歯科衛生士の賞味期限

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歯科衛生士コラム 「歯科衛生士の賞味期限」 田樽 ハイジ(仮名) 衛生士

 毎年11月の第3木曜日は、旬なもの好きの日本人が、待ちに待ったボジョレーヌーボーの解禁日。店頭に並ぶ、華やかな柄が描かれたボトルは、冬の訪れを感じさせる季節の風物詩である。普段、ワインに縁のない人までもボジョレーが解禁されると、こぞって買い求めるようだが、ワイン漬けの私もご多分に漏れず、綺麗な花柄のボジョレーを1ボトル手に入れた。

 ほろ酔い気分でテレビに目を向けると「またもや会社ぐるみで賞味期限の改ざん」というニュース速報が飛び込んできた。賞味期限とは=その期間であれば美味しく食品が食べられる商品の期限を表示したもののことであるが、世の中には、商品の包装に記載された期限を過ぎたものは、一切口にしないという人もいるようだ。私にいたっては、期限切れの食品を見つけても、クンクンと鼻を利かせ、鼻メーターが「まだイケる」と反応すれば、火を通して口に放り込んでしまうこともあるし、食べた後に「あら?期限が過ぎてたわ」ということもある。(念のために言っておくが、基本的にはちゃんと賞味期限内に食している)   しかし、今回の騒動のように、食品会社が消費者をあざむいたというのは、やはり許しがたい事だ。

 そんな私は、世間からは賞味期限ぎりぎりというレッテルを貼られている30代後半の独身女性である。以前から年齢より若く見られることが多かったせいか「まだ大丈夫」と加齢に目を背けていたが、ここ数年、外見や体力に衰えを感じ始めている。というより、ここにきて加速度を増して来たように感じるのだ。

 気が付けば、コエンザイムQ10、ポリフェノール、コラーゲン、ヒアルロン酸など・・数年前まで目にも止めなかった話題のアンチエイジング商品や高級化粧品を買い揃え、加齢に立ち向かっている。両親からいただいた顔には、メスこそ入れていないが、賞味期限を延ばすためにあらゆる手段を使って悪戦苦闘しているのだ。

 これって賞味期限の改ざん???

 賞味期限といえば、以前、後輩歯科衛生士が、患者さんが減ってやりくりができなくなったという理由で、勤務先の理事長に、突然肩をたたかれたという話しを思い出した。

 彼女が職場を去ってから「長年の勤務はありがたいが、もう歯科のお姉さんて感じじゃなくなったし、給料は高くなる上、プライドも高くて、扱いづらくなった」と理事長が本音を漏らしたらしい。彼女は、間接的にこの話しを聞いて、私に相談してきた。

 彼女を励まし、再就職を勧めるも「転職するにも、歯科衛生士の賞味期限は切れているしなぁ〜」と半ば投げやりな態度だった。

 その後、無事再就職し、今では仕事を評価してくれる院長のもとで活躍しているのだが、長年、歯科医院に貢献し、患者さんに信頼された歯科衛生士が、仕事の評価ではなく、そんな理由で首を切られたなんて悲しい結末である。時代が変わっても、いまだにこんな雇用主がいると思うとやりきれない。

 さぁ、同じような思いを経験した諸君。声を上げて、立ち向かおうではないかぁ。

 —労働者のデモ活動風に、ご一緒にこぶしを挙げてー 『歯科衛生士に賞味期限なんてなぁ〜い』 『歯科衛生士は「歯科のおねえさん」ではなぁ〜い』 『年齢で歯科衛生士を評価するなぁ〜』 『「歯科衛生士実地指導」の点数のためだけに雇うなぁ〜』 『歯科衛生士の立場を尊重しろぉ〜』 『給料上げろぉ〜』 『休みをくれぇ〜』少しばかり脱線し過ぎただろうか・・・ 話しが本筋からズレたので、本題に戻そう。

 ワインにもフルーティーな香りのフレッシュなものもあれば、長年寝かせた味わい深い重めのワインがあるように、若い歯科衛生士にも若いなりの魅力があり、ベテランにも熟練した経験や技術という魅力がある。どちらを選ぶかは雇用主の好みの問題ではあるが・・

 ここ最近、歯科衛生士学校の入学者は減る一方、離職者が増えているそうだ。求人に対して絶対数は不足しているのだから、歯科衛生士は引く手あまたである。選ばれる歯科衛生士であるとともに、自分の能力を認めてくれる勤務先を自らが選びたいものだ。

 食べ物は熟成すると旨みが増し、嘘か誠か肉や果物は腐る前が一番美味しいという。 加齢により自信がなくなってきたという方、歯科衛生士には賞味期限などないのだから、ますます熟成した、旨みのある歯科衛生士を目指そうではないか。

歯科衛生士 田樽 ハイジ

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