにやってみたら・・・。」の一言に押されて、実践してみることにしました。平成17年2月10日以降、まずはじめたのは
1)朝、スタッフ一人ひとりの名前を呼んで「○○さんおはよう!」と挨拶する。
2)ありがとう運動・・・何かを頼んで、その報告がきたら「ありがとう」と言って返す。例えば、
  「印象取れました」「ありがとう」 
  「エンドの用意できました」「ありがとう」
  「スケーリング終わりました」「ありがとう」
何かしてくれたら「ありがとう」と言うようにしました。  この2つだけでも、スタッフの反応は変わっていきました。この時のスタッフの感想・感じたことは次のようなものです。

「何が起こったのだろう?でも、うれしい。認めてもらった気がした。気持ちがいい」
「自然と笑顔がでて、こちらも元気に挨拶ができた。笑顔で『○○さんおはよう』と言われると、その日1日がんばろうという気持ちになる。『ありがとう』という言葉でモヤモヤした気分もスッキリして、報告が楽しくなりました。」
「今まで朝、顔を見もしなかったのに、急に何をやりだしたの?『いまさら何を言っているの!』とは思いつつ、『ありがとう』と言われると喜んでいる自分がいました。」
などなどでした。  

実際にやってみると、「ありがとう」と言うタイミングが難しかったり、中には言いづらいスタッフもいたり、言えなかったりすることもしばしばでした。それでもどんな些細なことにも「ありがとう」を言うように努力しました。赤本にも書いてありますが、挨拶をしてもまともに返事を返してくれないスタッフに対して、なんで俺が「ありがとう」って言わなければならないのかと思う日々が続きました。

 朝の挨拶と「ありがとう運動」を実行し始めて2週間後に取り組んだのが
3)個別面談です。
スタッフ一人ひとりと30分程度の面談をするのです。赤本にもいてあるように、まずはスタッフが言いたくても言えないことを吐き出させることが大切なのですが、これは正直疲れました。その時にスタッフからあがってきた意見は次のようなものです。
「先生の感情で怒るのは止めて下さい! 他のスタッフと差別しないで!」
「先生は、気分になみがあるのでやめてください!」
「昨年12月で衛生士がやめたのは・・・・が原因です。」
「○○さんがかわいそう・・・。 早く帰りたい!  残業代が出ない!」
「先生の声が小さくて聞こえない!」
もっとも、面談しても「特に何もありません」と話もしてくれないスタッフもいました。

 
こちらからは反論せず一方的に非難され続けるわけですから、今考えてもかなり辛い作業でした。そこで怒ってはいけませんし、その後の診療でも感情的にならないようにしなければなりません。もう1度やれと言われてもやはりしんどいと思います。ちなみに本の主人公である横田先生も「ボロボロになりました」と言っています。
スタッフに言いたいことを吐き出させる最初の面談が、一番辛かったように思います。現在でも月に1度、コミュニケーションの一環として、スタッフとの個別面談を行っています。その後も様々な問題が起こりましたが、その時々で考えている事、感じたことをスタッフに伝えるようにし、またスタッフの考えていることを聞きだすように努めています。

 以上のような話を他の先生にしたところ、「野村先生はよく全員に『ありがとう』と朝の挨拶ができたね。俺にはできないスタッフもいるから。」と言われたことがありました。むろん私が特別な人間というわけではありません。
 昨年読んだジェームス・スキナー氏の「成功の9ステップ」の中には、次のような一節があります。 『毎日苦痛を感じながら生活している。しかし、脳が「このままではいけない。今すぐこの状態を変えなければならない!」という限界にいたっていないのだ。そして、あなたはその限界に達するまで、行動を起すことはない。』

 私は特別だったわけではなく、すごいわけでもありません。全国には、予防歯科で成功し、患者様が喜んで定期的に来院している歯科医院がたくさんあると思います。私はただ、思い描いていた理想、つまり予防歯科によって快適な口腔内の提供を目指す歯科医院が実現できない自分に腹が立ち、限界に達して、変えたいと思っただけなのです。スタッフから信用されていないし、スタッフのことも信じられない2年目までの自分が嫌だっただけです。本当に「改善したいと望んだ」だけなのです。

3回目以降に続く・・・。

あすなろ歯科 野村 英孝

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