第4回 歯科衛生士の食育・・・口腔機能はハード面3 咀嚼

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歯科衛生士コラム 第4回 歯科衛生士の食育…口腔機能はハード面3 咀嚼 宮坂乙美  歯科衛生士

さて今回はいきなり質問です!

Q.固いものを食べさせればいいんですか?

臨床の場にいると、わりと受ける質問ですが、養育者にこのような質問を受けたら、あなたはDHとしてなんと答えますか? A.はい、固いものをしっかり食べて、1口30回咬みましょう! …これでいいでしょうか? 養育者がこの質問をしてくる根底には、何があると思いますか?虫歯の心配というよりは、顎の成長の心配がある、要するに、歯ならびの心配があっての問いかけだと思います。それを踏まえつつ、また、顎が大きくなって歯が並べば良いというだけではない事も、伝えなければなりません。やっぱり、正しい口腔機能があっての顎の成長ですから。 私が、臨床や公衆衛生活動の場、またセミナーなどでお答えしている、キーワードはこれです。

A.あんぐっ!にちゃがじっ!れ〜ろれろ!覚えてくださいね。

●あんぐっ!にちゃがじっ!れ〜ろれろ!って何? これは、私が一般の方にもわかりやすく伝わるように考えた、造語のキーワードです。前回のコラムで、正しい口腔機能の状態をお話ししましたが、咀嚼は“前歯で咬断→小臼歯部で大まかに食べ物をわける→大臼歯部で粉砕”としています。あんぐっ!にちゃがじっ!に関しては、この事を表しています。 ●あんぐっ!……と前歯でかみちぎる 今どきの養育者の方に、「しっかり前歯で咬んでますか?」と問うと、「えっ!?前歯で咬むんですか?」とびっくりされます。咬むというと、「奥歯でガシッガシッと咬む」というイメージしかないようですね。前歯で咬みちぎらないと食べられない食材を選ぶ、また、食形態にする。これが大事です。

写真の子どもは、下顎1・1が萌出してから3年経過してますが、切端が咬耗せず、萌出当時のままギザギザです。前歯を使っていないという事ですね。前歯を使うという事は、口輪筋の活性化と、上顎骨への発育刺激を促す事に、つながっています。

具体的には、お肉は骨付きにしたり、薄切り肉の場合は巻いたりして調理。野菜は縦長、あるいは大きめに切り、パンはフランスパンやベーグルをオープンサンドやサンドイッチにして、一度、「あんぐっ!」と咬まないと食べられない食形態にする…というように工夫しましょう、とお話ししています。すると、「ああ、たくさん食べて欲しいし、食べやすいかなと思って小さく切って食べさせてました」と言う養育者は、結構多いです。なんでもかんでもひとくち大にしない事を、覚えてもらいましょう。 私の医院のある大阪府茨木市の給食は、週に3回がパン食です。子ども自身にも「給食でもパンはちぎって食べずに「あんぐっ!」って、そのまま食べんねんで!」とお話ししています。

●次に、にちゃがじっ!……奥歯でしっかり咬む 固いものを咬むことにこだわるのではなく、咬み応えのあるものをしっかり咬むことを、考えてもらわなくてはなりません。それには日本食がうってつけです。

ひじき、しらす干し、桜エビ、高野豆腐などなど・・・それ自体にはそれほどかたさはありませんが、「にちゃがじっ!」っと、何回も咬む必要のあるものばかりです。しかも、ただ咬むだけではない咬筋が、しっかり収縮する咬み方です。これを私は「ほっぺたの力こぶ」と呼んでいます。

養育者また子ども自身にも咬筋の動きを実際に体験してもらいま しょう。

●最後にれ〜ろれろ……べろも育てよう お魚の身と小骨を口の中でれ〜ろれろとして分ける、ぶどう・すいかなど実と種を口の中でれ〜ろれろとして種だけ出す、パンなどモソモソしたものが齦頬移行部に入った時も、手で出さずに、れ〜ろれろと押し出す。 こんな事も、舌の動きを発育させる事に役立っているのを、意識してもらいます。 あんぐっ! にちゃがじっ! れ〜ろれろ!

DHの皆さんも、覚えて子どもちゃんにお話ししてみてください。

食形態などを知らせることがすぐできるようにパンフレットやフリップなどを、院内に用意しておくといいですね。 それでは今回のお話しはここまで…次回からは「お口に入るものはソフト面」のお話しをしていきます。お楽しみに。 参考文献:臨床医のための床矯正・矯正治療「基礎編」鈴木説矢先生著

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