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2013/10/24

第7回 お盆から学ぶ

私の実家は栃木県の北の方にあります。
実家に帰ってセミの声を聞くと、夏だなぁ、って実感できます。
診療室のある埼玉にもセミはいますが、ビルの隙間やアスファルトに囲まれた街路樹にへばりつき、車や人の往来の雑音に混じって聞こえてくるセミの声は、どうも好きになれないのです。

やっぱりセミは、うるさいくらいに鳴き、わめき、木々の間にいながらも存在感を発しつつ、夏休みの子供に発見され、おしっこをかけて逃げるくらい堂々としていて欲しいのです。実家を囲む山々にいるセミは、まだまだ元気に鳴いていました。そして、それを狙う子供達も沢山。今年のお盆は、そんな子供達から学んだことがありました。

先だってこのコラムにも書かせていただいた通り、今年長山家は祖父が亡くなり、初盆を迎えました。以前曾祖母が亡くなった際の初盆の記憶はほとんど無いのですが、ご近所の方々の初盆を毎年どこかしらで見るにつけ、大変そうだなぁ、と呑気に思っておりました。

地方の初盆、とは一大イベントなのです。亡くなった方が恥ずかしくないよう、迷わず帰ってこられるよう、準備を整えなければなりません。夏休み前の診療室の大掃除の1日をお休みさせていただき、田舎へ帰りました。

12日。まずは“お盆様”の製作です。親戚の手を借りて、竹を切り、穴を開け、組み立て、ヒバを挿し、ほおづきを飾り、遺影やお線香、果物や盆ちょうちんなどを飾る棚を中に入れます。周りに生花やいただいた盆ちょうちんを並べ、亡くなった方を迎える準備が整います。

家族皆でお墓にお迎えに行き、迎え火とともに帰宅。今度は13日、14日とお客様をお迎えする準備に取り掛かります。ビールを冷やし、料理を作り、鮎を焼き、お返し品を並べ、いらした方々にご挨拶。家族だけでなく、親戚のありがたみをよーく味わいました。そんなこんなでお盆は過ぎて行ったのですが・・・。

集まる親戚の中に、私が歯科衛生士を生業にしていることは浸透したようです。会うとたいてい歯科相談。個人的には“健康を守る”意識を浸透させたいのですが、8割がた現状への不満や修復の相談です。

入れ歯のここが合わなくてさぁ、とわざわざ入れ歯を外して見せて下さった叔父様。ここの歯が痛いんだけど見てくれる?と大きな口を開いて下さった叔母様。見ますよ。見ますけれどね、歯科は設備がないと何もできないのですよ・・・。

どちらもPDとFCKが、ピカピカに光っていました。ではなくて、皆さんちゃんと歯科医院に行きましょうね。そしてご自分のリスクを知りましょう。これからどうしたら良いのか知りましょう。一度治療したところがまたむし歯になるのは、治療が下手なのではなくて、お口の中がそう言う環境だと知りましょう。その上で、ご自身の歯や歯肉を守っていくために歯科医院はあるのです。そうなの!?と目を丸くされていた叔父様、叔母様。

少しずつメインテナンスの輪が広がっていくと嬉しいです。でもこちらにも責任はあるのですよね。皆さんの“想い”とこれからをお話できる環境が少ないのですよね。もっともっと診療室に来てくださっている皆さんのお話を伺いたい!と思いました。本当に、皆さんそれぞれご自身のお口の中について考えてらっしゃるのですね。沢山の方の本音を聞いて、刺激を受けました。

そして、子供達。従兄弟や、従兄弟の子供や、近所の子供達。沢山の子が来ては騒いでおりました。クーラーのある部屋は大人に占領され、暑い日差しの中やれセミがいた、蛇がいた、鮎が焼けた、スイカが潰れた、と大騒ぎ。騒げばノドが乾きます。

冷えた飲み物を取りに来る子供達。いつもジュースを飲んでいる子はやっぱりジュース。お茶を飲んでいる子はやっぱりお茶。お水。暑いからすぐノドが乾くのでしょう。何度も何度も水分補給する度、どちらを飲んでいるか見かける姿はいつも一緒。診療室でよく聞くセリフがあります。

“急にジュースを止めるのは可愛そう” “気をつけて、減らすようにしました”。子供に減らす、気をつける、なんてことは無理だよねぇ、とその姿を見ていて思いました。でも、じゃあ、お茶を飲んでいる子は可愛そうですか?ジュースをあげないと喜びませんか?やっぱり“ジュースをあげれば喜ぶ”と言う価値観のもとに、ジュースを与える大人が、その子の価値観も作るのですよね。誰だって子供が喜ぶ姿は嬉しいですよね。

子供を喜ばせたいですよね。でもその時に、“お茶よりジュースをあげれば喜ぶだろう”と言う価値観が与えるのは、甘い笑顔だけではありません。一緒にジュースを飲むお母さんの姿に、しみじみそんな事を思いました。ある勉強会で、聞いた言葉です。“言っても勝手に飲んじゃって、ではなく、こんなに小さな子が我慢するんですよ。お母さんも一緒に我慢しましょう。冷蔵庫にジュースを入れておくのを止めましょう。”ある衛生士さんは、お母さんによくこう訴えるそうです。

“私たちは、あなたがむし歯をつくらないように頑張ろう!と思って下されば精一杯応援します。この子がむし歯にならないために、最大限協力します。でも、むし歯になっても治療すれば大丈夫、その時に治療すれば良いや、と思っているのでしたら、できることはありません。”むし歯のない子を育成する、それがその子にとってどんなに素敵なことか。熱い想いを再確認した夏でした。

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